第6話
ブツブツ言い始めたローズと『何時間?』『1時間半!』という会話をしてから2時間。
「フムフムなるほど…」
ちょっとお高めらしい《簡単フード君6型》の、美味しいご飯モード(3時間)を起動し、ウィンドウショッピングをしていた俺は、予想より早く帰ってきた事に若干驚きつつ、ローズの方へ体を向ける。
「どうだった?」
「ヤバイわね」
「…ふむ」
「あの砲塔、私が理解できたわ」
「ふむ?というと?」
「大体の技術はね、500年も経てば訳も分からない形に変化しているものなのよ」
「なるほど?」
「現に、ジェネレータとか、装甲とかは、見たこともない技術の塊だったのよ」
「…なるほど?」
「でも、砲塔は理解できたわ」
「………なるほど?」
「現実逃避してるんじゃないわよ!?」
「安かったもんなぁ…」
「方向が変わった!?」
「早く…乗り換えたいなぁ…」
「それは賛成だけど、そこじゃなくて」
「せめて…シャットダウンだけでもどうにかなったらなぁ…」
「そうそこよ!」
「そこ?」
「技術が古すぎたから、私が修理できるわ」
「Oh…喜んで良いのか…悪いのか…」
「…とにかく、ちょっと工具を買って頂戴?
交換が必要なのも安い部品だけだし、さっさと終わらせちゃいましょ」
「………」
「なによ?」
「はい、これ今の全財産と、これが工具のページね」
「はいはい、貯金自慢ね。
傭兵が高給取りなのは有名なんだ…から?」
そこに映る1700エネの文字。
前回値切った分?傭兵ギルド推奨の街歩きパックとやらで吹き飛んだよ!身の安全万歳!
「…ちょっと話を聞かせなさい?」
あっ目が怖い!無駄遣いした人に向ける目をしてる!
「大丈夫よ?ちょーっと物の価値のすりあわせをするだけだから」
「ヒィィィ!?」
「なるほど…貴方若いのに中々壮絶な経験してるわね…」
あれから1時間経ち、仲良くベットに座った俺たちは、美味しいご飯モードの実力に舌鼓をうちつつ、会話に花を咲かせていた。
「ん、まずまずね。
普通のカートリッジ飯って感じ」
「おぉ!?ちゃんとご飯になってる!?近しいナニカじゃない!?」
「これの通常版どれだけ酷いのよ」
今日の晩ごはんはハンバーガーだ。
お昼に食べたハンバーガーが余りに衝撃のお味だったので、比較として出力してみた。
「バンズが…バンズが個体だ!?」
「コイツ故障しかけじゃないの!?」
そんな!?確かに中古だとは聞いてたけど!?
「なんだか凄くショックを受けてるわね…
しかし…実際の紛れ人ってこんな感じなのね…確かにこれは大変ね」
「むっ、一般的な紛れ人像か…結構気になる」
「そう?…まぁ、職員の反応を見る限り500年前と大して変わって無さそうだし良いか…」
そう言ったローズが此方へ体を向け、少し真剣な表情になる。
「税金泥棒よ」
「………はい?」
「まず、この世界にはスペースジャンプの恩恵を得ている人が山程いるわ」
「…そうなのか?」
「星系に少ない資源なんかは、他の星系から引っ張ってくるから、大体の人が恩恵を受けているわよ」
「成る程、グローバリズム的な奴か」
「それで、それが貴族連中には丁度良いと」
「………なーんか嫌な予感がしてきたぞー」
「紛れ人を理由とした課税に次ぐ課税が行われたの」
「Oh…」
「余りに多すぎるからと調査された時には、保護期間3年とか、好きなインプラント無償インストールとか、やりすぎだろって施策が大量に発見されたのだけど…」
「だけど?」
「今にして思えば、割と妥当だし、税金と比較してかなり安上がりの施策なのよね」
「…つまり?」
「貴族のポケットに山程入ってたって訳」
「Oh…」
「見事に踊らされた私達は、その怒りを紛れ人にぶつけてた訳だけど…どうやらそれは成功したみたいね」
「あー、確かに…」
保護期間なんて1日だったしな。
「その時の標語が《自立自助》だったんだけど…職員の反応を見る限り、変わってなさそうなのよね」
「ふむ…」
なんかSNSでも見てみるか…《紛れ人》っと。
『架空の存在をダシに税金盗るんじゃねぇ!』『保護助成金の名目で家族の会社に金送るんじゃねぇ!』『紛れ人見たなんて話ホラ以外聞いたことねぇぞ!』
「…紛れ人君の評判!美味しくなって再登場!」
「…えっ?ホントに?」
「ほらこれ」
「うわっ、なにこれ…流石に私の頃でも紛れ人の存在までは認められてたわよ。
あの大企業の社長とか明らかに紛れ…人うわっ!?暴動の影響で潰されてるじゃない!?
あんな半分ゲル状のカマキリ型昆虫人なんて、紛れ人以外の何者でも…人造生命体ぃ!?」
そのまま紛れ人実在の変をネットサーフィンし始めたローズを横目に、残りのポテトを一つまみ。
「おぉー、中身がゲルじゃない」




