第62話
決着から3時間、凄まじい勢いで制圧が進んでいくコロニーからの通信が、我が船を経由してどんどんと流れていく。
その内機密では無いものはこちらにも提供されるのだが…
「なあローズ…なんか、家老とかのトップに近しいクラスが山程捕まってるんだけど…」
「…これはあれなのです…トップは機密情報に当たるクラスだから、他の情報で推察してねってパターンなのです…」
「………」
「…俺、今回の功績全部辞退しようと思うんだけど…どう?」
「チューも賛成なのです!」
「ローズは?」
「…やめときなさい」
「…その心は?」
「今回の功績は、どう足掻いても何処かから漏れるわ。
…まぁ、悪いことをした訳じゃないから、漏らしやすいのよ」
「おっとぉ?」
「…そういえば、ここだけの話って事で、チューも似たような話聞いたことあるのです」
「問題はここからで…私達、今回の件で無名じゃなくなるかもしれないわ」
「それは…もしかして報復の対象に?」
「ギリギリのラインね。
恥とか外聞を気にしない家でギリギリ…それも下位の家で…いや、国が違うから変わるかも…」
「それじゃ尚更辞退した方が…」
「なのです!」
「そうすると、守ってくれそうな軍と国に泥塗る事になるわよ?」
「…辞退は駄目だな!うん!」
「国に泥塗るのはマズいのです!400年はグチグチ言われるらしいのです!」
「…ということで、散々後回しにしてたパワーアーマーとパワードスーツ…買いに行くわよ」
「「おー!」」
その後、結構な待ち時間を調べものに費やした俺達は、元のポイントへと帰還するのだった。
通信ポイントへと帰還して2週間…襲撃がピタッと止み、ローズの点検・修理作業も終わった今日この頃、俺達は休日を満喫していた。
「ロックレイン!なのです!」
今やっているのは、VRRPGの大人気シリーズの1作目だ。
匂いや感触まで再現した作中で、俺達はオーク討伐を行っている。
「スキャル!これ終わったらあの群れに突撃するわよ!」
「了解!」
5体いるオーク達は、じゃんけんで魔法職を勝ち取った、ペトラの範囲攻撃によって等しくダメージを受け、一部クリティカルを受けたオークは膝をついている。
「もう終わるのです!」
「了解!行くわよ!」
「おう!」
石の雨が降り止んだ所に切り込んでいくのは、2度目のじゃんけんで近接アタッカーを勝ち取ったローズだ。
「手負いを仕留めるわ!ダブルスラッシュ!」
その二撃合一な一撃は、膝をついていたオークを一撃で倒しきり、ヘイトがローズへと集中…
「ハウル!こっち向けぇ!」
したものをすかさずこちらに引き寄せるのが、じゃんけんに全敗し、偵察兼バッファー兼生産職兼荷物持ち兼避けタンクの、俺ことスキャルだ。
「「「プギャァ!」」」
このRPGがスキルポイント制ではなく、やった時間で能力が伸びるタイプだから、ギリギリなんとかなっている俺は、突っ込んでくる4体の攻撃に優先順位を付けつつ、順番に回避を行っていく。
「右、右、左…パリイ!ローズ!」
「了解!スラッシュ!」
崩れ落ち、ポリゴンと化すオークを横目に、手持ちの鉄の盾を打ち鳴らし、俺を囲むオークの注意を完全にこちらへ向ける。
「さあ!順ば「チャージ完了なのです!」待て!待って!それ待って!「「「プギャァ!」」」あぁくそっ!ちょ「ファイアストーム!なのです!スキャル!逃げるのです!」オークの攻撃避けながらは無理ぃ!」
そうして、フレンドリーファイア設定をオンにしたローズを若干恨みながら、オークと共にポリゴンと化した俺は…安全地帯の町へと転送されるのであった。
「いやぁ、流石に無茶だったのです」
その後、誰かがやられた時にだけ使える、合流用アイテムを使用して、合流した俺達は、町のカフェで談笑していた。
「そりゃそうだわ!あれだけオークと密集してたのに、逃げ出せるわけ無いだろ!」
「あの魔法、チャージ終了と同時に発射されるから、調節しようが無かったのです」
「火力が中途半端だったせいで、あの後、危うく山火事になりかけたのよね」
「まさかモンスターでもない相手に、最高火力の水魔法を使う事になるとは思わなかったのです」
「ああ、それで魔力空っぽなのか」
「なのです!っと、メールなのです!」
「おっ…と、どっちの?」
「現実なのです!」
「そっちか」
珍しいな、結構加速させてるから、大体ゲーム中には届かないことが多いんだけど…
今は…30倍だな、10分休憩で5時間遊べる計算だ。
もっと良いのを買えば、加速倍率も増やせるらしいし…ずっと検討はしてるんだけどな…この前の娯楽コロニーの時に、襲撃さえ無ければ…後仕事の予定も無ければ…悔やまれるぜ!
「なるほど、今回の闇コロニー発見の報酬の話なのです」
「あー、一応、貴族や元貴族に襲撃されたくないってのは伝えてるんだよな?」
「なのです!一応、配慮するとは言われてたのです!」
「ただ、まぁ…今回は貴族家の領内の事案なのよね…だから、先に貴族家が報酬を決めて、国がその後に報酬を決めて、合計で良い感じに…なるはずなのだけど…」
「機密もなにもなく、王都で結構いい地位に就いてた法衣貴族逮捕の記事が出てるのです」
「…つまりは、王家案件になっちゃったのよ」
「メンツ的な問題で、王家は他の貴族家よりも、良い報酬を出さないといけないのです!
…それで、今回はこの星系群の、よりにもよって国軍が管轄してた星系で問題が起きてるのです…貴族家がキレてるって話が方々から出てるのです…」
「…となると、間違いなく報酬は吊り上げるわ。
…本来なら喜ばしいのだけれど…今回は…ね?」
「あんまり名声を上げすぎると、闇討ちされかねない…と」
「そういうこと」
今回はかなり大きな問題になってるからなぁ…身近なところだと、ドリル号を買ったステップ星系…その星系を含む一帯を納めてた、貴族家当主の弟と次男が、あの闇コロニーで捕まってる。
結構な広範囲に関係者が居るらしく、今回の派遣軍に関係者やスパイがほぼ居なかったのは、割と奇跡に近いらしい。
その数少ない関係者も、この前のオーレリア様襲撃への救援を遅延させようとした疑惑で、根こそぎ拘束されていたことも、今回の大捕物に繋がったと思われる。
「それで、今回の報酬は…」
「ゴクリ…」




