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Phase15 成長

 十階層とはいっても、他の階層とほとんど代わりはない。

 強いて言うならば血と汗のような臭いが一層濃くなった位だ。今日はここまでで迷宮の探索を終えるらしいし、精神的にキツイが気合を入れ直す。一体俺は何時間迷宮に入っているのかわからない。

 

「魔法も剣も使ったし、今度は一回ゴブリンの攻撃を受け止めてから反撃するようにしてみて」


 レミアがさらに難易度を上げてきた。確かにできなくはないと思うけど、怖いものは怖いと思う。

 でも最初に比べたら少しゴブリンを殺すことに慣れてきたかもしれない。

  気持悪い感触には慣れていないが、殺すことがルーティンワークのようになってきて無感動になってきた。


 そう思っていると、正確な数は分からないが二十匹くらいのゴブリンに出くわした。この階層でもゴブリンの装備は全く変わっていないようだ。

 数匹が此方に向かってくるので、攻撃を受け止めたいが、数匹の棒切れを同時に剣で受け止めるのは辛いし、魔法を使う時間もない。反射的にスキルで目の前に水晶の壁を作成してみた。


「なっ」


 レミアらしくない声が聞こえた。衝撃に耐えるために軽く目をつぶってしまったが、特に衝撃もきていないので何事かと目をあけてみると、目の前がゴブリンの血で埋め尽くされており、よくわからない。

 突撃してこなかったゴブリンは半狂乱に声をあげながら逃げていった。

 

 血を拭ってあたりを観察してみると、ゴブリンの体が半分に割れている。

 ゴブリンの死体にはある程度慣れてきたが、嫌に断面がきれいだ。


「一体今何が起きたの?」


 レミアにそう問われても俺にはわからない。ただゴブリンの攻撃を受け止めるためにスキルを使ってみただけだ。

 メリッサは難しそうな顔をしているし、レミアは目を見開いて びっくりしているし、なかなかカオスな状況になってきている。


 しばらくするとメリッサが納得できる理由を思いついたのか、肩を掴んできた。

 研究をしている時のような、一転集中していて他に意識を割く気がないような感じで掴んでくる力が強くて痛い。


「今のは三つ理由が考えられるわ。一つはカナメがスキルを使って水晶を作ったときに、結晶が成長する勢いでゴブリンを切った。もう一つは、ゴブリンの体の内部に結晶が作成されて、成長した。あとは空間的にゴブリンの体を押しのけて結晶が作成された。このどれかじゃないかしら」


「とりあえずそこの壁の中に水晶を作るイメージでスキルを使ってみるよ 」

 

 壁の中、といっても確認できるように浅めなところに水晶が出来るようにイメージする。

 そうすると、壁の中に水晶がいる状態になったが、壁の中で成長したのか、空間的に成長したのかわからない。

 掘り出してみると、水晶のなかに土が一杯入っていた。

 空間的に、だったら土も何もかも押しのけるだろうし、壁の中で成長したのだと思う。


「壁の中で成長したみたいね。空間的に押しのけていたのならさらに凄かったのだけど……」


「魔法とかでそういうのはないの?」


「一応なくはないけど、伝説みたいなものだわ。私は使えないし、使える人も聞いたことないわ」


 あるらしい。空間っていうのを操作したりするにしても、抽象的でよくわからない。空間といってもこの世界が何次元の世界かわからないし、空間を固定したりとかしたら自転の影響でとんでもないことになるのではないだろうか。

 まあこの世界が自転しているのかわからないので考えても無駄そうだ。


 それにしても、空間的に押しのけたりする方でなかったのは残念だが、 いい攻撃手段になるのではないだろうか。

 ただ、切り口が鮮やかでも切断死体はグロテスクなのが難点だし、体の固い魔物に効くのかどうかが不安だ。


 結果的にそこで今回の迷宮探索は終わりみたいだ。

 魔力量的にも余裕はまだあるけど、余裕のあるうちに戻った方が、安全だそうだ。

 



 迷宮の外に出るのは簡単だった。

 地図もあるので最短経路で戻れるし、十階層に比べて出てくるゴブリンの量もすくない。

 感触は気持ち悪いが、行きよりも数倍早いスピードで戻れた。


 迷宮の外に出ると、陽が昇ってきている。迷宮内は時間の確認もできないのでどれ位か分からないが、意外と長い時間いたらしい。

 ゴブリンをたくさん倒したしステータスを見てみるとかなり上がっていた。

 佐藤要

 Lv.12

 HP240/240

 MP1860/1860

 スキル 特殊:結晶作成・操作

 

 レミアとメリッサに伝えてみると驚かれた。


「魔力の伸び具合がなかなか多いわね。魔力量的には少ないほうだけど、順調に成長すれば上の下くらいにはなれるんじゃないかしら?」


 その代わりスキルで大量に魔力を使うことになるだろうし、増えてもらわないと困る。


「そうは言ってもレミアにもメリッサにも勝てる気がしないや」


 当たり前よ。と同時に返された。

 簡単には勝たせてくれなさそうだが、本来の目的のレベルをあげることはある程度達成出来たのではないだろうか。

 女性に身を守られるのは男として格好が悪いが、いつかは背中を任せられるようになりたい。

 店に戻っても訓練は辛いけど頑張ってみよう……。

ちょっとした説明 飛ばして大丈夫です。


ものを押しのける。ってのは空間的に押しのけるという魔法チックなものではなく 、物質中の格子欠陥から種結晶がスキルによって生まれ、成長するというイメージです。つまり、完全に結晶質な結晶体(熱力学の第三法則をみたすような) に新しく結晶を作成しようとしても、発動しなかったり。


空間的に、っておかしいですもんね。


尿管結石を相手に発生させるスキル……

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