第5話
「データの受け取り、確認しました」
「ありがとう」
脱出ポッドを回収し、襲撃に怯えながらも特になにも起こらなかった航路を進みきった俺は、傭兵ギルドの個室にて積み荷の受け渡しを終えていた。
1件辺り50エネ~100エネと、1000エネスタートの貨物輸送とはかけはなれた依頼料も、塵も積もれば山となり、1700エネの稼ぎになった
「しかし…航路情報の提示だけはなんとかやめれないか?襲撃が洒落にならないんだが…」
それを聞いて苦笑いするのは、爬虫類っぽい姿の職員さんだ…まだちょっとなれない。
「公的機関のデータがリストに入っていますので…難しいですね」
「信用ランク低い奴にそんなの任せるなよぉ…」
「データチップのセキュリティ性能は非常に高いですからね。
…これは、常に位置情報を発信し続けるタイプなので…はい」
あっ、はい…盗られるの織り込み済みで、宙賊の拠点知れたら儲けものスタイルですね…尚、傭兵の命など知らないものとする。
「そっ、それよりも!あのポッド、500年前のものだったそうですよ!コールドスリープ機能がなければ大変なことになってましたね!」
「そっ、そうだな」
露骨に話逸らして来たな…
「500年前と言えば、今は滅んだ「滅んだですって!?」…との戦争…」
「うわぁ…」
なーんか、凄く当事者っぽいんですけど…しかも亡国側の…
「いっ、いやぁ…なんでもない…というわけにはいきませんよね」
「流石にな」
「そのー、コールドスリープ解凍所がすぐ隣なんですよ…
普段殆ど使わない部屋でサンドしてるので、基本防音はしっかりしてるんです「軍人年金は!?保険は!?預金は!?」けど…」
「…駄目そうだな」
二重の意味で。
「…駄目そうですね」
二重の意味でね。
「なんか、悲しい無一文が誕生しそうなんだが…」
「えーっと、あっ300年前に救済関連は殆ど終了してますね」
「Oh…」
「今生き残ってるの「はぁ!?男の船に乗れぇ!?」…みたいです」
「………ちょっと待て、もしかしてそれって」
「えーっと、そ「現役軍人は3年以上の監視型保護が必要!?ふざけんじゃないわよ!?」…そういうことです」
「待て待て待て!無理だって!?俺の船の情報知ってるだろ?」
「あー、その…でもそうしな「保護者が拒否したら危険地域で強制労働!?嘘でしょ!?」…そうなります」
「うっ…」
「亡国とはいえ敵対国家の軍人ですからね…監視期間には少し助成金も出るそうですよ?」
「ぐっ、ぐぬ…だが…」
「乗っ取りなどの心配は不要です。
制限リングというものがありまして、敵対的な行動の防止なんかをしてくれるんですよ。
あくまで止めるだけなので、思考の誘導などは行われないクリーンな一品です」
「それは…」
「主に捕虜なんかに付けられるものですね。
今回も適用されるかと」
とはいえ、あの空間に2人は無「貴方ね!」…理だと思うんですけど…
「私はローズ!技術者よ!」
そう言って部屋へ入ってきたのは、赤髪を長く下ろし、強気な顔をしたスレンダーな俺と同じ人種らしき女性であった。
「…スキャルだ。傭兵をしている」
「貴方!聞けば傭兵になって日が浅いらしいじゃない!」
ギルドの漏洩力ゥ…
「技術者をただで雇える機会なんて、ほぼ存在しないわよ?」
「それはそうなんだろうが…」
「ほら、わかったらさっさと行きましょう?
聞く限り、女が入って問題になる相手も居ないそうだし…ほら!」
「いや、問題になりそうなのはこちらというか…そちらというか…」
「ほら、ワケわからないこと言ってないでいくわよ!」
「あっ、ちょっ、引っ張ら…力強っ!?」
遠くの方から『お達者でー』等と、ふざけた声が聞こえてくるのをスルーしながら、死んだ目の傭兵が1人、我が家へとドナドナされて行くのだった。
「ねぇ」
「なんだい?」
ドナドナとされてやって来たは、我が家を停めているドック。
そこには変わらず、長方形のフォルムの宇宙船と、明らかに乗せ間違えてそうな大きさの砲塔が鎮座している。
「私の見間違えじゃなければ、とんでもなくゲテモノな船があるのだけど」
「目は正常だねぇ」
「あれ、中型用の砲塔じゃなかったかしら?」
「へぇ…一応小型用って書いてたんだけどなぁ」
「私がコールドスリープする直前に、出てきた型に良く似てるのよね…
貨物室を何ブロックか潰して、そこにジェネレータを積むことで超強力な一撃を撃つって変態装備…
まさか淘汰されずに500年後まで生き残っているとは…」
「ジェネレータ無い上に、収束モード壊れてるけどねぇ」
「美味しくなって再登場してんじゃないわよ」
あっ、この世界にもあるんだそれ。
「しっかし…あれを追加ジェネレータ無しで…しかも小型船が撃てるなんてね…技術の進歩を感じるわ」
「撃ったら最後、エネルギー切れでシャットダウンするけどねぇ」
「撃ててないじゃないのよ!?なによその欠陥装備!?」
「元の技術が古すぎて匙なげたやつらしいし…」
「途中で淘汰されてるじゃない!?」
うーん凄いツッコミ気質…こりゃ一家に1人は欲しいね!
「遠くを見るんじゃないわよ!」
「あいてっ」
あっ、これくらいなら反逆判定無いんですね。
「はぁ…まぁ、ジェネレータ付いてないなら、貨物室はある程度広いんでしょ?
私、その隅っこ使わせて貰うから」
「あっ、いや…」
「良いわよ、自分の部屋なんて。
まぁ、大きな船に乗り換える時には、考えてくれると嬉しいけど…」
「いや、そうじゃなくて…」
「良いわよ。
小型船に船長室以外客室が無いのは変わらないでしょ?知識は古いけど、無いわけじゃないから…ほらね?」
そう言いながら、船の扉を開けて颯爽と中へと入っていくローズ。
遅れること30秒、追い付いた俺が見たのは…
「いっ、イカれてるわ…」
廊下の扉を開き、ぎっしりと詰まった砲塔の機械部分を見て打ちひしがれるローズの姿だった。




