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Phase32 死体?

 男達にも武器を持たせたし、簡易的な防具も着させた。レミアやメリッサの武器のようにコーティングなんてしない。それでも十分保ってくれるだろう。

 女性がいるところに戻ると、ミナトがずっとヒールという言葉を繰り返していた。

 イメージを具体化するために詠唱をする人もいるらしいが、どうやらそのタイプみたいだ。

 頭の中では冷静に観察しているけど、あまりにも痛々しすぎて勝手に目から涙が出てくる。


「ミナト」


 呼びかけても返事をしない。ついに目の前で倒れやがった。

 魔力不足なのだろう。ミナトの顔を見ると涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。

 地味に白目に満面の笑顔になっているのがホラーだ。


 ずっとヒールをかけていた人をみると、傷も何一つない状態になっていた。

 あれ?


「なあメリッサ。死者に回復系の魔法って通じるのか?」


「通じないはずよ。回復系の魔法をかけたとしても何も起こらずそのままのはずだわ」


 最初見たとき死んでいると思ったけど実は生きていたのか?

 いや、腕が一本なかったような気がする。

 ミナトが邪魔でよく見えないのでどかすと、腕が生えている。それも普通の女性の腕っぽい。

 あとで詳細は聞こう。ここから脱出するのを考えなければ。

 完全に気絶していても生きている人間をここに放置するのはさすがに考えられない。


 ふと後ろを見てみると俺が解放した奴らが全員整列していた。武装しているし皆すごくいい笑顔でこっちを見ている。俺からの命令を待っているのか?

 百人近くの前でスピーチなんてするのは数えるほどしか経験ないぞ。


「あー。とりあえずここからの脱出なんだけどさ。まだとくにやり方決めていないからいろいろ意見を出してほしい。小声でな」


 そう言うと一人の男が手を挙げた。


「簡易ですが武器もありますし、一丸となって突破するしか方法はないでしょう。怪我人などを真ん中に配置し、その周りを動けるものが護衛をするというのはどうでしょうか?」


 武器で思い出したけど、俺が買った武器を取りに行きたい。やはり間に合わせの武器では心配だ。今一体どこにあるのだろうか。

 無事な人数でいうと約七十人。怪我人を抱えている状況だし、スキルで怪我人を運ぶ用の台車を作っておいてそこを護衛するという方針でいこう。

 台車はそんなに大層なものではない。水晶製で、二輪のものを作った。途中で階段があるので取っ手付きだ。二台あればなんとか全員乗せることが出来るだろう。牢から出るまでに引っかからないか心配だがどうにかしよう。

 全員に指示が伝わったことを見計らって、合図を出す。

 怪我人を台車の上に乗せ、敵がいたら黙らせる。簡単ではないお仕事だ。

 俺は台車の管理ということで部隊の真ん中に配置してもらった。そこが一番安全だし。


 男用のオリを過ぎ、階段を登ると、敵はいない。

 しばらく進むと看守室のような、明かりの付いている場所が見つかった。

 百人くらいが動くとそれなりに音も出てしまうのだが、それ以上に看守室はうるさい。

 十人くらいは人がいるのだろうが、宴会の最中なのかここまで酒の匂いが漂ってくる。

 職務怠慢すぎるだろと思いつつ、そのほうが都合はいいので中に乱入し、喉を尖った鉄の棒で突いてもらう。

 部隊の一番先頭に入る奴は筋肉ダルマだけど槍の名手らしく、惚れ惚れとする動きで仕留めてくれた。

 俺はまだ直接的な戦闘はしていない、砦につくまでしたくはないがそれは無茶というものだろう。看守用の装備をパクらせてもらおう。

 一番攻撃が激しいであろう最前列に配置される男用だ。


 着てもらっている間、俺の指示で人を殺しているし、ある意味殺人童貞捨てたのか? ということが頭によぎったが、今は気にしないようにしよう。考えすぎるとそれだけになってしまう。


 看守室から出ると、周りに敵はいないようだ。そりゃあ好き好んで牢屋の近くでうろつく奴は少ないだろう。いや、女目当てに来る奴はいるかもしれない。

 砦の方向に進もう。台車があるとはいえそれなりのスピードが出る。数分もしないうちに敵に補足された。騎士団ではなく、工作部隊のようだ。騎士団っぽいのにはまだ会っていないが、今は砦に攻勢をかけているのだろうか。

 いや、焦げくさい臭いが漂ってくる。近くに入る奴に聞いてみると人の肉が焼けた時に出る臭いらしい。距離的にもここから近い。

 もしかしたら英雄が今奇襲していて、そちらに騎士団が行っているのか?


 ちょうど砦の方向だし、そちら側に行くことにした。

 その途中、高そうな服を着た集団十人ほどがこちらに向かってきた。


「騎士団だな。英雄の奇襲だ。助けろ……?」


 最前列はたしかに騎士っぽく見える。だが、それに隠れていた貫頭衣の連中を見た瞬間に尻すぼみになっていやがる。

 誰がいるのかよく見ると、俺を嵌めやがったイミル君がいるじゃないですか。

 顔を見た瞬間の俺の笑顔は、きっと相手には恐怖に映ったかもしれない。

 しかし、イミルの装備を見た瞬間発狂しそうになった。あいつ俺の装備を使っていやがる。


「あの糞貴族共を捕らえろ。英雄への手土産だ」


 その指示を聞いて思い思いの方法で無力化していく。気絶したやつから順に水晶の中に閉じ込めていく。もちろん頭以外だ。人質に死んでもらっては敵わない。

 正直言ってイミル達親子に関しては殺してやりたい。

 一時の激情に身を任せて頭から結晶を生やしてやりたくなったが、もっと苦しんでもらおう。

 全部考えるのは脱出してからだ。英雄がこの先にいるらしい。合流して砦に逃げよう。


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