Phase45 式
さらに二週間経った。
クリノクロアからの第二軍がやっと到着した。
一部を砦の防衛に充て、英雄とかは、第二王女や糞共の護送をするみたいだ。まあ、相手も攻めこんではこないだろうし、撤退してから音沙汰もないから大丈夫だとは思う。
俺も王都に向かわないといけないようだ。
英雄の独断で俺を子爵にしたが、正式な任命は王様がやるらしい。
王都までは十日かかるみたいだ。数百人規模の移動だから、早めのペースで動くらしい。そりゃあ数千人とか動くよりは移動ペースが早くなるのも頷ける。
英雄もいるし、防衛力は高いはずだ。俺用の馬車もあるみたいだ。
貴族用というか、なんか高級そうだ。全般的に言えるが貴族用のものは装飾が多かったり、なんか高そうな宝石がついていたりすることが多い。
宝石を作ってみるのもいいな。この前武器にダイヤモンドコーティングとかもしたけど、真面目に作って貴族の婦女子方に売るのもいいだろう。
「では、出発するぞ」
ゆっくりと動き出した。ほとんど振動はなく快適だ。
ちゃんとクッションとかもあっておしりに優しいのは素晴らしいし、寝っ転がれるくらいには広いスペースがあるから楽だ。
「カナメは、どんな街づくりをするつもりなの?」
メリッサに問われた。あれから二週間たってもレミアはむっつりとしている。
「うーん貰える規模がどのくらいかわからないけど、ブッド伯爵に聞いたら小さな街程度らしい。研究者の誘致とか、商業を活性化とかしたいかなあ」
「商業ギルドからの扱いがどうなったか気になるのだけど。それ次第じゃ商業系は駄目じゃない?」
「一度抹消された後復帰したらしい。さっきアラン伯爵から連絡があったんだ。」
「間に合わなかったのね……。多分店の中の物は没収されている可能性が高いわ」
「まあ、商業ギルドに再登録出来ただけでも良かったと思うよ。商業ギルドが使えなきゃこれからどうしようもなくなるもの」
「そうね……。店の設備は良かったのだけど……」
「まあ、俺も魔法陣とか作りたいしまた作ろうかなって思うよ。カルビンが心配だけど……」
「うまくやっていそうな気もするけど……。まあこっちから手紙も送っているし、連絡待ちだわね」
勝手な思い込みだけど、最後に渡したのは砂糖とかそういうものだったし、市場制圧くらいやってそうだな。
少なくとも俺よりは商才はあるだろうし、ほんとに年下なのかたまに見紛ってしまう。
「今回の防衛戦で結構役に立った、魔力補給用魔法陣を改良したいんだけど、どうしようか?」
「手袋型にするとか、多層構造にするとか、いろいろ案はあったけど実践するしか無いわね。今の一枚だけの状況じゃ微量の回復だし、研究の余地は多いわ」
「お金次第だけどいろんなことをやってみたいね。魔晶石があるのは大きな利点だし、魔晶石使い放題だから研究者さん来ません? って言ったら人が集まりそうだね」
「使い放題、はやりすぎだと思うわ。過去に見た理論で、建物一個分の大きさの魔晶石を使って短距離間の転移をするっていう話があったけど予算不足で却下されたっていう話があるし、そんな無茶な話も通っちゃうわ」
転移……。俺がこっちに来た原因か?
「こっちに俺が転移したのってそういうのが原因じゃないのかな?」
「いや、あれは理論上のはずよ。そもそもそんな量の魔晶石は用意できっこないし、空間制御の研究なんて理論はあっても進んでないわ。たしかにとんでもない量の魔晶石があれば可能じゃないのかって話はあるけど……。夢物語だわ。現実的じゃない」
でも、現に俺は何らかの原因で転移してきている。そういうのも調べてみるといいかもしれない。建物一個分と行っても何年もかかるかもしれないが作れなくはないだろう。メリッサはそう言って可能性から目を背けているけど、俺はやる価値があると思う。
道中は、特に何もなかった。
護送している第二王女も貴族も一部を除いて暴れだしたりすることもないし、特に問題は起きていない。まあ、問題が起きたとしても実力行使で黙らせてきただけだけど。
具体的には貴重な食料をあげなかったりとか。水を上げる時に色々と屈辱的な命令をしたりとか。まあとことん遊んだ。
心が壊れているのかなあ。俺。このクソ貴族たちには何をしても何も感じない。虫けらみたいな感覚だ。
俺があの時味わった絶望を、苦しみを、何倍にもして返してやっている。
殺さないように、殺さないように気をつけながらだ。首から上は何も傷がないだろう? なんて優しいんだ俺。
心配だったのは敵国による奪還だったが、そういうのも一切ない。
英雄もいるし、第二軍なるのもいるし、安全に王都につくことが出来た。
まあ、十日も馬車で移動していると話すこともなくなって、水晶細工のようなものとか、豪華に金で作ったヘンテコ像とか、そういうもので暇をつぶすしかなかったのだけど。
王都は、大きかった。
クリノクロアは小国って聞いていたからこじんまりとしたものだろうと思っていたけど、全くそうじゃなかった。馬車から覗いてみるが、壁の先が見えない。
四角形型の城壁ってやつなのか? 壁も対魔法用防護壁で出来ているように見える。
門は開いている。まあ、国境線があるわけでもないしそうか。
王都に入ると、民衆が俺たちを待っていた。
歓声は大きく、近くにいるメリッサやレミアと話したくとも声が届かないような大きさだ。
援軍部隊が敗退とかしている中で撃退、さらに第二王女の捕縛ともなれば喜びもひとしおだろう。
そのまま馬車は王城っぽい所に入った。これから戦果の報告と、俺への爵位授与式らしい。
服とかを貴族っぽいものに着替えさせられた。
着替えを担当してくれたのは王室付きの女官らしいが、礼儀作法的な部分も教えてくれて助かった。
まあ、膝をつき、頭を垂れて返事をすればいいだけみたいだし、その後演説をするとかそういう小難しいことは要求されず、そのへんのことは全て英雄がやってくれるらしい。
英雄さまさまである。
「では、そろそろ英雄様による戦果の報告が始まりますので、あちらまでお願い致します」
「ご丁寧にどうも」
礼を言うとびっくりされたが気にしない。そんな傲慢な感じに性格がいきなり変わる気はしないし、つい癖でお礼を言ってしまった。
身分差はどの国であろうと激しいらしいし、その辺は気をつけないと。
上の人に対しては気をつけられるのだけど下の身分の人だとつい気を抜いてしまう。
案内された部屋の前には、英雄やアラン伯爵等、防衛戦の時にいた貴族たちがいた。
皆で一緒に入るらしい。
全員揃ったのを確認されてから、ドアが開かれた。地味に感動したのはドアも開けてくれる人がいた所だ。
中に入ると、貴族っぽいのがいっぱいいて、最奥には王様っぽいのもいた。
あまり実感はわかない。
「英雄よ。此度の戦について説明せよ」
「はっ。今回、我々はスメア砦を――」
長々と話していた。それを聞いている第一王女の目がキラキラと輝いているし、ぞっこんなのだろう。王様にまで英雄って呼ばれていてちょっと吹きかけた。
内容はほとんど全部知っていたが、俺を子爵にする理由の部分だけがちょっと違った。
貴族の捕縛に対する褒章ということにするらしい。さすがに地球組だから、という理由では駄目だからなのだろう。脳筋な節もあるなあと思っていただけに意外だった。
「カナメ殿。前へ」
王様直々に声をかけられたので立ち上がって前に行く。教わったとおりにだ。
こんなことをしていると以前糞貴族に捕まった時みたいだな、と思ったけど今回は大丈夫なはずだ。
「――よりこれよりカナメ子爵とする。レグランド周辺を領せよ」
「はい」
俺の偉業を称える言葉がずらずらと並べられた。長い。
レグランドってどこだろうか? って思ったが、後で聞こう。
終わったっぽいので教わったとおり英雄のいるところまで下がる。
下がる途中俺を見ている貴族がひそひそ話をしているのが聞こえたが、どれも好意的だった。
以下蛇足。
感想200いきましたね。全部読んでます。
一時期は感想書かれてからの返信が1分をきってたりしたのですが、返信すると心が折れるのがわかったので誤字訂正や疑問に答えるくらいになると思います。
もう少しでお気に入り5000とか評価15000とかって感じですが、夏休み終了したら週1の亀更新になる可能性が……。
ちょっとある企画が通ってしまったので、それが忙しくなりそうです。
エタるつもりはなく完結させるつもりなので最後までお付き合いいただければ。
地味に小説情報の所で次の更新日はいつか書いているのでそこを見ていただければ……。




