第57話 ツルギ
中に入ると長旅を癒してくれる空間が広がっていた。木の柔らかさと、癒しが足から伝わり、僕たちの疲れを忘れさせてくれたからだ。すこしほの暗く、上品な洞窟を思わせるこの場所は、現実世界から隔離されているかのようだ。
「すごく落ち着く……」
「そうですね、自宅もいいですけどたまにはこういう場所でのんびりするもいいですね」
ハイノメとカンダさんはかなり気に入ったようだ。
「気に入ってくださり何よりです。お客様に非日常を味わっていただくことも、私たちの勤めです。さあ、長旅でお疲れでしょう。お部屋までご案内致します」
女将さんはそう言うと、階段を少し上り誰かを呼び出した。
「ツルギ~、こっちに来てくれる? お客様のお荷物を運んで頂戴。」
先程までのしっかりとした雰囲気とは違い、かなり砕けた感じで、まるでお母さんの様な口調で頼んでいる。もしかして、息子さんなのだろうか?
「ほほほ、すみません人手不足なもので、今は娘たちにも手伝って貰っているのです」
女将さんは少し顔を赤くして僕らに謝罪した。
「聞こえてるよ、お母さん。言われなくても行くよ」
階段から降りてきたのは、十代半ば、後半ぐらいだろう若い少女が降りてきた。キリっとした顔立ち、長くきれいな黒い髪、まるでモデルの様なスタイルは、一瞬で目を奪われた。
ちょっとツンツンしているところが、カンダさんに似ている。女将さんとカンダさんを足して割って、若くしたような感じかな……
「フンッ!」 ドス!
「イテッ」
急にカンダさんがグーで横っ腹を殴ってきた。
「な、何するんですか?」
「いえ、なにかよからぬことを考えていたようなので!」
おいおいまじか! 心読めるのかよ……
「ちょっと、ショウ君! 女子高生はダメよ。ロリコンって言いますよ」
「いや違うから、てかミナさん JKは別によくない?」
「ダメです!」
「ええ! ショウはロリコンだったの?」
「違うって言ってるだろ!」
「いらっしゃいませ。長旅でお疲れでしょうお荷物お預かりいたします」
そう言った後、彼女はミナさんの抱えているお土産を預かった。
「す、すみません。若い子に持たせてしまって」
「いえいえ、仕事ですので」
「……」
「すみません、男性の方は自分でお願いします」
振り向いてこちらを見た彼女は、ごみを見るような目をしていた。
いや、別にやましいこと考えてないんだけど……
「ちょっと、ツルギ! 申し訳ありません」
女将さん……いや、彼女のお母さんが謝ってきた。
「あ、頭を上げて下さい。別に気にしてないので」
まあ、嘘なんだが 結構傷ついている。
女子高生にあんな目されたの初めてだわ
しっかし、あの目つき
僕が初めてカンダさんに会った時と同じ目だな
感じ悪いな~
「フンッ!」 ドス!
カンダさんが今度はみぞおちを思いっきり殴ってきた。
「な、なにを……」
「なんか、悪口言われた気がしたので!」
「……」
これがなければ、見た目は綺麗なのに中身で損するタイプなんだから。
後々大変だぞ!
「フンッ!」 ドス!
「また……殴られた」




