表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/65

Phase34 退避

 投石や矢の斉射が終わって、本隊と攻城槌が前進してくる。到着は後数分というところか。

 騎馬部隊だけが、先行して俺らを殺しに来た。突撃して即離脱する部隊と、突撃した後馬を降り、英雄に殺到する部隊の二通りがいた。

 おそらく王族直下の部隊と、手柄目当ての貴族の混成なのだろう。

 突撃の後は酷い有様だった。何人も今ので死んだと思う。俺は門の近くにいるから食らってはいないが、門から遠い奴らで直撃してしまった奴らはもう原型をとどめていない。


 魔力切れっぽい英雄の所に向かおうとしたが、剣を抜いて両手に持ち、構え始めたのでまだ戦えるのだろうか? 辛そうだし手があいている俺が行って無理やりにでも砦の中に行かせたい。

 心中するつもりなんて無い。全員助かればハッピーエンドだが、最低でも俺とレミアとメリッサ、あと地球組と人質には生き残ってもらわないと困る。

 ステータスを見ると魔力ももう後一割。最近色々魔力を使っていたから上がってきているが、それでももうこれだけしか無いのか。


 その時、騎士の叫び声が耳に入った。


「ハシゴがあるぞ! 登れ!」


「行かすな! 各自その場を死守せよ!」


 味方側もハシゴの存在に気がついたが、交戦していて動けそうにない。

 膠着状態だ。英雄も魔法は使わずに持っている剣だけで応戦しているが、こちらの二倍はいるから殲滅しきれていない。


 どうする。

 このままじゃ皆殺されてしまう。攻城槌や本隊が到達してしまえばもうどうにも出来ないから、出来る限り早く打破しないといけない。


 一人の騎士がこちらに向かってきた。はしごを使って砦の中に侵入するつもりみたいだ。

 レミアがそれに応戦し、メリッサは俺の前に待機している。

 スキルを、使おう。

 ほんの小さな欠片でいい。魔力消費なんて微々たるもので人は殺せる。


 いざ人に向かってスキルを使おうとすると全身が震えてきてしまった。キレていなくて頭が冷静だといろいろ考えてしまう。

 怖い。自分が倫理観をかなぐり捨ててしまうという禁忌に、心も体も耐えられない。


 気がついたら、騎士の武器に水晶を生やして切断していた。

 騎士が呆然としている隙に、レミアが首を刎ね飛ばした。首なし死体が鮮血を辺りに撒き散らす。その血がレミアに降り注ぎ、それを浴びて舌なめずりしている姿が印象に残った。


 俺は、駄目だ。自分で人を殺すということに目を向けられない。他の人がやるにはまだいい。俺が殺したわけじゃないと自分の中で言い訳ができる。切れて自分が制御できなくならない限り、自制心が働いてしまう。


 それでも味方を助けないといけない。


「レミア。メリッサ。あの乱戦の中に行くからついてきてくれ」


 そう声をかけて走る。

 走りながら、騎士共の剣に水晶を生やす。

 武器を失った騎士なんてみんな簡単に仕留めてくれた。

 中には体術を駆使して抵抗する奴もいたみたいだが多勢に無勢、数人がかりに襲われてはひとたまりもない。


「目の前の敵を倒したらはしごを登ってくれ! 人質の糞貴族共を盾にしろ!」


 そう叫びつつ英雄のところに向かう。

 最前線の英雄がいるところは激しい戦いになっていた。一人で五人くらい相手している。

 全員の剣に水晶を生やし切断する。切断した破片が英雄に飛んで行ったりするが、難なくかわしてくれたので良かった。


 一瞬で英雄が惨殺したのを見届け、離脱する。

 人が死ぬ姿を見てゲロを吐かないくらいにはグロ耐性ができた。

 死体を今日だけでも見すぎて、感覚がマヒしたのだろう。


 本隊はもう目と鼻の先だ。

 本隊の移動もあるから矢や投石は行われていないおかげでスムーズにみんなハシゴを登って門の内側に退避してくれた。

 怪我人や糞貴族は運び終えたみたいだが、それでもまだ登り切れていないのが二十人位いるけど、本隊が来る前には俺も砦の中に行けそうだ。


 正直言って順番を抜かして早く砦の中に行きたい。

 数百人じゃきかない量がこちらに押し寄せてくるのは恐怖でしか無い。

 隣で腕を組んで仁王立ちをかましている英雄を少しは見習いたい。


 俺の順番がやっときて、ハシゴを登る。特に矢などを射られることもなく無事に登れた。再利用できないように俺が登る度にハシゴをただの鉄の棒になるように操作をしておく。英雄は一人なら門の内側に行けるとか言っていたし大丈夫だろう。まだ下にいるけど。


 門の上まで来ると、縄が結ばれていた。これで門の内側まで降りろということなのだろう。

 先に登っていた連中が用意していてくれたみたいだ。ここから飛び降りるのは怖すぎる。


 スルスルと降りて地に足がつくと、自分がやっと助かったことに安心して腰が抜けそうになった。

 戦争なんて勘弁してほしい。やはり自分は研究とか商売とか、そういう行動のほうが気が楽だ。


 安心しつつ辺りを見回すと、皆殺気立っていた。俺を見て。

 あんまりなことにびっくりしたが、俺を見ているのではなくて門を見ているようだ。

 そうか。安心していたけど今から本隊の攻撃か。


 どうしよう。やばいな。

 魔力も心もとないし、英雄も魔力が切れてスキルは使えなさそうだし、門が破られたら絶体絶命じゃないのか?

 今までは英雄が攻城槌とかを破壊してきたのだろうが今回は英雄も使えそうにない。

 ミナトはまだ白目笑顔で寝てるし、役に立ちそうにない。

 けが人とかは砦の奥に退避したみたいだし、砦の中の兵もそれなりにいるが、門が破られたらどうしようもないだろう。

 やはり、修復するしか無いか。こいつら戦う気満々だけど。

 確かに英雄が回復するまでもちこたえられれば追い返せるかもしれないが、どれだけ犠牲が出るものだか。


 そこまで考えていたら門に攻城槌が打ち込まれた。

 破砕音がうるさい。まだ破られてはいないが尖っている先端がこちらに見えている。やはり門の隙間を狙ってきたらしい。

 攻城槌の一番太いところは人の身長の半分位はあるのではないだろうか。太い。金属製だし、操作して門にくっつけてしまえばこれ以上攻城槌を打ち込まれないんじゃないだろうか。

 引き抜くのに時間が掛かっているし、次打ち込まれたらやろう。魔力が心もとないがいけるはずだ。


 ガンッと鈍い音が響き渡り、それと同時に門に寄る。

 攻城槌の金属部分に触れ、門と一体化させる。

 抜けないように鉄を生成して固定させるのも忘れずにだ。


 操作を終え門から離れ、英雄のところに向かう。


「固定化させたから攻城槌の攻撃はもう難しいはずだ」


「ああ、助かった。もう魔力切れで辛くてたまらないが、まだ本隊は引いていないから今日の夜までは気は抜けねえぞ」


 ……夜までか。糞貴族から取り戻した俺用の防具の中に入っている魔力補給用魔法陣を渡し、使い方を教えておく。

 微々たるものでもないよりはマシだ。


 今どうなっているのか知りたいので櫓のようなところに登る。第二王女側を見ると、もう門の前には誰もいなかった。攻城槌を放棄したらしい。


 その代わりに、投石機を準備しているのが見えた。

 あいつらまだ諦めていないらしい。

 あの威力で何発もやられたら保たないし、外に行きたくとも門が開かない。

 櫓にいる見張りの兵士に聞いてみると他にも門があるらしいが、そこも今攻めこまれているらしい。

 そっちの門が破られるようなことはまだ無いようなのでよかった。

 こっちの門は中途半端に開いていたりしたからこんなことになってしまったのだろう。


 ああもうさっさと引いてくれないかな。

 門を修復し切れれば多分諦めるだろう。でも魔力はそれをやったら切れてしまう。

 あの魔力切れの苦しみは非常に嫌だがやるしかない、か。


「レミア」

「何?」


「今から門を塞ぐから、俺が倒れた後はお願い」


「……しょうがないわね」


 急いで櫓から降りて門に向かい、全魔力で門の対魔法用防護壁を操作して穴をふさぐ。

 鉄とかで作ってもよかったが、そこを狙われたら多分破壊されるだろうから多少薄くなっても高防御力、高魔法耐性なこっちの方がいい。


 脳に虫が這うような感覚がきつい。それでも門が塞ぎきったのを見れたので、安心して倒れることができた。

主人公が冷静に人を殺すようになるのはもう少し先です。

今回はヘタレだけど戦況をひっくり返す位には活躍。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ