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世界の意思にさようなら  作者: ラゲク
第七章 開拓地の狂犬
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第60話 カメヤツルギ

 スタスタと廊下を歩く女性を、私はじっくりと少し離れた場所で観察している。

「ちょっと、お母さん! さっきの男の人と何してたの!?」

私には分かる。今私の目の前にいる女性はオンナになっている。

「ツ、ツルギ! な、何してたって…… 何もしてないけど」

「嘘つかないで! なんかすごく嬉しそう」

私の母、カメヤミサトはここの旅館を切り盛りする女社長だ。祖父の代から受け継いだこの旅館、そして女手一つで私を育ててくれた人。

近くで見てきた私にはその多忙さは十分に分かる。


 そんな人が! そんなお母さんが! あんな男に恋心を抱いている!


最初は久しぶりのお客さんで、ウキウキしていたのかとも思っていたのだけど。

あれは違うと断言できる! 娘の私にはわかる!


「違うわよ! ちょっとからかっただけよ」

「へ~、大切なお客様をねぇ~」

ぐぬぬ! と、反論できない母を見て確信した。


「それに、あの男の人ちょっと危なくない?」

「こら! ツルギ! お客様をそのように言うんじゃありません!」

「いや、ロリコンとかじゃないよ。 なんか  あの男の人といると変な感じになるというか……」


 見た目は普通、言動も普通、特に変わったこところはない……

 でも、なんか危ない気がする……


「ツルギ……あなた気になっているの?」

「ちがう! わたしはお母さんの事を思って……」

「まあ、わたしもお板が過ぎたわ。大事なお客様に対して……」

母はそう言うとキリっと切り替え、先ほどの少し抜けた顔を捨て再び歩き出した。


「ありがとう。ツルギ おかあさんどうかしていたわ」

「まあ、わかってくれたのならいいけど……。そうだ、お母さんは女性の方々をもてなして! 私はあの男を何とかするから」

「あの男とか言わないの! それよりもあなたにできるの? 人とのコミニケションの苦手なあなたが?」

母は私の事がかなり心配の様だ。私自身、自分がコミュ障だということは自覚している。しかし、母をあの男と一緒にしてしまうのは非常にマズい。何としても阻止しないといけないから

「お客様に失礼なことはできないわ! まだ駄目です」

「か、かわいい子には旅をさせよって言うじゃない! 私だって……」

そこから先言葉が出てこなかった。もぞもぞしている私を見て我が子可愛さに負けたのか、呆れたのか。

「わかったわ、まあ確かに人手が足りない今、あなたにも手伝って貰わないといけないし」


 ヨシ!


「ぜっっったいにお客様に失礼のないようにね」

「もちろん! まかせてよ」


「ふ、不安しかないわ……」



私は従業員スペースにもどり、ちゃんとした着物に着替えた。

まずは形から入らねば、着物は母に教えてもらっているので卒なく着こなせた。

「さあ、奴の本性を暴くといきますか!」

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