表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の意思にさようなら  作者: ラゲク
第七章 開拓地の狂犬
75/145

第75話 ああ神様

 「なあ、なんでそんなに離れるんだ……」

男はじりじりと私たち親子に近づいて来る……。昔は優しく頼もしかった男は、今は何処にもいない……。


 娘だけは……


 私の傍で子羊の様に怯えている娘、昔は家族3人で仲良く暮らしていたのに……


 こうなってしまったのは私にも責任はある。


 いえ、私のせいだわ


 私が旅館の事を言い訳にして家族の絆を壊してしまったから……


「ミサト、信じてくれ! あの方に頼めばもう一度、もう一度戻れるんだ。過去のことは忘れよう! な?! ツルギもそう思うだろ?! あの時はお父さんどうかしていた。もう一度、あの頃の……」


男の目は正気ではなかった。何かにとりつかれているように感じる。

「何か宗教的なモノでもやってるの? 昔のアナタは、そんなモノに頼る人じゃなかった……」

「そんなモノと言うなぁぁぁぁ」

男は溜まっていたものが、あふれ出たように激怒した。相当その宗教にどっぷりとはまってしまっている様だ。人はここまで変わってしまうのだと、改めて痛感した。

「ツルギ……こんなお母さんを許してね……」


私は娘の耳元でそうつぶやいて、隠し持っていた包丁を取り出した。

昨晩、この男が周りを張り付いたので、もしかしたらと思って持っていたのだ。


 出来る事なら使いたくは無かった。

 でも、今のアイツはこの子に何をしでかすかわからない!


「お、おい! 亭主に向かって何てもん向けてんだ!」

「うるさい! アンタを殺して私も死ぬ! そうよ、元はといえば私が悪いんだもの! 二人仲良く地獄で、遅くなった結婚記念旅行でも行きましょう」

覚悟は決まっていた。手は震えているが、いつでも刺せる状態だ。


「お、おかあさん……」

傍にいる娘が、か細い声で呼んでくれた。

私は覚悟を決め、包丁を両手でグッと力強く持ち、目の前の男に向かって刺した。


 

と、思った……

私の覚悟は空を切り、明後日の方向に向かって壁に激突した。


「え、なん……」

私は何が起こったのか理解できなかった。壁にぶつかって混乱しているわけではない、目の前にいたはずの男が急に、刺す瞬間にパッと消えてしまったから。

「あ、危ない……本当に殺しに来るなんて……」

混乱しているのは私だけじゃないらしい。

いつのまにか男は娘の近くにまで移動している。


「ミサト、なんでなんだよ……なんでなんだよ!」

男は顔を真っ赤にしてこちらに近づいて来る。そして大きく腕を上げ、硬く丸めた拳で殴ってきた。抵抗するための包丁は手元から離れてしまった。私はなす術もなく、

殴られ続けた。


「やめて、お父さん!」

 

 ツルギが大きな声で叫んでいるの? 

 頭が働いていないからかよくわからない。

 意識が薄れていくのは分かるけど……


「お、お父さんの言う通りにするから」

「そうか良かった! じゃあお父さんと一緒にあの方の元へ行こう!」


 お願い……


 誰か助けて……


 

 ドカンッ!


私の意識が薄れていく中、ドアを豪快に壊して現れた 


 ああ、神様……


「すみません、家族会議中に……やっぱり一発殴らせてもらえませんか?」

「アハハ! ショウ君の男らしいところも好き♡」

「ショウ、アンタって意外とワイルドなのね。ドアが……」

「ごめん、勢いに任せたら壊しちゃった……」

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ