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Phase31 ミナト

 女性用のオリの近くにいる看守はこいつらだけのようだ。

 レミアとメリッサに適当に作った尖った鉄の棒を渡し、武装してもらう。

 ダイヤモンドの単結晶でコーティングしておく。完全に趣味だ。

 こういうことをして、発散しないとストレスが溜まってしょうがない。まあレミアとメリッサが無事なら最低限の事はできた。

 防具は結晶で作るには重いものが多いし、軽くともゴムじゃあ防御力低そうだし、と迷ったが分厚いゴムで我慢してえもらうことになった。ないよりはマシだ。

 俺の買った防具とかも糞貴族に取られたままだから後で襲撃しよう。あれは持って行きたい。


 レミアとメリッサの捕らわれていた部屋を抜け出し、女性を解放していく。

 ここのオリも簡単に俺のスキルで開くことが出来た。

 しかし問題は女性の中でも動かない人がいることだ。目が死んでいる。と言うかほんとに死んでいる人も混ざっている。舌を噛み切っているのが確認できた。

 裸の女性ばかりで目の向け場もないしこのまま外に脱出しても露出狂の集まりになるので、ゴムで簡易的な服を作った。貫頭衣みたいなもので申し訳ないが凝ったものなんて出来る余裕もない。


 結果的に十人ほどがまともに動けた。目が死んでいるが動いてくれるだけマシだろう。ここであったことは察することができるが深くは言わないでおく。

 さっきからミナトがずっと泣いているがやはりこの中に知り合いがいたのだろう。

 一人の女性を腕で持ち上げて地に膝をついているが、見ていられなかったので男達を先に解放することにした。女性はもう死んでいるし手遅れだった。俺にできることはない。


 男達は何もされていないようだ。拷問などもないみたいだし、女性と違って単に臭いだけだ。

 ミナトの仲間だということをささやきつつオリから出してやり、俺の作った服を着る手伝いをさせる。

 食事をまともにとっていないみたいなのでまともに歩けない人もいるようだが、男だし頑張ってもらおう。

 少しでも体調がマシな奴はすぐれない奴に手を貸させつつ解放していく。

 その途中で一人嫌に立派な服を着た青年が一人捕らわれているのを見つけた。

 ミナトの味方、とは何やら違う感じがする。戦闘があったのなら何かしらの傷や、後が残っているはずだが特に何も残っていないし、香水か何かをつけているのか体臭がひどくない。


「あなたは?」


「人に名前を聞くのならまず自分から名乗れ」


 無礼だな、と思いつつ名乗ると名乗り返してくれた。シルトと言うらしいがどうせ一日したら忘れていそうだ。

 ガブリル伯爵の息子らしい。聞いたことある人だなと思ったらまともな方の新興貴族だ。といっても息子までまともなのかはわからない。

 ミナトの味方ではないし、解放しないほうが無難だろうと思ってそのままオリの外に出ようとしたら呼び止められた。


「待ってくれ。イミル達親子の陰謀を止めようとするために捕まってしまったのだ。話を聞いてくれ」


 時間がないし聞きたくもないけど、あまりにも必死に頼むので聞くことにした。時間を無駄にしたくないので解放した男達約百人用の武器を作りながらだ。


「手短に頼む」


「要点だけを言う。大量の魔晶石を使って第二王女を殺害し、それを足掛かりとして国を乗っ取るつもりだ」


 大量の魔晶石を使う。ほう。

 このまま抜け出せなかったら俺の作る魔晶石は革命に使われていたのか。確かに魔晶石でも等級の高いものを大量に用意して、魔法を使えば城くらい吹き飛ばせそうな気がしなくもない。そんなやり方で、その後の治政が出来るのだろうか。


「イミルはアホなのか? その後の治政はどうするんだ?」


「精神操作を得意とする異世界人が傘下にいるらしい。おそらくそれを利用するのだと思う」


 以前精神操作とかかけられたなあと思いつつ、まさかそいつじゃないよな?

 ちょっとこわくなってきた。俺に敵意のある商人の心に少し後押しをして、暗殺を実行させるとか。


「俺はこの国を出る。多分亡命する国のやつらの味方になってあの糞貴族共を蹴散らすつもりだ。けど、あなたを助けると糞貴族を排除するまではいいが、それ以降まともな新興貴族と戦いにくくなるから無理だ」


「まあ待て。そういう風に考えるのもわかる。もちろん俺を解放してくれるのなら対価なしとは言わない。君はカヌザーヤ国で犯罪者となってしまっているだろう。ここから出してくれるのならばその罪を帳消しになるように働きかけよう」


 迷う。ミナトに協力するのならば解放せず、むしろここで殺してしまったほうがよいのかもしれない。しかし犯罪者でなくなるという提案はそれ以上に魅力的だ。

 俺が顔をしかめながら考えているのを見て、シルトはさらに続けた。


「君は商人だろう? カナメという名前は私も記憶している。犯罪を犯した場合は商業ギルドから除名されるからギルドのある国全部利用ができなくなるぞ?」


 その言葉が決め手となった。それはまずい。


「わかった。解放しよう。だが口約束だけだと信用できないから誓約書を書いてもらいたいがいいか?」


 そう言いつつシルトの手についている鉄球を外す。足にはまだ鉄球がついているので完全に解放はしていない。

 紙と鉛筆でもないかな、と思いつつあたりを見回しても見当たらない。

 しょうがないので鉛筆代わりに黒鉛の結晶を作り、解放した男にはいていたパンツを持ってきてもらう。白くて字の書けそうなものがこの場になかったからしょうがない。


 軽く解放と、その対価として犯罪歴の抹消について書いてやり、サインと血判をしてもらう。不衛生なところで血を出すとそこから病気になりそうで怖いが、まあやってもらうしかないししょうがない。

 書き終わったのを見て、足の鉄球を外してやる。

 今にも外に飛び出しそうだったが、俺とミナト達の脱出もあるのでしばらく待ってもらうことにした。

 こいつに武器を渡すともし裏切った時に怖いから渡さないでおく。

 後ろで待機していた解放した男たち数人に武器を渡し、見張るように言っておく。

 そろそろミナトの様子を見よう。人数分の武器と服も作成できたし、これからどう脱出するかについて話し合いたい。


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