第54話
「平和だなぁ…」
「平和なのです…」
意気込んでから2日、1度の襲撃を受けた俺達は、想定を大きく下回る襲撃に、ほのぼのとしていた。
「ふっ、ふふっ…効くでしょう?
ジャンプキャッチャーを使うためには、船影を捕らえないといけないのよ。
これをされると、一体何処で網を張れば良いのかわからなくなるのよね…
私も、散々味方を死地に突っ込ませといて、最後には敵前逃亡した元上官を追いかけた時に、これをやられたのよ…血管切れるんじゃないかと思ったわ」
「へっ、へぇ…そうなのか…」
「なんか思ってたより、曰く付きの技だったのです」
『設定された エリアに 入りました』
「おっ、軍の警戒域に入ったな」
「これで一安心なのです」
「こら、暫くは気を抜いちゃ駄目よ。
星系の外縁部は、軍が駆けつけるのが遅いから『ジャンプキャッチャーを検知 脱出円を表示します』…こういう襲撃があり得るのよ」
「…ペトラ、脱出円が複数表示されてるんだけど」
「ジャンプ解除なのです!」
『ジャンプアウトします』
「ペトラ!ドリル号に!」
「了解!なのです!」
『オーレリア様輸送船から軍へ!複数のジャンプキャッチャー持ちが当艦を狙っている!至急援軍求む!』
『ジャンプアウト完了しました』
ジャンプが終了して辺りの様子がわかるようになる。
地形は小惑星帯、こちらの戦力は傭兵船の中型と小型が各々1隻。
敵兵力は、大型船1に中型船2以上、小型船が4以上…だと推定される…現状の確定戦力は、大型船の推定ローサイズが1隻と、中型2隻だ。
とはいえ、現状はまだレーダーに映っているだけで、ジャンプアウトしてくるまでに幾らか余裕はある。
『こちらドゥズ星系防衛軍司令だ!
貴艦の状況は船外カメラ含めて把握した!
至急周囲の警戒隊を向かわせている!
敵方の増援可能性はいか程か!』
『こちらオーレリア様輸送船、カステラ号!
ここ数日"賊"対策にランダム機動をとっていた!
敵勢力は、広く薄く網を張っていた可能性が高い!』
『こちらドゥズ星系防衛軍司令!
了解した!こちらの主力艦隊を送る!
こちらの増援と連係しつつ、30分粘ってくれ!』
『尻叩いて15分で来させなさい!
大型の2隻目が着いた時点で擦り潰されるわ!』
『わかってる!
艦長が会議中だったんだ!少しだけ時間をくれ!』
『こっちは元軍属のメカニックよ!落とされたら最後、次のメンテナンスが2年は延びると思いなさい!』
『それを先に言え!こちら艦長!俺の到着なんぞ待たんで良い!先行して部隊を送れ!』
『司令了解!指定部隊は今をもって発進せよ!』
「やれることはやったわ!スキャル!そっちは?」
「偽装と隠蔽を全開でやってる!
小惑星に擬態してるけど、周囲丸ごと撃ち抜かれたら不味いぞ!」
「なんとか5分は粘って!5分もすれば周囲の警戒隊が到着するわ!」
「了解!」
レーダー出力を最小に、船内のエネルギーを非常用ジェネレータに切り替え、その余剰の殆どを、緊急回避用の推進機に振り分ける。
「っと、来たか…」
敵のジャンプアウトを確認した。
予想とほぼ変わらない…が、どうやらあの大型船は戦闘艦らしい。
最大数は減ったものの、ドリル号でミサイルワンチャンも消失した。
『警告 あなたは そのエリアへの入場を 許可されていません』
これは…オーレリア様じゃないな…その一派の誰かが、強行突入を試みているらしい。
「チッ、オーレリア様抑えきれてないじゃない!
私が出るわ!スキャル!そっちは頑張りなさい!」
「了解!」
正直ローズが居なくなるのは無茶苦茶痛いが、ここに突っ込まれるよりは万倍ましだ!…なんとかするしかない…
あれから3分程、敵方の展開が完了した。
ジャンプでの逃走も考えてみたが、敵方が継続してキャッチャーを展開してたら無意味…どころか、居場所を知らせる事にもなってしまう。
「せめてローズがいてくれたら…」
船内では、非常電源に切り替わったことに不安を覚えた集団が、〔船の運用権を奪取すべし!〕と声高々に正義を主張して暴動を起こしているらしい。
そこに、オーレリア様を中心とした穏健派と、ローズを中心としたスキャル派が入り交じり、状況はかなり混沌としているんだとか。
「4分経過…」
こちらはこちらで、16隻も居る小型船の索敵網が拡がってきて、中々のピンチである。
レーダー上は小惑星に擬態出来ていても、直接黙視されるとどうしようもない。
『スキャンを感知しました』
「くそっ、バレた!」
現在、戦闘開始から4分30秒程度…残り30秒は粘らないといけない。
「武装展開!レーダー出力最大!緊急回避機能起動!通信室起動!
ペトラ!行けるな!」
『はい!なのです!』
「格納庫展開!」
『ドリル号!発艦なのです!』
レーダーを確認…敵の配置は、中央に大型と中型、そこから円形に索敵していた小型船が散らばっている。
「小型優先だ!小惑星を盾にするぞ!」
「了解なのです!」
さあ!勝負の始まりだ!




