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世界の意思にさようなら  作者: ラゲク
第七章 開拓地の狂犬
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第63話 チャンス

 「あ、お帰りなさい二人共!」

話し合いを終えた僕とハイノメは部屋に戻った。部屋に入ると、心配していたミナさんがいち早く向かえてくれた。


「ただいま~ ほら、ショウはまず謝るところから」

ハイノメが僕の背中を押してきた。

「し、心配をおかけしてすみませんでした。」

「うむ、ヨシ!」

ハイノメが後ろで笑顔でガッツポーズを決めていた。

「まず何があったのか教えてください。」

カンダさんは訳を知りたがっていた。僕はハイノメに説明した事を二人にも話した。



「なるほど、そのようなことが……」

「なんでしょうか、そのツルギさんって子は男性恐怖症なのでしょうか? それとも本当にショウ君がイヤらしい顔をしていたのか……」

「いやいや、ミナさん! 僕のこと信じてよ」

「へへへ、冗談ですよ。トガ君がそんないやらしいこと思う訳ないですよね」

「ミ……ミナさん!」

「ただ、着物姿見たときに綺麗だな~とか、見とれてたんじゃないんですか?」


 ギクッ! ば、バレている……


「い、いやぁ そんなことは少しも思ってないよ」

「ふ~ん」

ミナさんが目を細くして僕のことを見ている。絶対信じていない


「ほらほら、そこ! イチャイチャしない! そもそも今回は仕事で来たんですよ!」

カンダさんが切り替えてきた。そういえばそうだった……

「え~、仕事するの?」

ハイノメはすっごく嫌そう 

「駄々こねてもダメです! まあ、今日は夜遅いので明日にしましょう」

「イエーイ! ツバキちゃん流石~♡」

ハイノメはそう言ってカンダさんに思いっきり抱き着いた。

「ええい、くっつかないで下さい。ユズキさん見てないでこの北斗の拳に出てきそうな女を離してください!」

「だーれが モブ顔ですって! ヒャッハー! くすぐってやる!」

コチョコチョコチョコチョ……

「あひゃあひゃあひゃ! ちょ! やめろ!」

最近はそうでもないけど、冷静なカンダさんが一応上司であろうハイノメにため口をつくとは……


 面白いものが見れた……



 空の色はもうすっかり変わっていた。僕たちが部屋で騒いでいると、トントンとドアをノックする音が入ってきた。その音には申し訳ない気持ちと、怯えた感情が入り交ざっているように感じた。


 女将さんだな……


ノックを聞いたハイノメが、早足で扉の前まで行き扉を開けた。扉の前に立っていたのは皆が予想していた通り女将さんだった。その表情はとても重かった。彼女は僕たちの顔色を窺うと、その場で膝をつき手を地に伏せて頭を下げた。


「ちょ、ちょっと 頭を上げて下さい。」

「大変申し訳ございませんでした。ここの女将として、一母として皆様にあの子の代わりに、私目が皆様に何とお詫び申し上げたらよいか……」


彼女の手は震えていた……僕たちに対する申し訳なさもあるが、それ以上に母親として、悔しさが入っているようにも感じる。


「は、ハイノメさんの言う通りです。顔を上げて下さい!」

「そ、そうです! ほら、ショウ君!」

「え?!」

「アンタ! 何やってんの? ごめんなさい言われたら!」

「え?!」


「お許しをいただこうなど思いません。ただ、お客様に対して取り返しのできない失態をしてしまい申し訳ありません」

「か、顔を上げて下さい……僕自身もあの子に失礼なことを言ってしまいました。あの子もなんか……その……頑張っていたようですし……」


 言ったぞハイノメ! これでいいんだろ!


完璧な返しをしたと思い、内心ニヤケが止まらなかった。

しかし、その心は打ち砕かれた。


「違うでしょ!」

「は?」

自分自身の評価は90点だったのに、先生から40点って言われた時と同じパンチを食らった。

「女将さん、娘さんとこいつをもう一度会わせてもらってもいいですか?」

「そんな、お客様をまた不快にさせるだけです」

女将さんがさらに動揺し始めた。ただでさえ、初めて会った時の威厳のようなものがすっかりなくなっているのに、思ってもいない返しをされて戸惑っている。

「ほら、ショウ! 私なんて言ったっけ?」

「……仲直りのこと?」

「そう、お互い嫌なまま終わってもしょうがないじゃない。なので、あの子の時間宜しければ貰ってもいいですか? もちろん無理にとは言いませんけど」


 いや、これ女将さん断りずらいだろ……


「……ありがとうございます。あの子にチャンスをいただき」

女将さんは少し間を置いた後、もう一度深く頭を下げた。

「さあ、食事にしましょ! せっかくの料理が冷めちゃう!」



 女将さんは部屋を後にした後、しばらくしてから料理を運んできた。このご時世にしてはかなり立派なものが出てきた。この辺りで採れそうな山菜ばかりなのと、川魚なので男の自分にとっては物足りないものがあるが、贅沢は言えない。これだけでも相当贅沢なのだが……


「すごーい これもしかして女将さんが採ってきたのですか?」

「ほほほ、お気に召されてなによりです。その山菜は私の父が山で採ってきたものでございます。お恥ずかしい話、このご時世なのでお肉が手に入らず…… もしかしたら殿方には物足りないかもしれませんが」


 見透かされてた


「おかわりもございますのでゆっくりとお召し上がりくださいませ」

女将さんはそう言い残し、僕らの部屋を後にした。

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