第101話 疑い
僕達が事件現場で考え事をしていると、ぞろぞろと数人がこちらに近づいて来た。殺気ではない、何か嫌悪感の様なモノを放ちながら……
異色 そう感じた。
何か普通じゃない独特な雰囲気なのだ。
その中の一人の女性が口を開いた。
「神の御意志を妨げる愚か者よ! 立ち去れ!」
な、なんだ?
「み、皆さんやめてください! この方々は事件を解決して下さる方たちなのですよ!」
トオガタさんが、焦りながら彼女達に訴えた。
トオガタさんがここまで焦りを露わになるなんて……
「黙れ、貴様も邪教徒の肩を持つのか?」
「な、何を言っているのですか! 私はただ!」
「あの~、トオガタさんこの方達はいったい?」
「この方たちは樹神教という宗教団体の方々です。」
そのワードを聞いた瞬間、僕とミナさんとハイノメの三人は顔色を変えた。
樹神教……僕たちにとって苦い思いで、敵対した相手だ。
こいつらのせいで、ツルギちゃんが……
カンダさんが!!
僕は怒りを拳に込めた、しかしそれをミナさんが沈めてくれた。彼女自身も顔には気持ちが現れているが、グッとこらえていた。言いたいことはいっぱいあるが、おそらくこの人たちは、末端の信者たちなんだろう。怒りに任せて訴えても何も変わらない……
「ありがとうミナさん、もう大丈夫」
「うん、私も落ち着いてきた。もしかしたら幹部連中に騙されてるのかも知れない」
「で、どうする? お相手さんはやる気満々だけど……」
ピリついた空気が辺りを包み込む……
「と、取り敢えず、今回はここまでにして帰りましょう! 彼女達をあまり刺激しない方がいいです。」
トオガタさんが僕たちに提案してきた。
「そうですね。確かにここは引いた方が良さそう……」
ハイノメはそう言い、何が起きているのか事情が分かっていない2人の手を取った。僕たちは区画長が用意して下さった簡易宿泊所に一度向かうことにした。
「さっきの樹神教の方々はいつから現れたのですか?」
「そうですね。前回私たちが来た時にはいなかったハズです。」
「ええ、お2人の言う通りつ1カ月前です。先頭に立っていた女性、ヤマノウチさんが来てから徐々に彼女の考え……、いえ、樹神教の考えに賛同するものが増え始めていったんです。今は10人ほどですが、経った一ヶ月でここまで増えるとは思ってもいませんでした。最初はただの変なおばさんだと思っていたんですが……」
「要注意人物ね……」
「もしかして、今回の事件と関係あるのかも?」
「ミナ、あんまり憶測で人を疑うのは良くないよ。まあ、無理もないけど」
ハイノメも内心彼女が怪しいと思っている様だった。
樹神教……世界樹を崇める組織か……
「聞いておきたいのですが、他にもこの区画に来た方はいるのですか? 何処か近隣の区画で問題があったのですか?」
「いえ、近隣の区画で問題はありません。ただ、災害後ホームレスの様に1人で暮らしていた方や、他の区画に馴染めずここに来た方も数名います。やはり、人間関係というものは何処に行っても付き纏うものなんですね。」
トオガタさんは皮肉を込めてこの区画の現状を説明してくれた。
「あそこにいる親子もそうですね。お名前はわかりませんが仲の良い親子です。あと、あそこにいるおじいさんは別の区画が肌に合わなかったらしく、こちらに来た方ですね。あと、あそこの綺麗な女性は別の区画で……アッ あのーその~」
トオガタさんはつい口が滑ってしまったのか、言葉を濁した。
「ああ、言わなくていいですから!」
「す、すみません」
すっかり太陽は顔を隠し代わりに月が現れた。今宵の月はとても綺麗に輝いている。
「さて、トイレに行こう」
区画のトイレは共同だ。なんか懐かしい……
共同トイレに向かう途中、今日見かけた親子に出会った。背の高いお父さんと可愛らしい格好をした娘さんの2人だ。相当子供を可愛がっていることが、娘の格好と笑顔でわかる。
「ねえ、パパ気分はどう?」
「ああ、絶好調だ。これもレモンのおかげだよ」
どうやら娘はレモンと言う名前らしい……
今時の可愛らしい名前だ。




