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世界の意思にさようなら  作者: ラゲク
第七章 開拓地の狂犬
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第82話 腕切り

 僕は能力で腕を変形させ、眠っているミナさんと、ハイノメを担いで、急いでカンダさん達のいる場所へと向かった。その時にはもう、敵から受けた攻撃は完璧に治っていた。自分自身でもドン引きするぐらいに再生力が上がっている気がする。ただ、お腹が減るのが難点だが。


 カンダさんと別れた場所にたどり着くと、さっきの女とゲンドウがいた。そして、女の足元に抵抗したもののやられてしまったカンダさんが……

「ツバキ! アンタら覚悟できてんでしょうね!」

怒りに身を任せてハイノメは能力を発動しようとしたが、かなり体力を消耗しているからか、背中から煙は出なかった。


「おや! まさかこんなにも早く来られるとは……、それにワタクシが付けた傷が無くなっている? 再生したのでしょうか? なんにせよ脅威ですが、そちらのマスクの方はお荷物の様ですし、もう一方はお眠りになられている様子……、お荷物さんが二人……、いえワタクシの足元の女性を含めれば三人、さて、殿方よ姫君を守りながらこの状況どう切り抜けますか?」


女はかなり余裕をかましていた。確かにこちらは戦えるのが僕だけだ。それに対して相手は、謎の女と頼りない大の男の二人、しかもカンダさんを人質に取ったも同然だ。


 いや、そうでもないな……


何故なら、男はぐったりとした女将さんを抱えている。そして、もう一人ツルギちゃんを、謎の女が抱えていたからだ。二人共、両腕を塞がれている状態なのだ。僕があの女の懐に入り、一発大きいのを与えて再起不能にすれば勝機はある。


 チャンスは恐らく一度キリ……


 あの女の能力はまだ分からないが、

 手を防がれていたらまともに戦えないはず……

 

女がゆっくりと腰を下ろし始めた。

僕はその動作を見逃さなかった。

その動作は、腕に抱えているツルギちゃんを降ろす行動だ!


「!!? 近づいて来る! なるほど、素早い判断です。ならこれならどうでしょう?」

女は降ろすのを止め、ツルギちゃんを僕の方へ向けて投げつけてきた。

いきなりの展開で僕は彼女を受け止めた後、尻もちをついて倒れてしまった。

「おい、娘だぞ! せっかく大人しくなって、一緒に帰れるというチャンスなのに!」

「まあ、ここは撤退しましょう……。奥様は回収できたことですし、今回はここまで、娘さんは次回にしましょう」

女は冷静だった。しかし、男の方はそうでもないようだ。

「ふざけるな! 話が違う」

「あのですね! あなたの価値はその能力にあることをお忘れなく、あなたが教団にとって利益になるから、しかたなく娘女房を教団に入信してあげることを!」

冷静だった女は突然スイッチが入ったのか、キレ気味に説教をしだした。

「り、利益って……サクヤ様はそんな利益だなんて……」

「はいはい、帰りますよ。それでは世界樹対策課日本支部の皆様ごきげんよう。あ、そうでしたわ。神の祝福を受けてないくせに、このワタクシに歯向かった者に洗礼をせねば!」


女はそう言った後、カンダさんの方へ向かい彼女の腕を掴んだ。そして、右手でカンダさんの腕を思いっきり殴った。と、おもいきや数センチズレている?

 

だが、期待は裏切られた。

あえてずらした。いや、そもそもそういうモノなんだ!


「いうあああああああああ」

「あら、一回じゃ落とせませんでしたわ。フン!」

女はそう言ってもう一度、何か鋭利なものをカンダさんの腕に向けて振り下ろした。


 グジュアッ


骨と肉が切り落とされた音がした。中華料理で豚足を切り落とすみたいに生々しい音が伝わった。

「いぎゃあああああああああああ」

カンダさんは旅館中に響き渡る音量で叫び、そのまま気を失ってしまった。

「ツバキ!」

「カンダさん!」

「それではごきげんよう。また近いうちに会う事でしょう……」

「あんた……殺す」

ハイノメの殺意も空しく、女たちは女将さんを連れ去り逃げ去って行った。

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