第119話 I wanna be your slave
まだあたりはほの暗い、夜明けの色がわずかに漂いはじめている。
隣にいた彼女は一足先に起きて、朝食の支度をしていた。
「おはよう、珈琲飲む?」
薄いシャツを着たツバキが聞いてきた。
僕はああ頼むと彼女に伝えた。
ヤッタのか……
「ツ、ツバキさん……」
「ツバキって言ってくれるんだ。でも、さんは付けないでほしい」
「お、おう。今更なんだけど、なんで僕なんかと……」
僕は率直に聞いた。
僕の何がいいのか?
それとも男ならだれでもよかったのか?
頭がこんがらがってまともな思考ができない
「私自身よくわからない……、けどショウのことを考えるとなんていうのかな、初めての感覚が心を包み込むの。あなたの事を考えるだけで身体が熱くなる。悪いことだとわかってる。友達の彼氏を奪うだなんて、最低な事だって。でも、こうでもしないと私自身がどうにかなりそうだったの!」
彼女は訴える様に僕に今の気持ち、想いを伝えてきた。
「こんな身体になってからおかしくなっちゃた。そんな時に私の事を綺麗だなんて言っちゃうなんて、本当に悪い人です。」
「ごめん……」
「謝らないでください、感謝してるんです。こんな身体になっても希望の光を照らしてくれたあなたに。」
「いや、もしかしたら。その身体になってしまったのは僕のせいかもしれないんだ。あの時ツバキを助けるため、僕は君の許可をとらず無理やり能力で治療してしまった。もしかしたら……」
「自分を責めないでください。それにショウが助けてくれなかったら今この場に私はいませんし、もしかしてショウは私の身体嫌いなのですか?」
「いや、そういう事じゃ……」
「ふふふ、少し揶揄っただけでーす♡ さあ、珈琲できました。はいどうぞ!」
彼女はマグカップに入った珈琲を僕に差し出した。温かくてとてもおいしい。たまに飲むインスタントの珈琲とは一味違う。体の芯まで、心も温かくしてくれる。
「ねぇ、出勤までまだまだ時間あるじゃないですか」
「ああ、そうだね」
「あと何回かできそう」
「早起きは三文の徳ってことか!」
「ふふふ、じゃあ3発は出来そう♡」
珈琲を飲み終えた僕たちは、またベットの上で繋がった。
「おはようございます!」
気持ちのいい朝、いや気分のいい朝だった。
僕は元気よく戦闘係Aの部屋を開けた。
「おはようショウ、いつもより元気いいじゃない! 何かいいことあった?」
「う、うん! 快便だったから!」
危ない危ない……
バレるわけにはいかないからな
「朝からうんちの話をされるとは、聞いといてあれだけど最悪だわ」
ハイノメには上手く誤魔化せたようだ。
「そうか、快便だったか! それは良いことだ。バナナでも食べた?」
「は、はい。食物繊維いっぱい取りましたから」
たぶんキラさんは気付かないと思う。この人鈍感だから……
問題は……
「ショウ君……」
ミナさんだ……、彼女はどうだろう。僕が昨日の夜と今朝、ツバキと一線を越えてしまったこと、彼女は気付くだろうか?
お付き合いしている仲とは言え、大変な世の中だから、仕事が忙しいからと、デートとかそのようなことはまだ一切していない。
そもそも、僕達が付き合っていることを知っているのは数人のみ、学生の恋愛みたいなものだ。それでも彼女を裏切ってしまった。
「バナナうんちだったんですね! 大きいのが出ると気持ちいいですよね!」
「ちょっと、ミナ! 女の子がそんなはしたない言葉言うもんじゃありません!」
よかった一先ずバレていない様だ。
「……」
「ん? どうかしたのミナ?」
「いえ、何でもありません……」
―治療部署―
「はあ、アイツちゃんと言ってくれるかしら……」
「どうしたのツルギちゃんため息ついて……、まさかトガ君の事考えてたの♡」
「まあそうですけど、そういう意味じゃないですよ! あと、フタバさんあの男とあまり関わるのは良くないですよ」
「あらあら、盗られたくないのね!」
「だからちげーし! 何となくだけど危険な香りがするのよ……。あと、昨日お風呂入りました? 芋けんぴまだツインテールに絡まってますよ」




