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Phase16 血だらけ

 店に侵入者がいたみたいだ。

 防犯カメラみたいなものもないし、どのような奴が入ってきたのかはわからない。


 排気口から入ってこようとしたらしく、途中で罠に引っかかったみたいで血の跡が大量に残っている。ゴブリンと違って赤色だから人間かなんかなんだろう。

 なかなかエゲツのない罠がしかけてあるみたいだが、このくらいしないと対処できないくらいになってきているのかもしれない。


 一体どこの誰が狙っているのかはわからないけど、高価な魔晶石とかを扱うし、カネ目当てくらいしか考えられない。

 スキルのことはバレたとは考えたくないが、よくわからない現状、レミア、メリッサに強くなるまでは守ってもらうしかない。


 排気口以外に侵入しようとした形跡は見つからなかった。

 特に部屋なども荒らされていないみたいだし、無事でよかった。


「工房は無事だった?」


 メリッサに確認してみる。何があるのかわからないからどうなっているかもわからない。


「特にこれといって取られたものはないわね。道具の配置も変わっていないし、排気口のところまでしか侵入が出来なかったみたいね」


 かなり高めのものがおいてあるので盗られたりしてなくてよかった。


「店に護衛を一人置いたほうがいいんじゃないかな?」


「そうね。ちょっと店を空けただけでこれだし、常駐でレミアか私のどちらか一人とカナメの護衛に一人って分けたほうがいいんじゃないかしら?」


 その言を受けてレミアは難しい表情をしている。眉間にシワが寄って、戦闘時の刺々しい雰囲気のような、少し怖い雰囲気を醸している。


「私は反対だわ。そもそもメリッサに護衛を依頼したのは店の中ならまだしも、外で私一人じゃカナメを守り切れない可能性があってのことだし、あまりカナメの周りを無防備にしたくない」


「俺が強くなれば問題はないってことだよね?」


「そうだけど……何年かかるかわからないし、即効性のある解決策は正直ないわ。最悪、店はダメでもカナメが生きていればいくらでもやり直せるし、やり直せるだけの手段をカナメは持っているわ」


「とりあえず現状維持ってこと?」


「そうね。それしかないと思う。戦力を分散する訳にはいかないし、相手が何なのかわからないから守りに徹するしかない」


 今は店に張ってある罠のお陰で大丈夫だが後始末はめんどくさいしあまりいい事はないからどうにかしたい。


「お金はかなりかかるけど情報を扱っているギルドがあるからそこに依頼すれば?」


 メリッサが代案を出してきた。

 お金がかかるというのはどれくらいかかるのかは依頼事に違うらしいのでわからないらしいがそういう手段があるならそれに頼るのもありだと思う。


「そうしようか」


 とりあえずいくら掛かるのかわからないので依頼の見積もりを出してもらうことにした。

 今から魔道具の研究をしたいそうなので明日行くことにする。

 迷宮に行っている間に魔道具に触れられなかったから禁断症状でも出しているのだろうか。


「まずは魔法陣の作り方について教えるから工房にきて」


 掃除はレミアがやってくれるみたいだし、いてもいやになるだけなのでそうすることにした。


 工房に入ると、散らかっていて何がどこにあるのかよくわからない。

 いつの間にこれだけ散らかしたのだろうか。

 

「魔法陣を実際に作ったことはないわね?」


「ないかな」


 魔法陣っていう物が魔道具の核に使われてることは知ってるけど、資料でしか見たことないし、作ったこともある訳がない。

 何がどう難しいのかもよくわからないけどメリッサが何かを用意しているので見守る。


「これが魔法陣よ」


 時間にして二十分もかからない位だろうか。机の上で粉末状にした魔晶石を乗せて、魔素遮断溶液をかけているだけで、簡単にできているように見えたが、慣れているからそう見えるだけで実際は難しいらしい。


「どんな効果があるの?」

 

「魔力を注ぐと水がでてくる。ただそれだけだわ。この程度の効果なら自分で魔法を使った方が速いし、これを買う人はいないわ」


「でも何かしらの利点はあるんじゃないの?」


「そうね。自分の不得意な属性でも魔法陣を使えば使うことができる位かしら。これだけだと利点は少ないから、これを色々と応用することを研究しているわ」


  ちなみに、以前訓練所を半壊させたのは威力を増強させる魔法陣なるものを作って、思いっきり魔法を使ったら魔法陣が耐え切れなくなって爆発したらしい。アホか。

 それでも十分商品化できると思うけど、コストがとんでもなく、さらに耐えきれる魔力量がそんなに多くなかったことも災いして、まだうまくいってはいないらしい。


「まずは、ただ水が出るだけの魔法陣を作ってみましょうか。最初だし、口出しは一切しないわ。やれるだけやってみて」


 作り方は聞くだけだと簡単だ。

 布に魔晶石を何かの法則に従ってのせて、魔素遮断溶液をかけるだけだ。

 法則性はわからないけどメリッサの作った魔法陣があるので同じになるようにすればよさそうだ。


 そう思って机に布を敷き、魔晶石の粉末をのせていく。

 形は簡単で円の中に楕円のようなのが数個あるだけだし、普通のハンカチくらいの大きさだ。

 粉末、といってもそこまで細かいものではなく、1粒0.1mm程度なので上から覗いてみるとメリッサの物に比べて魔法陣が少し歪んで見える。

 できる限りメリッサのものに似るように作っていくが、細かい調整をするだけでも意外と時間がかかった。


 なんか失敗しているような気配がするけど、見る限りはメリッサの作った奴と同じだし、とりあえず魔素遮断溶液を上からかけることにした。

 ちゃんと均等に液をかける機械のようなものがあるので、魔素遮断用溶液を少しだけ注ぎ、魔法陣を書いた布をそっとのせる。

 ちゃんと機械と魔法陣が平行になっているのを確認して上から溶液を垂らすとうまく行ったように見える。


「魔力をほんの少量でいいから注いでみて」


 成功しているかが怖いが言われた通り注いでみる。

 何も起こらない。


「その魔法陣は私が作った奴と似ているけどぜんぜん違うわ」


「どこらへんが? 形的には同じだと思うんだけど」


「たしかに形的にはそれで大丈夫だと思うわ。ただ、口で説明するには間違いの箇所が多いからもう一回私が作るわ」


 意外ときつく言われた。

 やはり研究関係だから厳しいんだろう。


 メリッサがまた魔晶石の粉末を布にのせていく。

 形も大きさもさっきと同じだ。


「まずカナメは形だけ似せることに気を取られていて粉末の盛り具合までは気にしていなかったわね」


 自分の魔法陣をみてみると確かに凸凹になっている。


「影響は大きいの?」


「大きいわね。魔力を注いでも魔力の伝導率の差のせいで魔法陣の一部に負荷がかかったりして壊れたり、下手すると爆発するわ」


 そう言われても凸凹にならないように載せていくのはなかなか難しいと思う。

 上から圧力をかけて見かけ上は凸凹が無いようにすることも考えられたけど、そうすると魔法陣の線の魔晶石密度が高くなってしまい、これも魔力の伝導率に影響が出てしまうみたいだ。


 メリッサは手際よく魔法陣を作っていくが、やはり慣れなんだろう。


「あとは気がついていなかったのだろうけど魔素遮断溶液を掛ける前に火の魔法を使っているわ」


「なにか意味があるの?」


「意味はものすごくあるわ。魔晶石の状態や種類によって違うけど数分から長い時は数時間魔法陣に均等に熱を加えてやると焼結、という現象が起きるわ」


 焼結、聞いたことのない話だ。

 魔晶石の粉末が溶けないくらいの温度で加熱してやると粉末同士がくっ付いて、一つの大きな結晶になるという現象らしい。


「なんか焼結したほうが、魔力の伝導率がよくなりそうだね」


「そうよ。それが目的で熱を加えるの。魔法陣表面に凸凹があると熱膨張のせいで熱を加えれば加えただけ凹凸が激しくなってしまうから細心の注意を払わなきゃいけないわ」


 簡単な魔法陣でもこれだけの手間がかかるので複雑な魔法陣を作るのが難しいのもわかる気がした。

 予算があるところは魔晶石の粉末を使わずに直接魔晶石を掘って魔法陣の形にするそうだが、相当大きな物でないと作るのが難しいらしいし、よくわからないが魔晶石の結晶の角度が違うことで性質が異なってくるからそれも考えないといけないそうだ。

 幸い、魔素遮断溶液のかけ方は問題なかったようなので、特には言われなかった。


 自分の作ったやつとメリッサの作ったやつの違いはやはり大きい。

 悔しいので作り直すが、うまく発動するまで魔法陣を五枚くらい無駄にしてしまった。


 今日たったこれだけの実験でもそれなりにお金がかかっているので恐ろしい。

 魔晶石が作れて本当によかった。


 今回は理論も何も知らずにメリッサの魔法陣を真似しただけだが、次回からは理論的な部分も教えてくれるらしい。


 おまけに普通は魔晶石を布に載せる時、枠型のようなものがあるらしい。

 最初から使わせて欲しかったが、最初はどうして失敗するのか知って欲しいからそうしたみたいだ。

 次回は使わせてくれるらしいので少しは楽になりそう。


 それでもいろいろな要素が関わってくるみたいなので長い道のりになるらしいが、それだけ難しいことなのだろうししょうがないだろう。


魔法陣を科学したいですね

簡単に研究してて自分のほしいものができるなんて思わないほうがいいですし、戦闘方向より生産方向を重点的に書いて行きたいです。


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