第59話
『ドッキングリクエスト が 承認されました』
あの激戦から5分、俺達は後詰めで来た駆逐艦(フリゲート艦の1つ上のサイズ)の、ドックへと入っていた。
「…ふぅ…これで一安心だな」
「お疲れ様」
『チューもそっちに合流するのです!』
「宇宙戦も、中々面白かったのですわ!」
あっ、大型船のジャンプアウトの反応が見える。
「情報の鮮度って大事よね」
『船をメール代わりに使ったらこうもなるのです』
「どうしましたの?
…ああ、飛んで火に入る夏の虫…ですわね」
『ドッキング完了 お疲れさまでした』
『おう!防衛軍のトップをやらせてもらってる、ブレイズだ!
腰落ち着けてゆったりと話したいところだが…暫くは入れ食いになりそうでな?
まあ、船の中でゆっくり待機してくれや』
「こちら傭兵のリーダーをしてますスキャルです。
待機了解しました」
『おう!積もる話しはまた後でな!』
そうして、通信が解除される。
「ふむ…ブレイズ様は普段あんな感じなのですわね」
なんか知られない方がいい人に、通信内容を聞かせちゃったような…
「そっ、そうだ!ローズ、暗殺者襲撃の時に何を言いかけてたんだ?」
「あれ?
あれは単純な話よ。
貴族っていうのはね、大体が身体に何かしらの強化を施してるのよ。
それで、当主候補な上に、荷物でブレード持ち込むお嬢様なんて…間違いなくとんでもないことになってるわよ」
「ほえー」
「ふふふっ、私の場合は当主になれなかった場合の保険ですわ!
私、当主候補の中では最も若輩なんですの…だから、いざと言う時は傭兵として、近接担当で稼ごうと考えていたのですわ!」
「そうなんですか?
それこそ、良いインプラントを入れて、何処かの企業にでも就職した方が、稼げそうな気もしますけど…」
調べてたら、億単位のインプラントとかあるんだよな…そして、それを前提とする職に就ければ、1・2年でそれを回収できるという…
「企業は間違いなく、誰かの息がかかっているのですわ。
多分何処かで暗殺されますの」
「おっふ…」
「その点傭兵なら、逃げられるのが良いですわよね!
私、宇宙船操縦のインプラントも入れたんですわよ?
ただ…戦闘機動と致命的に相性が悪かったのですわ…」
「あー、貴族出身に良くあるやつね。
酔っちゃったんでしょ?」
「りっ、理由がわかりますの?」
「目が良すぎるのよ。
あと、1つの事に対する処理能力の高さとか色々相まって…要はキャパオーバーね」
「それなら処理能力を上げれば良いのではなくって!」
「どうなのかしら?
残念ながら、上手く行った例を私は知らないけれど…500年経って技術が進化してれば…」
「そっ、それじゃあ駄目ですわ…処理能力と処理が必要なものの対比は、ここ600年変わっていませんの…」
「あー、それじゃあ無理ね」
「ガクッ…ですわ…」
項垂れるオーレリア様を横目に、入り口から帰ってきたペトラを出迎える。
「さて、これで全員揃ったことだし…ブレイズ閣下との話し合いに向けた、話し合いを始めようか」
「「了解」なのです!」
「なんだか良いですわね!私も参加しますわ!」
「おう!良くきてくれた!」
あれから20分程が経ち、周辺の宙域に敵方が居ないことも確認されたことで、軍の本拠地兼俺達の目的地である第1居住惑星へと移動を開始したのだった。
「もう少しでキリの良いところになるから、茶でも飲んで少し待っててくれや」
そんな移動中に呼び出された俺達は、絶賛後処理中のブレイズ閣下のもとへと訪れていた。
「ふぅ…結局この後処理が面倒で…なぁ!?
なっ、なんでオーレリア様がいらっしゃるので?」
因に、別なタイミングで呼び出す予定だったらしいオーレリア様は、〔ふふっ、ドッキリですわ!〕という言葉と共に俺達についてきた。
「ふふふっ、ここは非公式な場ですの、元の言葉遣いでもよろしくってよ?」
「勘弁してくださいよ…ああ、良い、お前達も口止めされてたんだろ?
俺もやったことがあるからわかる…この方はこういう方だ」
「あら?もっと具体的に言って頂いても良くってよ?」
「はぁ…まぁ、全員が揃っているなら、それはそれで話が早い…
オーレリア様、今回の相手は、貴方に追い落とされた例の叔父殿です」
「後は私の1つ、2つ上の序列のお歴々も…でしょう?」
「証拠がありませんので」
「まぁ、そうでしょうね」
うわぁ…ドロドロしてるなぁ…
「私を便利使いしたのはそちらでしょうに…功績を横取りし損ねたらこう…酷いですわね」
「いっそのこと、当主候補の権利を放棄されては?
今回の船内での反乱も見ましたが…あの程度の人員しか居ないのであれば…後々厳しいかと」
「あれは、他の候補の要らない人員の寄せ集めですの。
恐らく、生き残ったのが想定外ですわ」
「そこまでわかっていらしたのなら、何故中型船1隻で?」
「元々は大型船3隻に、中型船6隻の集団の予定だったのですよ?
直前に妨害が入って、軒並み逃げ出したのですわ」
「なら、いっそうの事そこで諦められた方が良かったのでは?」
「流れが変わりましたの。
妨害を主導していたお歴々の管理星系で、スタンピードが起きたのですわ。
結果として、警戒網に大きな穴が空いて…片道さえ行けてしまえば、お歴々の影響力が及ばない星系で、ゆっくりと軍勢を集めて…という皮算用だったのですわ」
あー、俺達襲撃対策で結構遠回りしたからなぁ…
「それは…運が悪かったですな…
スタンピードが起きた辺りには、食道楽候達が多数いらしたようで…」
…あれ?
「しかも何かしら悔しいことがあったとかで、ストレス解消に出撃なされていたのですよ」
あっ、ふーん…へー…
「獅子奮迅の活躍だったそうで、想定の数倍の速度で事態が収拾したそうです」
「それで…余裕の日程が崩れたのですわね…」
「そうですね…運が悪いとしか言えないかと…」
「ですわね…」
あっ、あれかぁ…あそこで逃げた影響がバタフライエフェクト的に…
「あら?スキャル様顔色が悪くってよ?」
「あー、その…食道楽候達の機嫌が悪かったのは、恐らく私が原因というか…」
「ということは…お食事を作れるのですわ?」
「簡単なものでしたら」
「…まぁ、大方…少量の食事を巡って暴動でも起こしたのですわ。
暴動が起きれば、その中心たるシェフは逃げて…」
「不機嫌な食道楽候が生まれると言うことですね」
「ですわね」
「おぉ…凄まじい洞察力ですね…」
「…当たっていたみたいですよ」
「可哀想に…被害者が被害から逃げた先でまた被害に遭う…中々の地獄ですわ」
なんか…凄く憐れみの目を向けられてる…
それからも、色々と話した俺達は、遂に目的地へとたどり着くのだった。




