Phase44 処遇
砦に戻るまでも長かった。
未だに戦っている所もあるらしく、こちらを見て襲い掛かってくる敵兵もいた。まあ第二王女の顔を見せたら直ぐにやめてくれたが。
倒れている味方を回収する。牢から脱出した時に作った台車を作成して、少しでも楽にだ。
人数が少ないし、疲労も限界。人質がいるからいいけど、実は今突撃されたらまずいかもしれない。
俺も魔力は残り二割というところか。
結果的に味方は百人ちょっとしか生き残れなかったみたいだ。
怪我をしていても息のある奴は全員回収した。ミナトが癒してくれるだろう。英雄のスキルも効果は切れたから、体が鈍く重い。
同盟軍やクリノクロアからの軍で捕虜になっている奴らも解放した。
人数的には百人以上。怪我を負っているのも多いし、この後の対応も大変そうだ。
同盟軍とかクリノクロアからの軍の全数からすれば少ないのだろうが、うまく逃げたのだろうか。
砦の中に戻り、第二王女とかを牢の中に入れる。
水晶漬けにして身動きの取れないようにしているが、英雄との戦いの跡が至るところにある。具体的には防具がかけていたりとか、そういう所だ。
あまりじっと見ているのも失礼だし、俺みたいに牢から脱出されるのも困るので、念入りに固定化させておいた。
囚われの王女。そそるシチュエーションだけど、これで俺が手を出したりしたらそこのゲスとかと全くおなじになってしまう。
自殺防止用に布を噛ませているが、こっちを親の敵を見るような目で睨みつけていて怖い。
まあそれだけのことをしたけど、敵だ。容赦するつもりはないし、拘束を緩めるつもりなんて無い。せいぜい苦しめ。
以前捕まえた俺を嵌めてくれた貴族とかは水不足で水もやっていなかったらしく、干からびているがまだ生きているようだ。死んでも水不足ってことで言い訳が立つから死ねばよかったのに。
ただ、俺についてきた兵もいる手前そんなことは出来ない。後で見ていろよ。
会議室に向かった。途中、アラン伯爵に会ったので色々聞いてみると、ミナトは魔力切れで倒れてしまったらしい。その代わり、致命的な怪我をしている奴らでも、放っておけば死ぬくらいのレベルまで回復しているみたいだ。そこまで回復すれば砦付きの医者に任せられるレベルみたいだ。
この世界の医療技術がどのくらいなのかは知らないけど、無事そうでよかった。
意外だったのは英雄の怪我だ。肋が数本持って行かれていたらしい。
そんな状況で戦うとかすごいというか、なんというか……。
会議室に入ると、空席が目立っていた。
生き残った貴族は六人、といってもミナトはいないから今いるのは五人だ。
寂しくなった。勝利しても損害は大きかった。
「これからのことを話そうと思う。我々は、今回の奇襲戦で切り札を得ることが出来た。敵軍も、逃げ出しているが、追撃はかけない。いや、かけるほどの余裕が無い」
「これも皆が死力を尽くして戦ってくれたお陰ですぞ。犠牲は大きかったが、戦果は得ることが出来たですな」
「ああ。聖女がいる限り、攻め立てられるようなことはないだろう」
「その聖女、というのが第二王女なのはわかるのですが、聖女だから何なのですか?」
疑問に思っていたことを聞こう。聖女っていうのが偉そうなのはわかる。
「ああ、この世界にも宗教があってだな、そこに地球で言う巫女さんみたいな役割を持っているやつだ。旗頭としてはもってこいなんだが、こっちに裏切ってくれるとは思えんしなあ」
「では、これからの処遇はどうするのですか? 殺す訳にはいかないでしょうし、かといって一生幽閉するわけにもいかないのでは?」
「ああ、多分だが領地の割譲とかそういう話になるとは思う。カヌザーヤにとってはこの辺は辺境。敵さんにとって重要な第二王女だ。ある程度無茶な要求でも応じようとするだろう」
「カヌザーヤは北の大国とも戦争をしていますし、多大な犠牲を払ってまでこちらに攻めることはないでしょうぞ」
「もちろん、我が国の国力や兵が回復してからの話。つまり五年以上はかかるな。まあその間は少なくとも平和なはずだ。最低限その間は幽閉する」
「他の貴族みたいなのも必要なのですか?」
「交渉時に役に立つからいればいるほどいいが、カナメ。お前がこっちに来る原因となったあいつか?」
察せられていたみたいだ。頷いておく。
「糞貴族、と呼ばれる奴らほど、懐に色んな物貯めこんでいるんだ。あいつらは外交的に使えるから殺すのは駄目だ。殺すのは。」
「いえ、私事ですし、しょうがないでしょう」
表向きは納得しておく。念押ししていたのはそういう意味なのだろう。
ミナトに付き合ってもらって簡単には死ねないようにしようか。
「じゃあ、今日はもう休もう。不寝番はアラン伯爵に任せた」
防衛戦が終わった後も仕事か。まあ、撤退中みたいだし仕事は少ないはずだ。
無事に動ける兵も少ないが、それでも必要な仕事だろう。
他に細かいことも色々あったが、会議も終わった。俺の用事を済ませよう。
「ブッド伯爵」
「なんだね?」
「商業ギルドに問い合わせをしたいのですが……」
「ああ、カヌザーヤの方で犯罪者登録をされている可能性があるんだったな。任せておきたまえ。店の方にも手紙かなんか送るか?」
「そうしていただけるならありがたいです」
低頭する。カルビン用に後で手紙を書こう。
何度もお礼を言っておいた。
部屋に戻ろう。勝てたのはほんとに運が良かった。
「レミア、メリッサ。怪我は大丈夫?」
今回俺は特に目立った怪我はしていない。強いて言うなら英雄のスキルが切れてから精神的にキテいることくらいか。
「特に大きな怪我はしていないから大丈夫だわ」
「腰がいたい」
順にメリッサ、レミアだ。どちらも特に問題無さそうでよかった。
てか腰が痛いって俺が調子に乗って強く抱きついていたからかなあ。
「揉もうか?」
「いいわ。メリッサにやってもらうわ」
断られた。まあメリッサがマッサージはうまいし、俺みたいな煩悩の塊がやるようなものでもないか。ちょっと、いやかなり残念だ。
「で、カナメはこれからどうするの?」
「うーん。メリッサには無茶って言われたけど、平和に過ごしたい。日本に戻れる手段があるならそれも探したいかな」
「……そう。」
「まあ、これからは第二王女とかを王都に護送するみたいだし、それに付いて行ってこれからのことを考えようかな。領地とか言ってもどれくらいなのかもわからないし」
「わかったわ」
そう言ってレミアは寝てしまった。この部屋ベッド一つしか無いのに占領されてしまった。




