第10話
2人が提示してきたオプション盛り盛り船…スペックは素晴らしい…素晴らしいのだが…ここまで付けると7万エネは余裕で越える。
つまり、いくらなんでも怪しすぎるのである。
「なっ、なんでですか!」
「いや、スペックの割に安すぎるだろ。
この船で一体なに運ばせるつもりだよ」
「物理データなのです!」
その割には補助がかかりすぎてるんだよなぁ…俺の知らない危険とか、この割引をダシに何かさせられるのかもしれない。
「そもそも、データ輸送自体が一過性の仕事な可能性が高い。
1度運んだら暫く仕事が無くなるデータ保管庫よりも、積み荷なら大体積める貨物庫の方が良いと思ってな」
「…しゅうかん」
「はい?」
「スキャルさんが運んできたデータは、最大1週間分なのです!」
「なんでそんな事がわかるんだ?」
「行政系のデータは、1週間以上保管が出来ないのです。
だから、もし1週間の間に依頼が達成されなかったら、他のデータも纏めて、職員が直接運ばないといけないのです。
ギルド職員は身代金が高いから、無茶苦茶狙われるのです!
身代金が安いと感じられれば容赦なく殺されるし、下手すれば殺されるよりも…
だから、仕事が無くなる事は無いのです!」
「えぇ…」
ちょっとブラックじゃない?傭兵ギルド君…
「ついでに言えば、助成金もギルド職員労働組合から出てるのです!こっちも必死なのです!」
「貨物室積むのはどうなの?ほら、データ保管室の横にとか…」
「保管室の有無は宙賊の襲撃率に直結するのです!沈没でもした日には元の木阿弥なのです!」
そうして叩きつけられる襲撃と保管室の相関リスト…あーなるほど、宇宙船の空きスペースに積めれば積める程、当たりの成果も大きくなるから…
大きな保管庫よりも、小さい保管室が人気なのね…あぁ、ミサイルポッドに改造できて、小さな船にも乗せれると…
「初めから保管室がないことが解っている船は、明らかに襲撃が少ないのです!」
「ついでに市場価値も少ないと…スキャル、同じようなスペックの中古船が3万エネで売っていたわ。
どうやらデータ保管庫が相当特殊な作りをしてるみたいで、換装するには買い換えるしか無いみたいね」
「ギクゥ!?」
ふーむ、なるほど…
「たしかに襲撃が少ないのはメリットみたいだが…俺の知識には、宙賊に襲われた時は、貨物を投棄して逃げろとあるんだよな。
あと、襲撃された時の被撃墜率がかなり高いんだが…これは?」
「ギクゥ!?なのです!」
さっきこっそりと、傭兵ギルドのデータアーカイブから拾っておいた、輸送船の被撃墜率のデータを出す。
「ローズ、ほらこれ」
「たしかに…これは…あんまり軍が機能してないのかもしれないわね…撃墜率もだけど、私たちの頃は、行政データの移動は軍の仕事だったもの」
「うーむ」
軍の弱体化かぁ…
貨物室もなぁ、別に付いてても良さそうな…ん?資料に何か…
あっ、なるほど…データ輸送と並列で受けるのを禁止してる仕事が多いのか。
それに、ちょっと良い貨物輸送の仕事を受け始めると、万全を期すためにデータ輸送を受けなくなっていって…これは確かに貨物室無くしたいわ…労働組合的にも払い損になりかねないし…
「…はぁ、これは無理そうですね。
仕方ありません。普通の船のセールスと参りましょう」
「そっ、そんなぁなのです…」
「備え付けのデータ保管室もありますから、質は落ちますが、使っていないスロットか、倉庫の隅にでも設置していただきましょう。
あれなら、着脱も簡単ですし、中古需要もある程度ありますしね」
「しょうがないのです…」
よいしょっとホビットの職員さんが、立ち上がり、後の棚から端末を取り出す。
「この端末には、オプションを付けた際の試算なんかが出来るアプリが付いてまして…つきましては、それを見ている間に現在の船の詳細情報なんかをお教えいただけると…」
「ん?情報はギルドから受け取ってるんじゃないのか?」
「私共実は昔そこそこの企業でして…コンプライアンスは確りしているのですよ」
「あー、確かに、トンガリはその辺り確りしてるイメージが有るわね…だからこそ国を跨がって軍に船を売ってた訳だし」
「しっ、知ってるんですか!?」
「知ってるもなにも、私トンガリの軍艦に乗ってたのよ。
コード…は流石にあれだから…あれよ!軽巡洋艦の癖にやたら足が早くて、装甲が薄くて、整備ドックが山程付いてる特化艦!」
「おぉ!?それなら確かに!わが社しか出さないようなピーキーさだ!
………ありました!800年前に初号艦が就航してますね!」
「そっ、そこまでは流石に知らないわよ…」
「良いですよねぇ…トンガリ!
しかし…元軍人さんでしたか…となるとさぞかし船も…」
「あっ、船はこっちのスキャルの物よ。
私は偶々拾ってもらっただけ」
「そうでしたか」
そうしみじみ言う社員さんを横目に、許可のボタンをポチっと押す。
宙賊にすら知れ渡ってる船の情報を隠す必要もないしね。
…勝手に渡されてるのはちょっと話が変わるけど。
「此方が船のデータ…データ…失礼ですが現役の船ですか?」
「…一応理由を聞かせていただいても?」
「いえ、唯一の砲塔に300年前に廃盤になった形式の…しかもさらに古い型…400年は前だろう砲が…」
「多分450年は前よそれ。
500年前の技術で直せたもの」
「それはそれは…あっ、ありました。
472年前に発売開始された型で…なるほど…集束すればなんとか…いや、それでも流石に…」
「集束用のレンズを、最新のに取り替えたのよね。
…と言ってもかなりの安物だけれど」
「それならギリギリ…そうですね、それこそこの船のシールドと装甲ならなんとか…一般的な船なら確実に無理ですね」
「やっぱりそうなのね?
いやぁ…技術の進歩は凄いわねぇ…」
「凄い綱渡りだったんだな…」
「だって宙賊が狙わない船よ?相当よそれ」
そっかぁ…
「スキャル様は、今後もこの船と同じスタイルで?」
「あー、実は船に乗り始めて歴が浅くてな…だから、腕がなくてもごり押せるような形が良いんだが…」
「なるほど…であればそうですね。
やはりこの船と同じスタイルが宜しいかと」
「遠距離からチクチクと?」
「そうですね。シールドと装甲で耐えて、遠距離から確実に………なんて面白くない船は我が社には御座いません!」
「えぇ…」
「我が社のモットーは《一点突破》!データ輸送艦等と言うふざけた船でもない限り、その点に曇りはありません!」
「えぇ…」
そうしてバンッと叩きつけられるスペック表
ジェネレータ 30
推進機 10(40)
シールド 12
装甲 5
武装 50
なにこれ…




