第76話 成長
僕達四人は、変身したミナさんを先頭に、女将さん親子二人の元へ向かっている。
廊下を走っていると、何かがゴンっとぶつかった音が、奥の方の部屋から波の様に伝わってきた。
「あそこのね。で、どうするの?」
ミナさんはその部屋から十歩程離れた場所で立ち止まった。
「人質を取られているかもしれません。ここは慎重に……」
カンダさんは冷静に判断している。
「ミナさん、ここから臭いとか音で、何とか中の状況とか分かったり出来ますか?」
「む、無茶言わないで……」
珍しくこの状態のミナさんが困っている。
「まあ、時間を頂けるのであれば♡ ある程度は分かるかも?♡」
「どの位かかりますか?」
カンダさんがもう一度ミナさんに問いかける。
「うーん、3,4分程かな?」
「待ってられんわ!」
僕はツッコみながら目の前の扉をぶち破った……
現場は悲惨だった。顔中血だらけで倒れている女将さんと、涙で顔がぐしゃぐしゃにした少女、そして横に犯人であろうDV男が立っていた。
事情を知らない人が見たら気まずくて逃げ出してしまいそうだ。
「すみません、家族会議中に……やっぱり一発殴らせてもらえませんか?」
昔の僕だったらこんなセリフ言わなかっただろう。
「アハハ! ショウ君の男らしいところも好き♡」
ミナさんはなんか興奮していた。すごくボディタッチしてくる……
「ショウ、アンタって意外とワイルドなのね。ドアが……」
ハイノメも普段の僕らしからぬ行動に驚いている様だ。
「ごめん、勢いに任せたら壊しちゃった……」
今更になって、感情的になっているとわかった。
カンダさんの言う通り、もし人質とか取られていたらどうするつもりだったんだ。
「まあ、結果オーライです」
ちょっと不満そうだがカンダさんからOKを貰った。
「な、なんだお前ら……お前はあの時の……」
男は動揺していた。
そりゃそうだ、ドアを盛大に壊して入ってくる奴らが来たのだから!
「ねえ、カンダさん……あのオヤジ敵よね♡」
不気味な笑みを浮かべて、ミナさんはカンダさんに聞いている。
「前みたいにやり過ぎたらダメですよ! もし何かあったら全力で死んでも私が止めます」
「あはは、それでこそ親友よ~」
ミナさんがガシッとカンダさんに抱き着いた。
「いだだだだ、痛いです! あと、今の状態のミナさんとは友達じゃないです」
「ガーン」
ガーンって自分から言う人初めて見た。
「ねえ、ショウ……アンタその腕!」
ハイノメが驚いた顔をして僕の腕の方を見ている。
そういえば、彼女にはまだ見せていなかった。
「ああ、これか! 僕もハイノメ達がいないところで強くなっているんだ。最近キラさんと何度か仕事している時、発見? 覚醒? まあどっちでもいいや。ゼノを食べたりしてたら、こんなことができるようになったんだ」
僕は自慢げにその腕をブンブン振り回した。まるでオークの様に大きな腕、そして禍々しい見た目をしたその腕は、見掛け倒しではなく、このようにドアをも簡単に吹き飛ばすことができる。
「よーするに化け物って事なんだよ」
「アハハ! いいね! 今度私達2人で、嫌な目で見てくるヤツにちょっかい出しに行く?」
「……イジメは良くないぞ」
「おい! 何ごちゃごちゃ話してんだ! おまえら何が目的なんだよ! こっちは真剣に家族会議やってんだよ」
しびれを切らした男は僕たちに怒鳴り散らしてきた。
「うっさいわね、短気は嫌われるわよ おじさん♡」
そう言い放った後、ミナさんは男へ距離を詰めた。短距離選手顔負けの走り出しを見せた彼女は、一瞬の内に男の懐まで詰めていた。
「はや!」
決着はすぐにつくと思っていた。
しかし、何故か彼女は勢いを無理やり殺した後、僕たちの方へ後退した。
「ど、どうしたのミナ?」
「いえ、なんかおっさんの服の中からネズミが出てきたから……」
気付くべきだった。
ここに入ってきたときに男は僕たちの姿を見て、
ほとんど動揺していないことに……
「能力者ってことね……」
「そういう事ですよ先輩! ああ、興奮してきた♡」




