第77話 猫の通り道《キャットウォーク》
男の服から真っ白な手のひらサイズ程の小さなネズミが現れた。街中で見かけるドブネズミよりも小さくて、清潔感はあるのだが、何故だかはわからないが独特な不快感を感じる。
ミナさんと男との間の道にもネズミが一匹いた。おそらく、ミナさんはこのネズミが飛び出して来た為、急停止してこちらに引いてきたのだろう。
「で、このネズミがアンタの能力ってこと? 随分と可愛らしい能力ね!」
「沢山出せるのなら、全部潰してあげますよ♡」
「やめてミナ」
「ジョーダンですよ! 病気になりそうだし」
男は数秒間立ち止まった後、ハイノメ達の問いに答えた。
「違う! この能力は私のじゃない!」
「と言うことは、アンタも能力者なんだな……」
僕は男に詰め寄るように質問をした。返答はかえって来なかったが
しばらくすると窓の外から一人の男が現れた。
スラッとした高身長で僕と同い年位だろう、若い男性だ。
モデルかアイドルなのか、何となくだがそれっぽい雰囲気を感じる。
「この子達は、俺の能力で生み出したものですよ。
初めまして、俺の名は 猫の通り道 っていいます。コードネームですみません。こっちのお父さんは、ここ最近入信してくれたカメヤさん。えーと、カメヤゲンドウさん? でよろしかったんでしたっけ?」
「はい、そうです」
「ヨシ! それで俺たちは、このカメヤさんの奥様と娘さんにも、我々の宗教に入信してもらえたらな~なんて考えていたわけです。あと、この人の能力の実験も兼ねて、なんでここは大目に見ていただけないでしょうか?」
「ふざけないで」
いち早く反論したのはハイノメだった。こんな光景を見せられて、あんなに嫌がっている女の子を見捨てることなんてできないからだ。それはこの場にいる皆同じ意見だ。
いや、今のミナさんは違うかも……
ミナさんの方を見ると、明らかに獲物が増えたことに喜んでいるように見えるから
「あまり、家族関係に首を突っ込むのは良くないですよ」
「それはお互い様でしょ」
ハイノメも負けじと喰いついていく。
「そうだ、あなた方も私たちの宗教に入信しては!」
「やだ! そもそも私たちとアンタたち考え方が真逆じゃない! 水と油どころか火と水よ!」
「ふふふ、確かに!」
なんだ、ハイノメはこいつらの事を知っているのか?
「ハイノメ、コイツらのこと知っているのか?」
「ええ、まだ災害が起きたばかり、そして私が能力を得たばかりの時にね。勿論、ぶん殴って断ったわ!」
「オーこわ! で、こいつら何なんだよ。宗教団体なのか?」
「ええ、確か 樹神教とか言ってたわね。世界樹とゼノを崇め祭っている。頭のおかしいカルト宗教で、テロリストよ」
ひっどい言われようだ。流石にここまで言われると、向こうもたまったもんじゃない。
「な、何をいってるんだ君は! 全然違う!」
怒りで興奮気味になったゲンドウが即座に否定した。
「おい! 違うって」
「あれ? 違うの?」
ハイノメは大きく首を傾げ、窓の外にいるキャットウォークに目をやった。
仮にも敵なのに助け舟を出すな……
てか、キャットウォークって……
ちょっとダサい……
「えーと、間違ってはないですよ」
彼の口からは、60点くらい正解だというらしい。ゲンドウは不満そうだが、古株っぽい彼が言うことに反感は出来ないそうだ。
「設立当初は、まさに世界樹を神として崇めていました。まあ、今でも崇めているのですが、あとからゼノという天使の使いが現れましてね……」
「天使の使い~」
ハイノメが馬鹿にした口調でツッコんだが、キャットウォークは何もなかったかのようにスルーした。
「天使に信者たちがやられ……制裁を受けたんですよ。まあ、鍛錬不足だったんでしょう。そんな絶望てきな中、あの方が神になられたのです」
「そう、偉大なる教祖、神の代理人 サクヤ 様である」
最後の最後セリフを取られてしまったキャットウォークは不満そうだ。
「私は見たわけじゃないが、あの方が暴れ狂う天使の使いの怒りを鎮めたのだ。私のこの能力もあのお方のおかげなのだ。あのお方ならきっと……」
「おい爺、しゃべり過ぎだ!」
先程まで冷静なキャラだったキャットウォークが怒鳴り散らす。
この情報はどうやら、そうとうタブーらしい……
「ええい、こいつら入信するわけねえし。クソッ! 仕事増やしやがって、ここでお前らを始末する」
部屋の天井から突如、雲の様なモノが現れ、魔法陣を描き出しそこから、ポトポトと小さなものが落ちてきた。
ネズミだ……
「わりいな、おまえら殺すのはもっと後だったのに、ここで死んでくれ 天ペスト」




