第116話 ドリルツインテールの人
中に入ると可愛らしい女の子がテキパキと働いていた。ソノメユイちゃんだ。ユイちゃんは僕のことに気が付くと、満面の笑みで近づいて来た。
「おはようございます。トガお兄ちゃん!」
もうすっかり喋れるように回復したこの子は、初めて会った時と比べて別人の様に明るくなった。周りの人たち、特にアオバさんのおかげで驚くほど早いスピードで、今の状態になったのだ。
「おはようございます。なんか、久しぶりだね! もうすっかり大丈夫そうだね」
「はい、早く小学校にまた通いたいんですが、こーゆー情勢? なので今はここで皆さんへの恩返しをしています。」
ええ子や……
思わず泣きそうになってしまった。
「そうだね、早く学校が元に戻るといいね!」
「はい、あと私の能力? 上手くコントロール? できないといけないよとアオバお母さんから言われているので……」
ん? お母さん?
聴き間違いだろうか、
とんでもないワードがこの子の口から放たれたような……
「ユ、ユイちゃん……今、お母さんって」
「うん、アオバお母さんのことだよ!」
あの人なに言わせてんだ。僕が苦い顔を浮かべると、僕の心情を察したのかユイちゃんは慌てて詳しく説明した。
「ち、ちがうの! 私お父さんとお母さんを失くしちゃって、その後、怖い女の人に捕まって悲しかったんです。そんな時に、トガお兄ちゃんと、アオバお母さんが助けてくれました。その後、アオバお母さんがすっごく優しくしてくれて、そのおかげで私は元気になれました。だから、わたしにとってお母さんなんです。わたしが言っているだけなの!」
凄く必死に想いを伝えてくる姿勢に圧倒されてしまった。
そこまで言われては何も言い返せまい。
「あと、アオバお母さん、私がいないとグータラしているもん」
「お、おう。じゃあアオバさんを頼むねユイお母さん!」
そう言うと、まんざらでもなさそうに、エッヘンとちょっと誇らしげにしていた。
「えーと、イクエさん? ここのお偉いさんは何処にいるのかな?」
「あ、イクエさんはね」
ユイちゃんがここの責任者のイクエさんの元へ案内しようとした時、奥から若い女の人が絶望した表情でこちらに来た。
「ああああ、ユイちゃんどうしよう、家の鍵失くしちゃった。」
「またですか、あ! 右ドリルに刺さっていますよ」
女はユイちゃんの指示の元、自身の立派なドリルツインテールに手を突っ込んで、鍵を探し始めた。こんなに立派なお嬢様ドリルツインテールは初めて見た。
「あった~ いつもありがとうユイちゃん」
いつもの事なのか……
しかも、左右のドリルツインテールになんかいろんなものがくっついているし
「もう、気を付けてくださいね!」
「えへへ、ゴメンね。あれ、そちらの方は?」
「初めまして、戦闘係のトガショウと申します。ここにいるカメヤツルギさんにお会いしたいのですが」
「そうなのですね、すみません変な所見せてしまって、私は フタバイクエ と言います。これからもよろしくお願いします。ツルギちゃんは今、会わせてよろしいのかどうか……」
やはりまだ、心に傷が残っているからだろう。
そもそも、初めて会った時にも男性嫌悪が凄かったからな。
「いいよ、話聞く」
僕達の心配を退けるかの様に、ご本人が顔を半分だけだして、答えてくれた。
「い、いいの? 無理しなくても……」
「大丈夫です。あと、フタバさん流石に芋けんぴをドリルに巻き付けているのはちょっと……」
「んな? ホント!?」
フタバさんは顔を真っ赤にした。
たしかに髪に芋けんぴが巻き込まれていた。3本も
「わたしも同じ意見です」
小学生のユイちゃんによる言葉のボディブローが効いたのか、
彼女はその場に倒れてしまった。
「それではイクエさんは向こうに連れて行きます。お2人の邪魔はしません」
「い、いいのかい? というかフタバさんどうやって運ぶの?」
「それはですね」
ユイちゃんはフタバさんのドリルツインテールを掴んでひぱって行った。
かなり慣れた手際だったのでよくあることなんだろう。あと、その際にも掃除に使うクイックルハンディの様にゴミがドリルツインテールに絡まっていった。
きたねぇ……




