第8話
「あー、これ…あと1・2回が安全に乗れる限界ですね」
「ファッ!?」「まぁ、そうよね」
スタート星系の首都コロニー、大きなコロニーには標準で付いている《簡易チェック機能》とやらを起動して、傭兵ギルドで諸々を済ませ、帰ってきた俺達を待っていたのは、そんな言葉だった。
「まっ、マジですか?」
「本体もニコイチですし、武装も後付けで…正直、良くここまでもってるなって印象です」
そう答えてくれるのは、狸耳の技師さんだ。
なんと態々結果を伝えに来てくれたらしい。
「何かブレイクスルーが、なんて思って来てみましたが…これは単純に、この加工をした技師の腕が良いだけですね」
「まだ2フライト終わったなんだけどなぁ…」
「武装が致命傷ですね。
これのせいで、かなり短寿命になっているみたいですから」
「やっぱり、装甲との接続部が悪いのかしら」
「そうですね。
それぞれ違うものを溶接するような形になって…実質サンコイチに近い強度になってます」
「それぞれ製造会社も違うみたいだし、むしろ良くやってるわよね」
「中々執念が見える仕事振りでした」
なんか専門用語を使って話をしたそうな雰囲気が漂っているので、そっと離れる。
…うん。話が全く解らなくなった…流石プロだなぁ…
「しっかし…次の船をどうするか…」
第4コロニーは、首都コロニー向けデータ輸送依頼の、中継地点の役割を担っていたらしい。
お陰で前回3倍近くの量を運べて、少しだけ懐に余裕はあるけど…最低2万エネはかかる新品の小型船に手を出せる程ではない。
「となると、また中古か…」
一応、いつ乗り換えても良いようにと、中古市場は定期的に見てるんだが…
「この星系…品揃え悪いんだよなぁ…」
具体的には、中古の宙賊船しかない。
「そりゃそうよ、この星系にはシップヤードが無いんだもの。
乗り換えが起きないのに、まともな中古船が市場に出るわけ無いでしょ?」
「…たしかに!」
整備士さんとの会話を終えたらしいローズの一言に納得しつつ、ギャラクシーマップを開く。
「だとすると…ここから一番近い所は…ここか!同じ貴族州にある、ステップ星系」
「へぇ…何々?あっ、最大手のトンガリ造船所があるじゃない」
「…独特な名前だな」
「今の船に乗ってる砲塔を作った会社ね」
「…独特な会社だな」
「へぇ、トンガリって500年前は大手だったんですね」
「あっ、整備士さん」
「その言い方ってことは…」
「今は中の下って所ですね。
所謂枯れた技術を使って尖った性能の船を作るんで、安定感は抜群ですよ。
ただ、汎用性がまるで無いので、使ってる人はあまりいませんね」
「数を揃えれば絶大な強さを誇るから、安定性と尖った性能で軍には大人気だったのよね…まさかそんなに落ちぶれるとは…」
「今の軍のトレンドは《数より質》らしいですから、そこら辺が原因かもしれませんね」
「時代は変わるわね…」
「ほえぇ…」
一応他の所も出してみるか…
「後は…あっ、駄目だ」
「そうですか?ここの《手のひら造船所》とか結構おすすめですけど」
「知らない会社ね」
「ここの売りはとにかく安いんですよ。
中古船に近い価格で新造船が買えるので、始めての乗り換えで此方を選ばれる方も結構多いです」
「なるほど…検討位はしてみても良いんじゃない?」
「いや…その…」
「なによ」「どうされました?」
「この船、貨物室無いだろ?」
「そうね」「そうですね」
「限界ギチギチまで詰め込んでも、食料5日分しかもたないんだよ」
「「あっ」」
「ほら、この星系に最短距離で行けるようにしても…」
「8日はかかるわね…」
「迂回すれば2日のルートもありますけど…そうすると、今度は船がもちませんね」
「トンガリ1択…かな?」
「そうね」「そうですね」
中古宙賊船を新たに買って、乗り換えつつ向かうという手も無くはないが…この船…売れないだろうしなぁ…いたずらに予算を減らす未来しか見えないので、やめておくことにした。
その後、ステップ星系に行くことを何処かから仕入れた傭兵ギルドに、データ輸送依頼を大量に押し付けられたり、そのせいで食料が2日分しか積めなかったりしたが、なんとか出港する事に成功した。
「あっ、スキャルの《積載可能セキュリティランク》が上がってるわよ」
「2回しか輸送してないのに!?」
「特記事項で《データ輸送に限る》って書いてるから…余程運ぶ人がいなかったんでしょうね」
「えぇ…」
「これ…前回の何倍かしら…」
「箱所かタワーだもんな…」
「それも何台も…」
「…新造船、買えるんじゃね?」
「…私もそんな気がしてきたわ」
〔いくつのデータがあるかは機密なので!新しく船買うんでしょう?色付けますので、どうか!どうかこれからもデータ輸送を!〕とすがり付く傭兵ギルド職員を思い浮かべながらも、船は進んでいく。
新たな船との出会いを求めて。




