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世界の意思にさようなら  作者: ラゲク
第8章 異形の肉体
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第90話 混沌の世界

 家に帰るといつもと変わらない状況が僕のことを迎えてくれた。

あの後、僕は支部長に今回の事は他言無用と、くぎを刺された。どうやら混乱を招くから黙っていてほしいとのことだ。確かに彼女の姿を見たらビビってしまうのも無理はない。最悪イジメみたいなのが起きてしまうかもしれないし……。


 やっぱり僕のせいなんじゃ……


静岡でカンダさんを助けるために、僕の腕をくっ付けたのがいけなかったのかも知れない。能力者の発生条件がわかっていない今、僕のこの行為が原因と断定はできないが……


 まあ、考えても仕方がない


僕は部屋の明かりを消して、逃げる様に布団に包まった。



 部屋に朝日が差し込み、僕の身体を優しく起こし始める。

起きた僕は顔を洗い、着替え終えた後、仕事場へ向かった。


 「おはようトガ君!」

いつもの様にキラさんが一番乗りで出社していた。

「おはようございます。……なんかご機嫌ですね、良いことでもあったのですか?」

「お、実はそうなんだよ! やっと、人が増えるそうなんだ。現状、僕達戦闘係しかまともに戦える人がいないでしょ。その戦闘係を増やそうって話がやっと通って、今後僕たちの様な部署が増えていくようなんだ。いやー判断が遅い! もっと早くしてくれよ……、化け物ゼノどころか、能力者ザブも増え始めているんだから」


キラさんは凄くやり切ったように椅子にもたれ掛かった。

まだ朝なのに……


「なので、今後はもう少し楽になると思うんだ! 悪いね、最近仕事ばかりで疲れたでしょ! 何かしら呼び出されて休日なかったし、ちょっと気分転換になるかもと、思っていた静岡の仕事も大変な思いさせちゃったし……」

「いえいえ、キラさんのせいじゃ……」

「まあ、少しでも負担は減らそうよ。ただでさえ命の危険がある仕事なんだからさ」


まさか、キラさんがここまで考えてくれていた事に正直驚いた。


「ま、楽になるための努力は私は惜しまないよ!」


 最後のセリフで台無しだが……


「そう言えば、静岡で事件に巻き込まれたカメヤツルギさん、彼女が少し元気を取り戻したそうだよ。今まで誰にも口を開かなかった彼女がようやく、対策課の女性に開いたそうなんだ。まあ、男性に関しては当分無理らしいけど……」

「そうですか、でも少しでも元気になって良かったですよ」


カメヤツルギ、彼女の今の心境を考えると胸が重くなる。だが、そんな彼女が少し元気になった。これは嬉しいニュースだ。ハイノメ達が来たら教えてあげないと


「さーて、事務作業でもやりますか。あ、この作業も減らしていくつもりだから! 昨日、漫画読んでいたらやっぱり僕たちみたいな戦闘員は、空いた時間はトレーニングだと思ったわけよ。一応トレーニングルームあるけど、今忙しすぎて使ってないじゃん! この作業がなければそっちに行ける。 まあ、人が必要なんだよね何にせよ。 でも、世界樹対策課と日本政府が話し合って、こちらに人員をくれるそうだから。アメリカとか海外からは期待できないらしいからね」

「そうなんですか、本部から応援とか来ないんですね」

「うん、どうやら向こうの方が大変らしい……特にアメリカは能力者……ザブの件で大問題になっている様だからね。何でも僕たちが今まで見たような、見た目の変化がない能力者だけじゃなくて、頭に角が生えた人、トカゲの見た目になった人、常時身体が変化している人が現れ始めたんだ。いや、進化というべきなのか……。何にせよ、僕のヒーローアカデミアやX-MENみたいな世界になってきたね」


僕はキラさんの話を聞いた瞬間、脳裏にカンダさんの現状を思い浮かべた。

キラさんは他人事みたいに話しているが……


「あ、あの……その人たちは一体……」

「ん? ああ、迫害やらなんやら起きているそうだよ。対策課もアメリカ政府も流石に隠し切れなくなって、ザブのことを世間に近日中に伝えるらしい。日本も遅かれ早かれ、発表があるだろうね。黒人とか、ポリこれとか、そんなのが忘れ去られるぐらいの差別問題が来るらしいよ。私もそう思う。漫画やアニメ、小説に映画がそのことをいち早く私たちに伝えてくれているからね。……どうしたのトガ君?」

「いえ、別に……」

僕はカンダさんの今後、彼女の身に起こることを妄想してしまった。

「まあ、私たちも能力発動したら気味悪がれるけど、その人たちはねぇ……、見た目でもうバレちゃうわけだし、しかもあれなんだよ僕達能力者の事をなんて言っているか知っている? 僕達の様な見た目には変化がない人の事は、新人類。変化があるミュータントみたいな人は、異業種って呼ばれているらしいよ」


「やめてください!」

僕はキラさんの話を切るように苛立った口調で一言放った。


「……ごめん、気を悪くした?」

「いえ、こちらも急にすみませんでした」


 ガチャ


ドアが開く音が鳴り、そこからハイノメが入社してきた。

何も知らない彼女は、この気まずい空気を断ち切るように元気よく挨拶をした。




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