第9話
「らっしゃっせー」
ステップ星系の首都コロニー、始めて見る三角形のそれに着陸した俺達は、傭兵ギルドでの諸々を済ませ、中古船販売店へと来ていた。
「まさかあんなにすがり付かれるとは…」
「恥も外聞も捨てて、全力だったわね」
〔かっ、貨物室が無い船に!無い船…無い船買えやオラァ!もうトンガリ造船所には話通してんだ!まともな新造船…買わないで下さいようわあぁぁぁん!〕
「情緒も無茶苦茶だったし、彼女自身も相当追い込まれてたんだろうな」
「身長の低い鼠獣人って所もミソよね。
かなり同情を誘われたわ」
「「まっ、それはそれ」」
これはこれである。
「流石に、命を預ける船をそんな理由で選びはしないわよね」
「そうそう、トンガリ造船所だとなに買わされるか解らないし、種類も豊富な中古から選ぼう」
店に備え付けられているタブレットっぽい端末を操作して、船の種類を調べる。
「報酬も結構もらったし、小型船の中でもミドルサイズの船を買えるんじゃない?」
輸送の報酬は、結局2万エネという大金になった。
元々は5万エネに色を付けてくれてたみたいなんだが、〔貨物室無し!そう宣言しないと元値に下げるのです!〕と開幕どや顔で言われたので断っておいた。
「いや、ローサイズにしてオプションを盛るつもりだ。
俺にあんまり腕がないから、性能差でなんとかしないと…」
「腕の方は、宇宙船に乗り始めて歴が浅いんだから仕方ないわよ。
船団に所属すれば、そこら辺はどうにかなると思うけど…」
「常識知らず2人組だからなぁ…どんな軋轢が起こるか解らないし…暫くは2人旅だな」
「そっか…いっ、良いんじゃないかしら」
「という事で、貨物依頼もこなせる容量のふ「ちょっと待ったぁ!」…はい?」
そこにいたのは、灰色の髪のちまっこい鼠獣人…そう、受付のやべぇ人だ。
「さっ、探しましたよ…まさか近場の中古船販売店をスルーするとは…」
「いや、あそこ傭兵ギルド提携店で、元宙賊船しか売ってな「しかぁーし!チューの目は誤魔化せないのです!」…誤魔化したな」
「ちゅっ、チューもクビがかかってるのです!是が非でもデータ輸送向きの船を買ってもらうのですよ!」
「キャラ濃いなぁ…」
私服に着替えたのが理由か解らないが、ゴリゴリのゴスロリファッションに、耳と尻尾が映えている。
「私服なのは、傭兵ギルドとは関係ありませんアピールなんでしょうけど…」
「多分指示降りてきてないんだろうな…腕にギルドの腕章付けっぱなしだ」
「とにかく私服に着替えて行けって言われたパターンよね」
「ギルドの時も、後ろでお局っぽい人がなんかクスクス笑ってたし、あの人の差し金じゃないか?」
「あぁ、あの猫獣人の…たしかにありそうね」
あの人、性格悪そうだったからなぁ…常にニヤニヤしてたし…
「どうする?虎穴に入ってみる?」
断ったとはいえ、元の提示額から3万エネの減俸がされてるわけで…一応、強気に出られる立場ではある。出るところに出せる材料はあるのだ。
ただまぁ、元々データ輸送継続してもらうために色を付けるって話だったし、ゴリ押し出来る程ではないな。
「…まぁ、監禁されるわけでも無いし…行くだけ行ってみるか…駄目そうならすぐ帰れば良いしな」
「そうと決まれば行くのです!気が変わらないうちに!さあ!」
そうして探検隊リーダーのような動きをするペトラ(名前を聞いた)に続いてゴンドラへと乗り込んだ俺達は、トンガリ造船所へと輸送されるのであった。
「ようこそいらっしゃいました!トンガリ造船所へ!」
三角錐の見事なトンガリの社屋、トンガリ造船所へとやって来た俺達は、三角錐の帽子をかぶったちんまいホビット族の男性との商談を始めていた。
「以前の御船からご予算までしっかりとお聞きしております!私どもでしたら、ピッタリの御船を提示できるかと!」
漏洩力ぅ!
「その前に、ベース船のカタログを見せてちょうだい。
先に確認しておきたいの」
「かしこまりました!」
そうして出てくるMAX2万エネ前後の船のカタログ。
「ふーむ」
「やっぱり新造船なだけあって結構するわね…ミドルサイズは、オプション無しでギリギリアウト位の価格ね」
「そうだなぁ、ローサイズで元の性能高めな船と、オプションで盛った船の見積りを聞いて決めるか」
ざっくりとだが、オプション込みで
ジェネレータ 12
推進機 6
シールド 20
装甲 17
武装 14
位の船になりそう。
シールドと装甲で耐えながら、ジワジワと削って最終的に勝つ感じ。
俗に言う2ブロック船と呼ばれる船で、貨物庫が1ブロック、生活空間が1ブロックという構成になっている。
参考までに、今の船が
ジェネレータ 3
推進機 2
シールド 3
装甲 2
武装 4
位の船だから、パワーアップは結構する。
因に今の船は1ブロック船で、貨物庫の接続部分に無理矢理コックピットを繋げた、ニコイチあるあるの形だ。
中古の船は性能や大きさがピンキリだけど、よさげな船のキリの部分を乗せ変えたら、結構良い感じになりそうという話をローズとしている。
「そうね。
オプションの価格次第だけれど、中古船の方が良いかもしれな「「ちょーっとまった!」」…い」
「そこで決めてもらったら困るのです!」
「我々の技術力と、ギルドの助成金!これを合わせますと!」
「「この船が!この価格で!」」
そうして出てきた船のスペックは、ざっくりとだが、
ジェネレータ 32
推進機 20
シールド 27
装甲 23
武装 30
こんな感じであった。
船の構成は大きめの2ブロック船で、前方に居住空間、後方にデータ保管庫がくっついている。
とはいえ、データ保管庫もそこまで大きいわけでは無いので、後ブロックは割と空間があり、貨物室以外には換装可能である。
価格は2万エネ、幾つかのオプション無料設置権付きだ。
「「…怪しいからパスで」」
「「なにぃ!?」」
突き返されることなど、微塵も考えていなかったであろう2人の声が響き渡りながら、商談は続く。




