Phase33 苦境
英雄はすぐに見つかった。ちょうどこの糞貴族共を追っていたらしい。
俺らを見つけ、魔法を使おうとしてきたが、捕縛した貴族とミナトの白目笑顔を見せると攻撃の構えを解いてくれた。いつの間にか一緒に脱出したシルトは消えていた。約束は果たしてくれよ。
「お前は何者だ!」
最前列の味方をスルーして一直線にこっちに向かってきた。
「ミナトの味方だ。貴族共は捕らえた」
英雄の後ろから大量の騎士が追ってきているしあまり時間を掛けたくない。
「よし、でかいの一発打ってからいくぞ」
そう言うと英雄の目の前に巨大な火の玉が出始めた。熱くないのだろうか。
百個くらいに分裂し始めたし、威力が高そうだ。
英雄が腕を振ると、追手の騎士たちに火の玉が降り注いだ。
鎧を溶かすほどの威力はないみたいだけど、顔とかにあたった人は悲惨だ。
一つ一つの火の玉が爆発し、それなりな規模のクレーターを作るから周りが穴ぼこだらけになった。
「よし、次が来る前にさっさと砦に行くぞ」
そう言われた瞬間、なんか体が軽くなった。英雄のスキルのおかげか?
軍勢に対する補正とかいっても微々たるものだろうと思ったけど、普段の二倍くらいは早く動けそうだ。筋肉痛が怖いけど。
砦の方向にはうじゃうじゃと蟻のように騎士たちがいる。英雄一人なら正面突破しても無事に生き残りそうだけど、けが人のいる中それは無茶だ。
直線的に砦に行ったほうが早いのはもちろんだが、出来る限り交戦を減らしたい。
英雄を先頭としてたまに現れる騎士の頭を爆破する。し損なったり、横から来たのは俺らが対処する。
砦まではすぐ、と言っても三十分くらいは走ったと思うが行けた。
外からの攻撃に騎士は強そうだけど、中からは連携が取れていなくて弱い。いや、英雄が強すぎるのか? どうやって殺すんだこんな化物。
砦も俺たちに気付き、門を開けてくれたが、開閉速度がかなり遅い。
「俺一人だったらよじ登っていくが、開閉には二、三分はかかる。それまで防衛するぞ。いいな?」
「ウオオオオオオオオオオオッ」
なんか体が熱くなって来た。周りも目が血走っている。
なんか体から色んな物が出てきそうだ。
「おい、第二王女の本隊だ。気を引き締めろっ」
誰かが言った。確かに今隙だらけだからそれを狙うのは当たり前だ。
「投石だっ。避けろおおおおおおおお」
五個くらい撃ってきやがった。大小混ざっている。騎士たちが門の近くに来ないのはこれが理由か。一応貴族を人質にとっているけどお構いなしか。相手にとっても腐敗してる奴らをお持ち帰りしてもらっている感じなのか。
とりあえず全力で逃げる。破砕音が聞こえたが、どこがやられたのかを見ると門だった。
煙が晴れ、門を見てみるとえぐれていた。多分後数発撃たれたら門は破壊されるぞ。
「チッ。魔晶石を投げてきやがった。二級くらいだろ? なぜ弾が尽きない。」
いつの間にか隣にいた英雄が独りごちている。
もしかして俺がロックさんに売った魔晶石が戦争だからという理由で買い上げられたんじゃないか? あの国で等級が高い魔晶石を売っていたのは俺だけだし。
「見ろ! 門が動かないぞ!」
開閉途中に衝撃があったから門の操作ができなくなってしまったらしい。
一人が通れるスペースだけでも開いていて欲しかったが、通れそうにない。
門自体も十五メートルくらいはあるので、よじ登れそうにない。
「英雄殿! あなただけなら門の内側に戻れます。我々を国の礎にしてくだされ!」
筋肉ダルマの槍の名手が言った。おいおい俺は心中するつもりなんて無いぞ。
「レミア」
「何?」
「一人ずつなら門の上まで飛んで逃げられるよな?」
「可能だけど。ただ飛び道具が怖いわ。」
「俺がスキルで援護する。死ぬのはゴメンだ」
英雄にそのことを言ってみると肩を叩かれた。地味に痛い。
やはり皆を取り残して自分だけ逃げるのには抵抗があったみたいだ。
「いいかお前ら! この美少女に運んでもらって門の内側に退避するぞ!」
英雄が叫んだ。百人単位に指示を伝えるにはそれなりの声量が必要なのはわかるが、これって相手側にも聞こえるレベルじゃないか? 耳がキーンってなった。
まずは俺を運んでもらう。案の定俺をめがけて矢を射ってきたが、少し厚めの鉄の盾の前には心配無用だった。
むしろ下にいる連中が矢に射られていないか心配になったが、俺の渡した貫頭衣を即席の盾にしていやがる。素っ裸になっているが矢が刺さるよりはマシなのだろう。
「レミア。ちょっと門の上でおろしてくれないか?」
「何で?」
「ちょっといいこと思いついた」
門から地上まで、俺のスキルでハシゴでも作ればいいんじゃないか?
ハシゴを登っている途中は背中が無防備になるから、ちゃんと防御用の壁を作ってやればいけるはずだ。
問題はここまで大きなものを作ったことがないし、いきなりはしご状のものを作るのは無理だ。塊状で出てくるし、かなり操作をしてやらないといけない。魔力は持つだろうか。
スキルの使い勝手が悪いのにイライラしてくる。今までもただの鉄の棒を作りたくても鉄の塊を作成してから操作で伸ばしていくという手順が必要だった。
ほとんど同時にスキルを使っていたからそのまま鉄の棒が出来るように見えるけど、大量に作れば魔力をそれなりに使う。
今回はその鉄の棒の巨大バージョンだ。どれだけ魔力を使うのかわからない。
今日はただでさえ魔力を使っているのに。
けど、やろう。レミアが運ぶよりこっちのほうが早いはずだ。
まずはかなり太めの鉄の棒を地面まで伸ばす。
レミアに俺を持ち上げてもらい、鉄の棒に沿って降りて行ってもらう。
はしご型にするには押しのける距離が大きくて操作に時間が少しかかってしまう。
地上に来る頃には魔力もほとんどなくなっていた。頭の奥に虫がいるような、おぞましい感覚がする。もうすぐ魔力切れだ。いつしかのオリハルコンを作った時のようだ。
作っている最中に矢が来なかったが、相手軍は攻城槌とかを持ち出してきやがった。少しだけ開いている門を完全にこじ開けるつもりらしい。
英雄がなんとかするだろうと思って見ると、顔色が悪い。
あいつも魔力切れか!?
もう逃げたい。だが、まだだ。まだ仕事は終わっていない。
俺が何とかしないければ。
レミアの活躍()
評価が14000いきましたね。長かった……
完結時に20000を目標としているのですがいったい何年かかるのやら。
最近は毎日更新ですが、明日は怪しいです。




