第113話 パンダみたい
「帰ってきました~世界樹対策課日本支部!」
車から降りたミナさんが元気いっぱいに叫んだ。彼女に続き僕とハイノメ、そして今回初めての仕事をこなしたエマが車から降りた。
「いやぁ、大変なお仕事でしたがいい経験にナリマシタ!」
「エマもお疲れ様! まさか、後輩のアナタの方が活躍するなんてね」
「ハイノメ先輩、お褒めの言葉アリガトウゴザイマス。」
エマはハイノメに褒められて嬉しそうだ。
「ほらほら、アンタも降りなさい!」
ハイノメに無理やり引っ張られて車から降ろされる男、ヤタ君はネガティブなセリフをブツブツと呟きながらずっと頭を隠している。
「僕なんか……役立たずのどうしようもない奴なんです」
「そ、そんなことないよ。今回はたまたま運が悪かっただけ……」
ミナさんが落ち込んでいる彼を必死に励ましている。保健室の先生みたいだ。しかし、ネガティブモードの彼の心には全く届かなかった。
「邪魔どころか、変な宗教団体に入っちゃうし……。足を引っ張ることしかしてない。よく言うじゃないですか、真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方であるって」
「そ、それは~」
流石のミナさんも言葉に詰まってしまった。
「ナポレオンの名言ですよね! よ、よく知っているね~」
そこを褒めるの!?
「ああああ、僕なんかここに帰ってくる資格なんかないんだ! ああ世界樹様~」
こいつまだ洗脳とけてねぇな……
支部長室に着いた僕たちは、中で待っていた支部長とキラさん、そしてB班のリーダーヒカルさんに今回の件について詳しくお伝えした。その後、支部長に呼び出されたゼノの研究員サイトウさんも加わって話し合いになった。サイトウさんは終始興奮気味だったが、その都度、支部長の無言の圧力によって鎮火された。
支部長って何者なんだ?
「しかし、その話本当なのか……」
「ちょっと、キラさん私たちを疑っているんですか?」
ハイノメがキラさんに噛みついた。
「そうですよ! こんな面白い話!」
「サイトウさん少し黙ってもらえますか……」
なんかサイトウさんだけ皆と違う観点で物事を考えているような……
「とにかく、この件はマズいわね……まさか、お隣さんがもしかしたら怪物なのかも? だなんて噂が広まればいったいどうなることやら……。ゼノや能力者の事についても全然一般人に教えてないのにねぇ。どうするの? トウヤお兄たま。」
シリアスな雰囲気の中、いきなり発せられたトウヤお兄たまについては、誰も触れる者は現れなかった。
「そうだね、マスメディアも復活してきていることだし。近いうちに日本政府と大手のマスコミに協力して、ゼノの事、僕達対策課の事、能力者ザブの事も伝えるつもりだった。しかし、今回の様な事件を伝えてしまうと民衆の大混乱は確実だ。」
支部長もスルーしたのでこのままいくらしい
「その通りです。ゼノの事、能力者の事は実は民衆に風の噂で広まっています。まあ、まだ都市伝説の様な感じで、大半の者が真実を知らないままですが、ある程度受け入れる覚悟の様なものは出来ていると思われます。なのでそこまで民衆の暴動などは怒らないと予想していたのですが……。」
サイトウさんも支部長の意見に賛成らしい
「取り急ぎ、今回の件本部にも伝えます。あと、この件は内密で」
「おまた~! エマちゃんレオンちゃんお疲れさまでした。あなた達もありがとね♡ この子達がお世話になったわ♡」
支部長の報告が終わった後、ヒカルさんがお礼の言葉を僕たち4人に伝えた。
「いえいえ、それにエマがいなかったら事件解決できていませんでしたし」
「あら、そうなのショウちゃん! 凄いじゃない! エマちゃん!」
「えへへ、拙者、指示にシタガッタマデでござる」
「ううう、僕なんか、僕なんか……」
「ヤタ君は……ドンマイ!」
ドタドタと廊下を大きな音をたてながら近づく者が一人
「ト、トガさん! 人間に擬態するゼノを早く拝見させて下さい!」
サイトウさんだ。かなり興奮しているからか鼻息が荒い。
「サイトウさん! サンプルは回収したんですから本日はそれで我慢してください!」
カラスマ君が止めに入る。
「カラスマ君、早く研究しないと次の犠牲者が……」
「アンタは研究したいだけでしょ! さあさあ、皆さんは先に帰ってください。この人はこのまま研究室まで送るので!」
カラスマ君はそのままサイトウさんをずるずると奥へと連れて行った。
「パンダみたい……」
「ミナ! パンダに失礼よ!」




