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世界の意思にさようなら  作者: ラゲク
第七章 開拓地の狂犬
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第72話 近親相姦

 すっかり日付は変わり、辺りは静寂に包まれている。

「先ほどはお見苦しいところをお見せしてしまいました。」

「あはは、この旅館にいたら何かしらイベントが起こって飽きないですね」

ちょっと嫌味ったらしく言ってしまった。色々あり過ぎて疲れているせいだろう。気遣う気持ちがもう残っていなかった。本当に疲れているのは目の前にいる彼女の方なのに……


「あの、さっきの男性は……」

本当はこんなこと聞くべきじゃないことは分かっている。だが、こんなに巻き込まれたんだ。少しくらい僕にも知る権利はある。別に明日でもいいのだろうが、今聞いておかないとこの後眠れないのと、お互いモヤモヤしたまま終わりそうだったから。彼女はもうここで不満とか怒りとか吐き出してしまってもいいと思ったからだ。


「あの男は……私の元夫です」

女将さんはそう言った。どうやら僕に事情を話してくれるようだ。

「立ち話もなんなので、続きは中でお話ししましょう……」

彼女はそう言って僕を新しい部屋に案内し始めた。

「だとさ、ハイノメお前も来るか?」

僕は旅館の入り口付近に隠れていたハイノメに問いかけた。丁度女将さんがブチ切れた頃に気まずそうに現れていたのを僕は見逃さなかった。

「ば、ばれてたか……」

「バレバレだわ!」



 新しい部屋は最初の部屋より広く感じた。一人前の布団が敷いてあっても、まだまだスペースがあるほどに、ちょっと一人で過ごすには広すぎて落ち着かないかな?

僕たち三人は端っこにどかされた机を、わざわざ中心に戻し椅子に座っった。

「どこから話せばよいのか……」

女将さんは顔を下にして悩んでいた。本当は言いたくないのだろう。だがここは心を鬼にして聞かねばならない!

「まず、あの男のことについて教えてください。元夫って言っていましたが、なぜ今は別居中なんですか? あの男は何か娘さんにしたらしいですがいったい何を?」

「ちょっとショウ! いきなりそんなズケズケと……」

ハイノメが僕を止めてきた。止められてから気付いたが、結構感情的になっていた様だ。女将さんはゆっくりと口を動かし始めた。


「あのひと……いえ、あの男は私の元夫でここの旅館の元支配人。私たち夫婦が中心となって営業していたんです。ですがここ数年、相次ぐ不況の波で旅館の経営が悪化したためか、殺伐とした雰囲気が続きました。あの男は次第に人が変わったように、暴力を振るい始めました。私もそれがイヤで何とかしないと思い。当時常連だったお客様に、その……身を売りまして」

「……」

「すぐに大金が手に入りました。最初はお金が目的でしたが、次第に目的が変わっていきました。夫は私の行為を仕方のない事と割り切りつつも、どこか悔しい思いがあったんでしょう。さらに暴力は酷くなっていきました。私はそのことから逃げる様にお客様と交わっていきました。酷いときには数人に……でもその時は嫌じゃなかったんです。お客様が暴力をふるうことはありませんでしたし、優しく接して下さりました。数人がかりの時は奪い合いみたいになっていましたが」

「……」

「ある日、いつも良くして下さっているお客様に求婚を伝えられたんです。当初、私はその場ではお断りしましたが、今思えばその後すぐ夫に、別れ話を持ちかけようとしてたんだと思います。行為の後、身体を洗い夫の元に戻ると……」


 そこから話が進まなくなった。

 だが僕には何となく分った。

 分かってしまった。


「言いたくないのであれば無理に話さなくていいです」

「すみません」

自分の娘のことだ。仕方のない事だ。

「その件で娘さんは男性に対して嫌悪感を抱いてしまったと」

「……はい」


 事実は小説より奇なりって言うけど、こんなAVみたいなこと実際に起きているなんて……


 僕たちは女将さんの話を切り上げ解散した。女将さんは僕の部屋を後にした。

「ねえ、ショウ……」

「ん? どうしたの?」

「わたしさ……あんまり頭良くないから、わかんないんだけど。その、ツルギちゃんってお父さんに……レ、レイプ?」

「ああ、たぶんね。生々しくて吐き気がしてきた」

「……」

「次あったら、態度次第じゃぶん殴んないといけないな」

「そうだね」

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