第61話
あれから5時間、俺より夜更かししてたペトラの起床を待って、作戦が始動した。
「後少しでジャンプアウト…作戦の再確認をするぞ!ペトラよろしく!」
「なのです!
今回の作戦はシンプルなのです!宙賊基地の大半が存在していた小惑星帯を、通信室解放状態で進むのです!
すると、宙賊基地もステーションな都合上、どこかで必ず通信障害が起きるのです!
通信障害が起きるポイントを幾つか集めて、基地を絞り込んだ後に、襲撃するという流れなのです!」
「なんというか、襲撃が間に合わずに逃げられそうな調査方法だよな」
この船への襲撃量を見る限り、通信設備ってかなりの距離レーダーに映るみたいだし…
「それも込みよ。
…と言うか、恐らく逃げてもらうのが目的ね」
「…というと?」
「私達にも知らされてないけれど、恐らく高速レーダー艦辺りが増援に来たのよ。
それで、バレバレの調査をして、逃げ出した奴らを一網打尽ってね」
「証拠隠滅されそうだなぁ…」
「織り込み済みよ。
…というか、民間にこんな話が降りてきている時点で、必要なものは手に入れきってると思うわ」
「今回重要なのは、拠点の破壊か収奪なのです!
放置するとろくなことにならないのです!」
「…という建前のもと、国相手に嘗めた行動をした貴族に、与えられるだけのダメージを与えておこうって作戦ね」
「怖いなぁ…」
「大方、残ってるのはステルス機能が付いたステーションだけよ。
製造費も高いし、ほとぼりが覚めた頃に回収しようって考えを、事前に潰そうって考えね」
「星単位の収入を持つ貴族が、惜しいと考えるレベルの値段かぁ…」
「ちょっと考えたくない値段なのです」
「報復とか…大丈夫だよな?」
「民間人を襲った挙げ句に、返り討ちにあったから報復?しかも有名じゃない傭兵相手に?
それをしたが最後、貴族社会で孤立するわよ。
なんなら、そいつの領地に行けば厳重に保護されると思うわよ。
下手に消息不明にでもなった日には、暗殺したと噂されるわ」
「ほえー、ローズ詳しいのです」
「私の元上司の実家が、謀略でそれやられて没落したのよ。
繰り上がりで階級が上がったから、よく覚えてるわ」
「それって、結局別の貴族から狙われるのでは?」
「今回は特別よ。
なんてったって、国に楯突いた貴族への攻撃戦だもの。
今回の件を謀略に利用したが最後、そいつもまとめて没落よ」
「安心したら良いのか…恐怖したら良いのか…」
「今回は安心しときなさい」
「「はーい」」
こうして、なんとなく気の抜けた状態で、作戦が開始したのであった。
『すまん!悪いが戦闘参加してくれ!』
「本部!こちらカナリア隊なのです!敵は大規模コロニー!繰り返すのです!敵は大規模コロニー!増援求むのです!」
『こちら本部!増援は送った!』
ジャンプアウトから3時間、とても順調に進んでいた調査は一転、苦難に直面していた。
「どうしてこうなった!?」
場所を割り出してジャンプ…までは良かったものの、そこで見つかったのは大規模なコロニーであった。
「小惑星帯でよくこんなデカブツ運用できるわね」
「この辺りには氷の小惑星が大量にあるのです!生存は余裕なのです!」
「冷静だなぁ…」
そんなコロニーからは、現在進行形で中型・小型の宙賊船が大量に出てきている。
「あの感じ、鉱物資源も豊富そうね」
「多分、大型船の万能工作船辺りを略奪したのです!修理素材で無理矢理船を組み立ててるパターンなのです!」
「無茶するわね…」
相手方の数は…100は超えてそう。
対してこちらは、小型のステーションを襲撃する想定で、中型の揚陸艦1隻に、中型の戦闘艦2隻、カナリア役のカステラ号1隻という構成で、多勢に無勢感がとんでもない。
「襲撃量が凄い理由はこれね…あっ、アタッチメントは外しといたわ」
「この量だと、チューは出ない方がいいのです。
スキャル!頑張るのです!」
「余裕だなぁ…」
敵…これ、何倍だよ…
「そりゃ余裕よ」
『間も無く射程に入る!各々自由に撃ってくれ!』
「了解!ってぇ!」
味方の全砲門から宙賊へ、無数の光の線が向かっていく。
その線は幾つもの船を貫通し、爆発させ、次第に消えていく。
「敵船の撃破を確認!数は不明なのです!」
「射程と威力は上でしょ?」
死の線を潜り抜け、なんとか射程に入った宙賊船が、反撃とばかりにこちらへとその砲を撃ち出す。
「被弾を確認!シールド損傷1%未満なのです!」
「防御も上で…」
『敵船が近付いてきた!指定ポイントへ移るぞ!』
「了解!」
近付いてきた船を迎撃しつつ、ステーションを中心にグルリと動く。
「敵の想定射程外へ、移動完了なのです!」
結果として、近付いてきた船とは大きく距離が開き、また一方的に撃てる状態へと戻る。
「機動力も上…」
「敵船の一部が逃走開始なのです!」
「どうします?」
『こちらの後詰めが対応する!無視して問題はない!』
「了解!」
「スキャル、これでもし負けたら…懲罰訓練ね?」
「ヒィッ!?」
「…チューも出るのです?」
「小型船はラッキーパンチで墜ちる事があるから、出ちゃ駄目よ」
「わかったのです!」
そうして、もしもの事があるミサイルの射程圏外から撃ち続ける事20分。
『こちら増援部隊!ただいま現着した!』
数隻の大型船が、大量の中型船を抱えてやって来たことにより、大勢は決した。
そう…決してしまった…俺達が逃げる前に…




