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Phase29 判決

 貴族用の部屋に先に騎士の人が入り、連れてきたことを報告している。

 しばらく待たされたが、入っていいと合図されたので失礼しますと言ってから入った。武装は全て解除させられている。貴族に合うために武装はまずいとのことだ。

 入る瞬間にチラ見すると、騎士っぽい人が十人くらい貴族の横に控えていた。なんでこんなにいるんだ? 護衛なのだろうか。

 膝を付き、顔をできる限り見てはならないと事前に言われていたので頭を下げておく。レミアもメリッサも後ろに控えている。

 さっきまで頭に血が上っていたけど、やっと頭の血が下がってきた感覚があってまずいことをした感覚に苛まれる。切れてしまった時の自分の行動はほとんど何も考えていないからやばい。


「一体何があったのか説明してくれんかね? 直答を許す」


 偉そうだなこいつ。と思いつつ実際えらい人だからしょうがない。さっきまでの自分の行動はほんとに正当防衛が成立するのか冷静に考えると怪しくなってきた。

 レミアもメリッサも十分大丈夫な状況と言っていたが、なんか緊張して変な汗かいてきた。漏れそう。


「私のスキルを利用するため拘束しようとしてきたため反撃をし、このようなことになりました。貴族様には一切の肉体的な傷はつけておりませんが、その部下の方には反撃をさせてもらいました」


 丁寧語とか目上の人と話すのに慣れていないからこういう返答の仕方でいいのだろうか。


「本当かイミル?」


 イミルって誰だと思ったが、糞貴族みたいだ。チラ見すると、いつの間にか着替えていて侯爵の近くにいた。


「いえ。違います。この者は私にいきなり危害を加え、守ろうとした私の部下に攻撃してきたのです!」


 なにを言っているんだこいつ。襲ってきたのはお前だし、お前に危害は加えていない。肉体的には。

 血が下がって自分の行動を振り返る余裕ができてきたのにまた血が頭に上りそうだ。

 ただ、ここで切れて全員殺しちゃったりしたらほんとに犯罪者になる。正当防衛で行けるのならそれで収めたい。

 人を殺すのはどうもまだ抵抗感があるからしたくない。ほんとは人に向かってスキルを使うのも嫌だが、あの状況はしょうがないと自分を納得させる。納得したい。

 人に危害を加えたという嫌悪感が体の芯に重く響いた。


「ふむ。意見が食い違ったが他に証言者はいるかね。直答を許そう」


 レミアが手を上げたようだ


「私は今回被害者であるカナメ殿の護衛を務めさせていただいているレミアと申します。イミル様にカナメ殿が連れ去られるところを目撃し、イミル様の部下の方と交戦しました」


 レミアの口調が変だ。フォーマルな場だからだろうが、違和感が多い。

 次に侯爵の横に控えている騎士が手を上げた。


「いえ、全てその証言は虚偽です。今回私はイミル様をそこの罪人が連れて行くのを目撃しました」


 何を言っているんだこいつ。こいつもグルなのか。

 そう思いつつ侯爵の付近にいる騎士をチラ見すると皆頷いている。


「お待ちください。作業場には他の工作部隊のものがこの件を見ているはずです。その者達を呼ばせてもらえないでしょうか」


 これが通らないとまずい。侯爵にとって騎士の方が証言の信憑性上がるはずだ。

 そのやりとりを聞いている侯爵が少ししてから口を開いた。


「いや、その必要はない。私の息子の不祥事だ。親である私が始末をつけよう」


 糞貴族って侯爵の息子だったのか。そこに少し驚きつつ、口調的にまともな判決が下りそうだ。


「そこの罪人を捕らえよ。私の息子なのでな。輝かしい道に泥を塗ることは出来んよ」


 言い渡されたことに頭がついていかない。安心した矢先にこんなことを言われ、後ろから目と口を抑えられ、抵抗する間もなくまた捕らえられてしまった。

 目が見えないので適当なところにスキルを発生させたらレミアとかに当たる可能性があるからそれも出来ない。レミアとメリッサの怒鳴り声が聞こえる。抵抗しているらしい。

 ただ、しばらくするとその声もなくなった。

 これだけの人数差で、武器も取り上げられ、更に室内で杖なしだと魔法も使いにくいし無理なのか……。



 かなり乱雑な扱いをされ、どこかに連れて行かれた。

 多分牢屋にいるのだろう。目隠しは外されているが、足に鉄球が付けられているから動けない。口に布をかませていないのは自殺とかされるのを考えていないのだろうか。いや、自殺してくれたほうが口封じになるしいいのか。

 レミアとメリッサは別の場所にいるみたいだ。名前を読んでも返事はない。

 とりあえず、視界が確保されているので鉄球にスキルで操作をしてみると出来たのでいつでも外せそうだ。

 オリの方も対魔法用防護壁を改造したものっぽいし、脱出しようと思えばいつでも出来るだろう。これも操作ができた。

 問題はレミアとメリッサだ。さすがに助けなきゃマズイだろう。

 対人戦闘時にスキルが使えれば、俺はレミアにもメリッサにも勝つことが出来るだろう。スキルが発動する瞬間のラグとかで避けられることも考慮すれば多少苦戦するだろうが。

 それでも不意打ちとかには俺はまだまだ弱い。

 レミアもメリッサも結果的には捕まっていてダメだが、抵抗できずに捕まった俺よりはマシだ。それにせっかく雇った美少女を手放したくない。

 今は頭の血が下りていて冷静に考えられるが、それでもそういう理由でレミアやメリッサを雇っているんだなってことに気がついて自分で自分が嫌になってくる。


 これからどうするか考えよう。まあ、人を殺すというのは出来ればやりたくないし、犯罪者にもなりたくないが、もう確実に犯罪者の扱いだろう。

 この国はもう嫌だ。抜けだそう。けど問題がある、店だ。

 ローンあるし今の状況で売却できるんだろうか。借金とかになったら嫌だぞ。

 でも命の危険が常にあるような腐った国にいるよりはマシだ。新興貴族でも国のことを考えていないクズみたいな奴がいるのも今回の件で分かったし、やはりまともなのは一部だけなのだろう。後は蜜に群がる虫どもだ。


三日連続更新

ちょっと辛いですね。

主人公も辛いところなのでさっさと終わらしたいです。


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