第100話 住む世界
「おお、皆様今回はかなり大人数で……来てくださりありがとうございます。」
トオガタさんの案内で、僕たちは区画長のジンエイさんに会う事が出来た。ジンエイさんは、区画内の住民達に声をかけていたらしい。今回の事件で、住民の方々は心底怯えているからだ。まだ近くにゼノがいるかもしれない……、今度殺されるのは自分かも知れない……、その恐怖が区画内全域に漂っているように感じ取れた。
「お久しぶりです、対策課のハイノメです。」
「おお、また貴方が来てくださって嬉しいです。お隣はユズキさんですね。ほんの少しの間に随分と、顔立ちが良くなって……お仕事の方も大分慣れてきましたかな?」
まるで久しぶりに孫娘に会えたおじいちゃんの反応だった。
「区画長、今回の事件の大まかな説明はしましたので、この後は一度、事件現場を案内しても?」
「ああ、私は他の方々のケアに回っているから。申し訳ないが、対策課の方々はトオガタ君に任せるよ。マコトにもよろしくと伝えておいてくれ」
ジンエイさんはそう言った後、体育座りで顔を隠した女性の傍に近寄り、優しい言葉をかけ始めた。
ああやって1人ずつ声をかけているんだ……
「素晴らしい方でしたね。中々できることじゃないですから」
僕はトオガタさんにジンエイさんの印象を伝えた。ゼノとの戦闘や、様々な事件で僕自身成長していると感じてはいるが、先ほどのジンエイさんの様な行動を今の自分にも出来るかと考えると、あの人の凄さがググっと心に響く。
「ええ、私もあの人には救われています。」
「でも、前回お会いした時より少しやつれていたようにも感じたわ。ちゃんと睡眠とかとれているのかしら?」
ハイノメが心配そうにトオガタさんに問いかけた。
「睡眠時間というよりストレスですね。毎日ああやって声をかけているので……。勿論、ゼノの恐怖は自分自身にもあるのですから」
「そうですよね……早いとこ退治しちゃいましょう!」
「お、ミナいいガッツじゃない! ところでジンエイさんの息子さんはどちらに?」
「彼は近辺の調査をしています。もしかたら事件の原因となった世界樹の根を見つけられるかもしれませんから。」
区画の隅の方、人気の少ない場所が事件の現場だった。殺人鬼が気に入りそうな死角が多く、この辺りなら人を殺すならもってこいの場所だった。まさかゼノにそんな知能があるとは思えないのだが……
「ここで事件があったと……」
「まるで見つからないように場所を選んでいるわね。エイジ、ゼノってこんな行動とるの? ていうか出来るの?」
「うーん、研究委員じゃないので詳しくはわからないですが、動物型のゼノならありえるかと……、狼のようなタイプのやつですね。知性がないわけではないと研究結果は出ています。」
「なるほどね つまり獣型が有力と……」
「もしかしたら、僕たちの様な能力者の可能性もあるかも?」
「その線もゼロじゃないね」
僕達4人は各々、色々な考えを議論し始めた。
「な、なんか私たちと住む世界が違うというか、おいて行かれた感じです。」
「安心して下さい! ワタクシたちも置いておかれています。」
「あなた方は?」
「シンソツ?ってやつです」
「なるほど、能力者とかなんとか、噂事態は聞いているんですが、まだ私にとっては漫画の中の世界ですね。ゼノとか世界樹とかSFの世界のモノじゃないですか。」
「おお、アナタ漫画知っているのですか! 好きなモノありますか?」
「ワンピースとかナルトとか少年漫画が好きです」
「わかりまーす、ワタクシも大好きです!」
僕達が調査を進めていく中、後ろでエマとトオガタさんが漫画の話題で盛り上がっていた。
ヤタ君は蚊帳の外だった……




