第66話 キスの続き
トボトボと男一人廊下を歩いている。大きな風呂にゆっくりと浸かるはずが、まさか、隣の女子浴場を見たいがために、必死で穴が開いていないか探してしまった……。漫画やアニメでよくある方法の一つ、壁をよじ登ってまで覗く度胸は僕にはなかった。勿論そんなことしたら、今後の僕の人生は最悪になってしまう。
もしかしたら首になるかもしれないしな……
「あー僕のバカ! もったいないことしやがって!」
「? どうしたのショウ君?」
「うおっ! びっくりした。 ミナさんか」
くだらない後悔で悩まされ過ぎて、近くにミナさんが来ていたことに気付かなかった。男の欲がこんなにも狂わせることに僕は今一度思い知った。
「い、いや~ こ、コーヒー牛乳飲みたいな~なんて」
僕はその場で苦しまぎれの言い訳をついた。
「あー確かに、自販機置いてはありましたけど、全部売り切れになってましたね。というか、そもそも電源が入ってませんでしたし、やっぱり災害が影響しているのでしょうか。早く元の生活に戻ればいいですね!」
「う、うん」
ごめんミナさん! 嘘なんです!
コーヒー牛乳じゃなくて、女性たちの裸のこと考えていました。なんて口が裂けても言えやしない。
「ちょっと、ショウ君の部屋見に行ってもいいですか?」
「え、いいですけど…… あ! まーた酒持ってる」
「えへへ、牛乳とかはないですけど。お酒なら持参してきましたので」
「飲んベーだ」
「えへへ、今日はお休み気分ということで! 飲みましょう!」
「まったく、ハイノメ達と飲まなくていいの?」
「あの二人はオセロに夢中です」
「……気を使わなくていいんだよ?」
「オセロの横でお酒飲めなかったので……、それほどあの二人バチバチでした」
「アハハ、何となく想像できる!」
「たぶん想像しているよりもすごいですよ!」
僕たちはたわいない会話で盛り上がっていた。夜の雰囲気と相まって一層、心が落ち着く。彼女と話しているととても穏やかになるから
「それに、お酒は一人で飲んでもおいしくないので……、楽しくもないので」
ミナさんはもじもじし始めた。なにか言いずらいのだろうか?
「それに、気を使うとかそんなんじゃなくて、その……私自身がショウ君に会いたかったんです」
「ええ!」
僕は顔が真っ赤になってしまった。
これが告白ってやつか!
「ちょ! は、恥ずかしいので! 取りあえず、部屋に行きましょう」
そう言ってミナさんは、強引に僕を部屋に押し込んだ。
行きましょうって、ぼくの借りてる部屋なんだけど
広縁の狭い空間で夜空を背に、浴衣姿の男女が二人
ロックグラスをカラカラと鳴らしながら、いい雰囲気を出そうと必死な男。
先程からもじもじしながらこちらを見つめてくる女。
「いい、よぞらだね……」
「う、うん」
「……」
あああああ、何言ってんの? 僕は!
カラカラ長いこと鳴らして出たのがこれ?
酷すぎる……
「と、とりあえず飲みましょう! 夜空を眺めながら飲むお酒は格別です」
「う、うん」
ミナさんになんか情けない姿を晒してしまったか、不安で不安で酒を飲んでないのに吐き出しそうだった。とても飲む気にならなかった。
「変にカッコつけなくてもいいですよ」
言われてしまった。 おそらく顔に出ているんだろうな……
「私が好きなのは素のショウ君なんですから!」
「え?」
「覚えてますか、初めて会った時のこと…… 私が瓦礫の下敷きになっていたところを助けてくれたこと。」
ミナさんは初めて僕たちがあった時のことを話し始めた。勿論覚えて……いや、あの時は大変で、それどころじゃなかったからその部分はしらなかった。ぼくがミナさんを知ったのは
「その後、泣いて塞ぎ込んでいたいた私に優しく声をかけたくれたこと」
ごめんなさい! そこも覚えてない! いろんな人に声かけてたから……
「ちょっと コミュ障気味でしたけど!」
「仕方ないじゃん どう声を掛けたらいいかわかんなかったんだから」
「その後も、あなたは皆の為に不器用ながらも頑張ってましたね」
「ま、まあ…… あの時は皆で協力しないといけなかったし……」
「そんなあなたを後ろから見ていました。いつか私もあなたの様になりたくて……、私もボランティアに参加し始めて……」
そうこの時だ。ぼくがミナさんを知ったのは。 初めて会った時はそんな理由聞いてなかった。 僕なんかにあこがれたなんて。
「いつのまにか なりたいじゃなくて 傍に居たい……になってましたけど」
「ショウ君……」
「は、はい!」
僕はミナさんの告白にただ茫然としてしまった。そんな状態でいきなりの呼びかけに対して、つい驚いてしまった。
「キスの続きしませんか?」




