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世界の意思にさようなら  作者: ラゲク
第七章 開拓地の狂犬
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第83話 朝は必ず来る

 「ツバキ! ツバキ! しっかりして」

「ダメだ! 血が止まらない……このままじゃ」

最悪の結果が頭をよぎった。カンダさんは非能力者、つまり普通の人間だ。そんな彼女が、これほどの大けがを負ってしまうとなると、直ぐにでも医者に診てもらわねばならない。しかし近くに病院はない。

「ああ、どうしたら……押さえても押さえても血が止まらない。いやぁ」

カンダさんの顔からみるみる生気が失われていくのが分かる。


「……ハイノメ、ミナを酒で叩き起こして」

「え?」

「さっきの部屋のゼノたちをここに運んできて」

「う、うん! わかったわ」

僕は大粒の涙を流す彼女を奮い立たせた後、眠っていたミナさんを無理やり起こさせた。ちょっとかわいそうだが緊急事態なんだ。



 「ちょっと痛いが頑張れよ」

僕は自分に言い聞かせた後、口元をサメの様なモノへと変化させた。前に隅田川で仕留めたゼノの能力だ。その後僕は自分の右腕を食い千切った。あまりの痛みに気絶しそうになったが、堪えて彼女の切断された腕にくっ付けた。本当は彼女自身の腕を使いたかったが、その腕はあの女に持っていかれてしまったからしかたがない。その後はハイノメを治療した時の様に、細い血管のようなもので縫合したりした。何とか血は止まった。

「ショウ、持ってきたわ」

ハイノメ達が帰ってきた。ミナさんの火事場の馬鹿力で数体のゼノが一度に運ばれてきた。これだけあれば十分だろう……

「よし、これを全部喰う」

「え、これを?」

僕は無我夢中で喰いまくった。


 喰って喰って喰って喰って……


「ショ、ショウ君……大丈夫?」

ミナさん達が途中、おぞましいモノでも見ている顔付で、僕のことを心配してくれたが、一切気にならなかった。ただひたすらに食べていた。


 気が付いた時には大量にあったゼノの死骸は、どこか別の空間へと消え去ったのかすっかり消え去っていた。

「ふーよし、やるぞ」

僕はカンダさんに取り付けた元僕の腕をグッと、つぶれない程度に握りしめ、そこからエネルギーを分け与えるイメージで、血を流していった。




 「う、ううん ここはいったい?」

白雪姫のように眠りについていた彼女が目を覚ました。

「あ、ああああ! 生き返った! 生き返りましたよ!」

「ツバキ! 無事なのね! これ分かる? 今、私の指何本?」

ミナさんとハイノメは、彼女の傍に駆け寄った。

「うわあああああああん、無事でなによりですぅぅぅぅぅ」

「ちょっと、ユズキさん! 鼻水つけないで下さい! あと、二本です」

「うう、正解……うわあああああああん、よかった~」

ハイノメも我慢できずに泣き始めた。

「ええい、アンタまで鼻水出すな……ご心配おかけしました皆さん。そういえば、トガさんは~って、あしたのジョーみたいに燃え尽きている?!」

「……無事でなにより……」

僕は能力を使い切った反動なのか、彼女が無事だと知ったからか、燃え尽きてしまった。

「……ありがとうございました。トガさん。そうだ、女将さんたちは?」

「それが、その……」

僕は彼女が気を失った後の事を伝えた……


 「そうですか……娘さんは無事ですが……女将さんが……」

「今回は私たちの負けよ……でも、完全に負けたわけじゃない! 次あったらギタンギタンのボコボコにしてやろう!」

「ええ、本当に」


後ろばかり向いてはいけない、失敗しても、後悔しても、過去には戻れないのだから、朝日がそう僕たちにぬくもりで伝えてくれている気がした。

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