Phase28 糞
意識を失っていたようだ。
縄に縛られていて、身動きができない。幸い口に布を巻きつかされているが、目は開けることができるのでまだ良かった。
どうやらメリッサとレミアも捕まってしまったようだ。役に立たない護衛だと思うが、しょうがないのだろうか。考えれば考えるほどムカついてきた。容姿はいいのだが肝心な時に役に立たないのはだめだろう。
普段いろいろ教えてくれるのを抜きにしてもだ。
確かに作業方法を聞いたら拉致されるとか予知はできないのはしょうがない。
あの時俺から数メートルくらいのところにいたし、周りの修理の音で会話が聞こえにくくともちゃんと俺を助けてほしい。
色々と怒りが湧いてきたが、どうにかして脱出したい。頭に血が上っていて普段のような思考ができない。
すべてのものを憎悪したくなる。何で俺はこんなところにいる。
さっきからレミアとメリッサがまばたきしまくっているが何かの方式でコミュニケーションをとっているのだろうか。見ていると精神的に不安定になりそうで気持ち悪い。
縄もほどけそうもないし、やることもないのでレミアとメリッサを観察していると、何かどちらも怪我をしているみたいだ。露出している肌が青あざになっている。俺を助けるために交戦したのだろうけど、こんな状況になってはなあ。
しばらくすると、先ほどの男とその取り巻きがやってきた。取り巻きに無理やり立たされたが、抵抗はしない。こんな状況で抵抗しても痛いだけだ。
隙を見て抜け出したいくらいだが、縄があるしそれも難しい。
そう思いつつ、縄にスキルを使えばうまく行いくんじゃないかってことに気づいたのでやってみる。
頭に血が上ってるので失敗しないように縄を塩に変えていく。下手したら手に結晶が生えてきて手がなくなってしまうから慎重に、だ。
そんな俺の様子に気づいておらず、腕を大きく広げ話し始めた。服になんか紋章があるしこいつが貴族だろう。
「君にはねえ。僕のために魔晶石を作ってもらうからね。抵抗したらわかるよねえ。君のスキルがあれば僕は何でもできる。協力してくれるよね? ねえ?」
口の布を外され声が出せるようになったが、声を荒げて気分を悪くさせたくない。まだ縄がほどけていない。
しかし考えうる限り最悪なパターンだ。生きる魔晶石製造機になってしまう可能性が現実になった。確実に俺のスキルがばれたのが原因だ。言ったのは俺だけど、あの場でどう返答すればよかったのか浮かばない。
答えずに口をパクパクさせてごまかしつつ、やっと縄が切れてくれた。
いつでも逃げられるけど、レミアやメリッサの分がまだだ。
レミアとメリッサの縄にスキルを発動させ切ろうとしたが、俺の答えを待ちきれなくなったのか、腹を蹴られた。羽交い締めにされているので動けない。
もう我慢ならない。
こいつらはゴブリンだ。
ゴブリンのような下等な生物だ。
俺を利用するとかふざけんじゃねえ。
まずは俺を抑えているやつの腕の中に塩を作ってやる。
すぐに塩漬けになったのが見え、俺を掴んでいた手に力が抜けたのが感じられた。
それなりに大きな結晶を発生させたつもりだし、ちぎれているだろう。
「黙れ。喚くな。頭から結晶を生やされたいのか?」
その言葉を聞いて必死に口を抑えようとしているが腕が無いのに抑えられるわけもない。
いや、片腕は残っているみたいだ。腕の半分くらいが塩になっているし、動かしたくとも動かせないのだろう。
ふざけたことを言っている糞貴族は失禁してこちらをポカンと見ているが、貴族だし殺すとヤバそうだから殺すつもりはない。でもバレる前にどうにかしないといけない。
とりあえず、偉そうな人に訴えてみるために縄で縛っておいた。
自分の安全が確保されてから、勢いのままにやりすぎた感じがして冷や汗が出てきた。
正当防衛が成立するだろうか。
レミアもメリッサも俺を怯えた目で見ている。
いきなり人の腕から結晶が生えて来ればそういう反応をするかもしれない。まして自分にその力を向けられるかもしれない、と考えればなおさらだ。
手を振って害意のないことを示しつつ、俺が無力化したやつを小屋の外に引っ張る手伝いをさせる。
「カナメ……。どうするの?」
レミアにそう言われ、勢いのままにやりすぎた感じはある。
ただ、あの状況だったらこうしないといけないのはしょうがないと思う。そう、自分を納得させ平静を保つ。
このまま逃げても俺は犯罪者になるだろう。
それも貴族を相手に喧嘩を売ったから軽い罪じゃすまないし、この世界は貴族優位な世界だから一市民の俺が太刀打ち出来るものじゃないしどうしようか。
やはり第二王女、とまではいかなくてもそれなりにお偉いさんに直談判するしか無いか。
貴族に一切肉体的な傷をつけていないし、取り巻きも殺していない。
レミアやメリッサと相談しつつ、十分正当防衛を成り立つことが出来る条件が揃ったと判断できたのでお偉いさんに直談判することになった。
糞貴族はいつの間にか気絶していて、動きそうにないのでメリッサと一緒に持ち上げる。
小屋の外に出ると武器とかを運ぶようの台車があったのでそれがちょうどいいので載せて、だ。
メリッサ曰く、この貴族の爵位は男爵らしい。
服に刺繍されている紋章でわかるそうだ。色の違いがどうこうといっていたがあまり興味はない。
こんなことがあるとかなり頭に血が上ってくる。
とりあえず騎士に事情を話すと、しばらく待たされたが、侯爵位を持つ人が会ってくれるらしく新興貴族の人らしい。といってもガブリル伯爵のように国のことを考えて動く貴族ではなく、どちらかというとがめつい貴族ということで有名らしいが、大丈夫なのだろうか。
新興貴族でも国のことを考えていないと評される人もいるんだなと思いつつ、やはり貴族位があったほうが色々と利便性が聞くのかもしれないと思ってきた。まあ今回の一件でこの国で貴族になってなろうとは思わないが。
騎士いわく、案内してくれるそうなのでついていくと、貴族用の小屋、というには大きすぎる普通に立派な家もどきみたいなところに案内された。戦争中で、近くで交戦しているというのに貴族はこんな所で寝ているのか。羨ましい。
さっきから台車で運んでいる糞貴族が臭いんだが、こいつホントに糞貴族になったらしい。ざまあみろ。
最近更新できなかったので二日連続で更新。




