第53話
「ペトラ様!こちらホタテになります!」
「苦しゅうないのです!」
なんとか1日を終え、今日も夕食の時間である。
ローズ?ローズなら、トレーニングルームから絶叫が聞こえてきて、オーレリア様から〔護衛隊が全員行ってどうするのですわ!〕という、愚痴メールが届いた辺りで行くのやめたよ!
「しかし…練習ね?
上手いこと言ったわねペトラ」
「実際、オーレリア様の意図はそこだと思うのです!
スキャルの練習にも丁度良いのです!
でも、同じ話2巡は流石にキツかったのです…」
「すいませんでした!」
「まあ、初めてにしては上出来よ。
ベテランに頼る判断も間違いじゃないわ」
ここまで聞いて、わかる人はわかっただろうが、今日のあれは、俺の練習の一環でもあった。
「初めにキレてプランぶん投げた時は、どうなるかと思ったのです」
「いやぁ、オーレリア様からの要望も追加されて、〔やんわりいなす型じゃ、どう足掻いても無理じゃん!?〕からの初めの発言だったから…
まぁ、浅いキャパをオーバーしちゃったよね…」
「まぁ、確かに…あの無茶振りは酷かったのです。
それを踏まえると、まあまあ良かったと思うのです!」
「その結果がペトラの重労働に繋がったわけなのよね」
「ふっ、ふふっ…あの後結局、3パターン位やったのです…
でも、オーレリア様からのボーナスがあったから、傭兵ギルドよりも厚待遇なのです…
傭兵ギルドでは、仕事が増えると何故か給与も減ってたのです…ふふっ…過労は駄目なのです…それが当たり前に思えてたのです…」
ローズとアイコンタクトをし、無言でペトラを抱き締めたり、頭を撫でたり、ご飯を食べさせたりと2人で甘やかしていく。
「ほわぁぁぁ…ほわぁぁぁ…」
ホロリホロリと涙を流すペトラを見ながら、次は自分で完結させる練習だ、と心に決める。
後、明日はペトラ休みにしよう。
そうして、軍時代に山程貴族とやり取りをしたローズ、支部の貴族関係で、面倒な案件を全部丸投げされてたペトラ、生の貴族を昨日初めて見たスキャル、この3人の夕食は進んでいくのだった。
護衛衆がローズを〔姉御!〕と呼ぶようになって1週間。
メイドが、食事への不満を垂れ流す機械と化したのにも慣れ始めた頃。
『ジャンプキャッチャーを検知 脱出円を表示します』
「ここで来たか!」
とうとう襲撃が出始めた。
「捕まって堪るか!」
予想される敵の規模は、こちらの戦力の1.5倍~2倍の範囲…要はこちらを倒せると判断された集団だ。
『ポーン 当機はこれより、脱出機動をとるのです!近くの捕まれるものに捕まって、重心を低くするのです!』
「こっちぃ!」
当然、そんな集団と真正面から相対する訳にはいかないので、キャッチャーを振り切っての逃走を目指す。
「スキャル!円の中心を狙うのです!中心に近い程、加速してキャッチャーを振り切れるのです!」
「ぐぎぎぎ…次左ぃ!」
逃走方法は簡単、相手の船と自分の船を結ぶ直線上に船首を向け続けるだけ。
「はい!上ぇ!」
勿論、相手もキャッチャー起動後に移動し続けて、捕らえきるよう動くので、こっちもなんとか逃げ切ろうと船首をグリグリ動かす。
「ぐぎぎぎ!下ぁ!」
問題は、網にかかった状態で抜け出そうとするので、船体が無茶苦茶揺れること。
「もういっちょ!上ぇ!」
…後は、高速航行中に船を動かしまくっているので、ジャンプが強制解除された後に、しばらく制御不能の暴走状態に陥る。
逆に、一切抗わず、なんなら自分からジャンプ解除したりすると、優位な条件で戦えたり、相手のジャンプ解除が間に合わず、不戦で終わったりもする。
「次!下ぁ!」
『ブゥン』
『ジャンプキャッチャー を 解除しました』
「ふぅー」
『航路を修正します 船の揺れに ご注意ください』
「うおっと、ちょっと揺れた」
『航路の修正が 完了しました』
『ポーン 状況終了なのです!ご協力感謝するのです!』
「さて、ローズを呼んで作戦会議と行くかな」
「まあ、あれね。
事前の予想が当たってる気がするわ」
襲撃から30分、操縦室での話し合いの結果がこれだ。
「やっぱり、軍の警戒が効いているのです?」
「そうでしょうね。
…それか、襲撃者に証拠を消す能力が不足しているかのどちらかね」
現在、航路は折り返し地点丁度位の場所に位置しており、後2日もしない内に目的星系の内側に入る。
「ふーむ…じゃあ、今回のルート選択は間違ってなさそうだな」
今回のルートは、《警戒域 経由 警戒域 行き》ルートだ。
「そうね。
この感じだと、軍と防衛隊は買収されていないのかしら」
これは、遠回りしつつも、各防衛隊の警戒域を経由しながら飛ぶ方法で、官警が買収されていない場合に有効だ。
「多分、国からの圧力なのです。
オーレリア様の貨物に、幾つか情報秘匿コンテナがあるのです。
オーレリア様の研修を隠れ蓑にした、輸送依頼の可能性があるのです」
「うげぇ…」
「そうなると、後2日は襲撃が酷そうね」
「なのです。
幸いにして、目的地のドゥズ星系は開拓初期で、軍が警戒網を張っている地域なのです!
後2日、警戒域の隙間を乗り切れれば、後の襲撃は迎え撃てる…筈なのです!」
「一応、ランダム航路の幅を拡げておくか」
「軍の警戒網に入るまでは、ドゥズ星系内に収まる様に、目的地もランダムに変更したほうがいいわ。
結構効くのよ。
本当に…嫌な記憶が蘇るわ…」
「了解」
設定変更っと。
「それじゃあ、チューは寝てくるのです」
「了解ー、俺が寝てる間はよろしくな」
「任せるのです!」
さて、勝負の2日間の始まりだ!




