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世界の意思にさようなら  作者: ラゲク
第10章 父と子
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第108話 忍者修行

 「私たちは神に祈りを捧げないといけません!」

樹神教のヤマノウチが、朝から信者を集めて広場で演説を始めていた。その民衆の中にはトオガタさんの奥さんの姿もあった。手を合わせて有り難いと思いながらヤマノウチの演説を聴いているように見える。この姿を息子のマコトさんには見せられないと僕達は感じた。実の母親が頭がおかしくなってしまったのだから……。そんなこと思ってはいけないと心の中で思っていても、そう思わざるを得なかった。


「完全にあっち側に行っちゃいましたね……」

「あのヤマノウチって人も樹神教のほんの一部しか見えてないと思うの、キャットウォークみたいに能力者の事は知らないと思う。裏では誘拐とか犯罪行為しているって知ったら入信なんてしないから……」

ミナさんとハイノメは悲しそうな眼をして遠くからこの光景を見ていた。


「で、アイツはどうします……」

カラスマ君の指先には大粒の涙を流しながら演説を聴いているヤタ君の姿があった。

「アイツはもう駄目だ」

「そうか……ダメか……」

「ちょっとショウ! まだ、間に合うから! たぶん……」

「ユミさん……」

「オー、ヤタさん転職したのデスネ!」

僕達対策課全員、彼の事は諦め掛けていた。



「パパ、みんな何で集まっているの?」

「ん? それはね、有難い話を聴きたいからだよ」

僕達の少し後ろの方で、昨日の親子が動物園の動物を見るかのように、物珍しさに見ていた。

「でも、あの人たち怪物を神様って言ってるじゃん」

「そ、そうだね。パパも変だと思うよ……」」

「あの怪物がいなければママもいたのに……」

女の子は今にも泣きそうになっていた。それに気づいた父親が優しい言葉を掛けながら、女の子を励ましている。少し慣れない感じだが、親子の優しさをジーンと感じさせてくれる。

「あ、昨日のお兄さんたちだ! おーい!」

向こうもこちらに気付いたようだ。女の子が元気いっぱいに手を振ってくれた。

「トガさん、昨日の親子デース」

「そうだね、大変な時だけど子供の笑顔は励みになるね」




 お昼のランチタイムまでもうすぐの時間帯! 僕たちは昨日と同じく、3つのチームに分かれて調査を始めていた。ハイノメとトオガタさんの2人は、樹神教の調査の動向を見張っている。


「お兄さんたちはここの人たちじゃないね! それとも最近引っ越してきたの?」

「僕達はね、悪い怪物退治に来たんだ!」

「そうなの! じゃあ、お兄さんたちはヒーローなの?」

僕達とレモンちゃんが楽しく話している後ろで、パパさんは三歩引いた場所で温かく見守っている。

「そうですヨ、ワタクシはくノ一なんでーす」

「くノ一?」

「えーと、忍者デス! 忍たま乱太郎とかナルトとか……」

「???」

レモンちゃんは忍者が何なのかいまいちピンときていないようだ。


 広場の公園でレモンちゃんとエマは、事件の事なんて忘れて全力で遊んでいる。

「あはは、子供は無邪気ですね!」

「そうですね、1人は大人ですが……」

僕とパパさんは2人をベンチから見守っている。

「そういえば、自己紹介がまだでした。私、世界樹対策課のトガといいます。」

「えーと、私は……ミドリカワといいます」

「ミドリカワさんですね。ここへは最近来られたのですか?」

「ええ、娘のレモンと一緒に……」

「あの、失礼ながら奥様は? 質問攻めで申し訳ありません」

「いえいえ、妻は化け物に襲われて死んでしまいました。酷い光景でした。」

「そうだったのですね。辛い事を思い出させてしまい申し訳ありません。その時、ミドリカワさんはどちらに?」

「その時は仕事を……」

「こことは違う区でですか?」

「ええ、そうです。なにか……」

「いえ、ありがとうございました。さあ、2人とも遊び疲れてこっちに向かってきましたよ!」



 「忍者のお姉ちゃんたち! またねー」

「ハーイ、また明日~~」

「エマ、お前何の遊びしていたんだ?」

「勿論、忍者ごっこデース」

「お、おう!」

「トガさんは何か今回の事件に関する事聞けましたか?」

「いや、ミドリカワさんの事しか聞けなかったよ……」

「収穫なしですか!」

「いや、収穫はあったよ」

「エマってさ、何処にでも忍べるの?」

「勿論! くノ一ですから!」

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