グロテスクなヒール
僕たちは次から次へと現れるゼノの対処に追われていた。この事態を起こしたゲンドウは腰を抜かし、キャットウォークは血を流し過ぎて顔色が悪くなっていた。
「アハハハ! いいじゃない! う、おええ~もうダメ……」
狂乱のミナさんが急に立ち止まったと思ったら、大量のゲロを床にぶちまけ、みるみるうちに赤い顔が青ざめた顔に切り替わり、別人のように落ち着いてしまった。
「ああもう! こんな時に能力切れちゃったの?!」
「ミナさんはもう駄目だ! 僕たちで何とかしよう!」
部屋はネズミとゼノの残骸で滅茶苦茶になってしまった。まるでシリアルキラーが出てくる映画の光景の様だった。僕とハイノメはあの後、何とか迫りくるゼノたちをすべて倒したのだが、その時にハイノメは腹部に大きな傷を負ってしまった。
「大丈夫か?」
「ええ、今のところは……」
強気でいるが傷はかなりでかい。いくら能力者だからと言っても、ここまでひどいと応急処置しないと出血で死んでしまう。だがぼくには医療の知識がない。
喰え……
頭の中で何かが囁いた気がした。
「ハイノメ! 少し待っていてくれ!」
僕はそう言った後、無我夢中で周りのゼノの死骸を食い漁った。
その後、ハイノメの傷口に手を当てた。自分でも何をやっているのかよくわかってなかったのだが、何故か何とかなるような気がした。しばらくすると、手から細い血管のようなモノがウネウネと出てきたと思ったら、傷口へと入っていった。
「うぐああ、うぐ……」
痛いのかハイノメが悶えている。
「ごめん、じっとしていて」
数分後、傷口は塞がり綺麗になっていた。
「ハアハア……、たく! いつの間にそんなこともできる様になったのよ」
「いやぁ~、とっさに思いついたんだよ! なんかこうピコーンッと」
「ありがとう。でもあまり使わない方がいいわね。結構キモかったよ」
「あはは……気を付けておくよ」
「さあ、寝落ちしているミナとそこのおっさんとねずみ男を連れて、この場を離れましょう。ここは血とゲロの匂いで鼻がおかしくなりそう! ショウ! おんぶして! もうヘトヘト……」
駄々を捏ねているハイノメを、やれやれと思いながら手を伸ばし、彼女をおんぶしようとした時だった……
ザシュッ
僕の首に何かが刺さったのだ。何か鋭利なものが……。
「ショウ!」
手で取って首元から抜くと、何か鋭利なモノがカランカランと音をたてながら、地面に転がっていった様だ……。本当に何なのか分からない……、色のない物が僕の血をまとっているだけ……。しいて言うなら透明色……。
「あ、が、何が……一体だれが?」
僕は辺りを見回したが、敵の姿はいなかった……
ゲンドウがやったとも思えないし、キャットウォークは気絶している。
「おやおや、しぶといですね……」
何処からか、いやこの部屋、直ぐ近くに聞き覚えのない女性の声が伝わった。
「だ、誰だ! 姿を現せ!」
「うわあ」
ゲンドウの方から驚きの声が響いたと思ったら、彼の横に目を瞑ったお嬢様姿の女性が立っていた。
「さあ、ゲンドウさん……貴方の奥様の所まで跳べますか? それなら失敗もしないでしょう。まさか、また失敗などしませんよね?」
女は高圧的にゲンドウに詰め寄った。その後、ゲンドウは難関大学の試験の顔付になり、しばらくしてから2人はこの場から消えた……
「まずいわ! ツバキ達が危ない……」




