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世界の意思にさようなら  作者: ラゲク
第七章 開拓地の狂犬
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第56話 女将さん

 駅から離れた所の人気のない場所に、ドンと構えている旅館。とても立派な造りで、日本人は勿論、海外の日本文化の好きそうな方にもお勧めできる旅館だ。だが、人の気配は全くと言っていいほどなかった。


「着きました。ここが今回私たちが宿泊する場所です」

カンダさんはそう言って、意外と重くなさそうなリュックを降ろした。

「おお、ここが私たちの泊まる旅館ね! すごいじゃない!」

ハイノメが目を輝かせている。確かにいつも避難区域で寝泊まりするから、こんなちゃんとした場所で泊まれるとなると、テンションが上がるのもおかしくはない……

僕自身もかなりワクワクしている。本当に旅行しに来たみたいだ。

「は、早く部屋に入りましょう……。もう、足がへとへとで……」

両手にお土産を抱えながら、ヘロヘロなミナさんを見て、ハイノメが一言

「も~お土産買いすぎよ! 楽しむ前に疲れちゃってどうするの!」

「いや、ハイノメ、僕たち仕事で来ているからな」



 旅館の入口の前で笑顔で出迎えてくれる優しそうな人が、立っていた。まさにおもてなしの心の象徴ともいうべき存在、旅館の女将さんだ。年齢は30代半ばくらいで、ベテランの雰囲気を出しつつも、エネルギッシュなパワーも放っている。きちっと着こなした着物がまた、すごく妖艶に感じる。

「ちょっと、ショウくん何鼻の下伸ばしてるんですか!」

「いやいや違う違う」


 危ないところだった。ミナさんに気付かれるところだった。

 いや、気付かれてるか……


「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。世界樹対策課日本支部御一行様」

女将さんは優しい言葉遣いで、僕たちのことをもてなしてくれた。僕たちが来ることは知っていたようだ。

災害から結構月日が流れた、被害の少ない地域や県では、電話など使えるようになっている。

「お、流石対策課 ちゃんと予約してるじゃん」

「はい、今日はお客様の貸し切りでございますから」

「えぇ! そこまでしてくれたんですか!」

僕はびっくりして思わず声を荒げてしまった。

「流石、世界樹対策課 ブラックだけどこういうところは、しっかりとしているのね」

隣のカンダさんも驚いている

「いえ、申し訳ございません。恥ずかしいことながら、お客様以外のご要約がございませんもので……」

どうやら違ったようだ。少し気まずい雰囲気になってしまった。

カンダさんも申し訳なさそうな顔をしている。

「お気になさらずに、災害後ぱったりと客足が途絶えてしまっていたところ、お客様が、来てくださったのですから。その分、今回精一杯おもてなしさせてくださいね。」

女将さんはそういって優しい笑みで僕たちを和ませると、旅館の中へ案内した。


 



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