第109話 夜の西部劇
「夜の見回りを変えてほしい?」
夕暮れ時、一度僕たちは集まって話し合っていた。
「ああ、夜の見回りは僕とエマに任せてほしいんだ」
「ショ、ショウ君……まさか如何わしい事を?」
「違います! 真面目です!」
僕は皆に夜の見回りは、毎回僕達がやるという提案を出した。
「何か策でもあるのですか?」
「うん、上手くいくかは分からないけど……」
「ここはトガ君の提案を受けましょう。事件もこれ以上長引かせるのもいけませんし、長くなればなるほど、他の事件の方に人員を割かれる可能性もありますから。」
「ありがとう、カラスマ君」
「じゃあ、そういう事で頼むわねショウ!」
「ああ任せてくれ よし! 夜に向けて寝るよエマ!」
「ショ、ショウ君!? 浮気はダメぇぇぇぇぇぇ」
「落ち着きなさいミナ、そっちの意味じゃないから……」
皆が眠りに落ちている真夜中、この危険な区画に起きている者はいない。僕達、見回り組だけだ。あの樹神教の人たちもいない。つまり、この闇の中には2人しかいないはず……
「今宵は月が綺麗です……」
暗闇の中、コツコツと忍び寄る影……
「どうやら来たようですね。トガさん」
「ええ、来ました。トオガタさん……」
僕はこう伝えた。
「この人が犯人です……」
僕の前に立っているのは背の高い男性、
ミドリカワさんだ……
「おや、トガさんじゃないですか? どうしてここに?」
「それはこっちのセリフですよ……」
無音の空間が数秒間続いた……
「ト、トガさん……私は……」
「トオガタさんはエマと一緒にこの場から逃げてください」
そう言った後、ミドリカワの服の中からエマがスゥ~と出てきた。
「な、なんですか? これは絵が動いて……」
ミドリカワはまさか自分の服に、エマが潜んでいるとは思っても見なかっただろう。
「トガさん、成功ですね……」
「悪いね、危険な事させちゃって……」
「ワタクシは大丈夫です」
エマの表情は悲しみに包まれていた……
ゼノが事件の原因だと思っていたら、それが人間だったんだから無理もない……。相当ショックの様だ。
「何故このような事を?」
「こ、このような事?」
「洗いざらい吐いてください……、ここにいる時点でもう疑いは晴れません……」
「……私は夜の見回りを」
この人の言い訳は見苦しかった……
「エマ、ハイノメ達にこのことを伝えてくれ……」
「わかりました。気を付けてくださいね。トガさん!」
エマはトオガタさんと一緒に戻って行った。
「もう一度聞きます。何故こんな事件を? そもそも、貴方は何者なんですか?」
「何者? 私はレモンの親です」
「もうすぐここに僕の仲間たちが集まってきます」
「そう、ですか……」
ミドリカワは体の力を抜いた……
降伏する気にでもなったのか?
瞬きをする瞬間、ヒョウの様な俊敏な動きでこちらに襲い掛かってきた。
ガキンッ
金属が衝突したような鈍い音が波の様に一瞬で広がった。
「これが答えですか……」
「お、驚いた! まさか同族だったなんて!」
同族? 何のことだ?
「君も世界樹の根から生まれた存在なんですね!」
「いや違うが」
「そんなはずは……、どう見たってその腕は、あなた方がゼノと言うものと同じじゃないですか!」
「そう言うあなたは、やっぱりゼノだったんですね……」
ミドリカワの腕は細く鋭利な刃物の様に変化している。
対して僕も出刃包丁の様に頑丈な刃物のような腕に変形させ受け止めたのだ。
「……そうです。私は化け物です。同族なら、もしかしたら私の気持ちがわかるとおもったのですが……」
「例え同族だったとしても、分からないからここにいるんだ」
「そうですか……、何処で気付いたのですか?」
「あんたが他の避難区画から来たってことかな? 妻がゼノに襲われた事件なんて聞いたことないし……、悲惨な現場だったと言ったんだから遺体はあるはずなんだから。それにあんたの体臭ゼノ臭かったから……」
「そうですか、気を付けないと……。ちなみにゼノ臭いってなんですか? 自分の体臭って気付けないもので……」
「さあ、僕もよくわかってない。なんとなくかな? 僕はゼノを食ってその能力を使えることが出来るんだ。食ったゼノの中に嗅覚の鋭い奴でもいたんだと思う。」
「そうなんですね! 同族ではないですが、私と貴方は似ている……」
会話は一度そこで途切れ、西部劇のガンマン達の緊張感が闇に拡がる……




