第44話
「…ふぅ…まさか抱き枕状態のまま会議に突入するとは…」
あれから2時間、無限にも思えた抱き枕生活を終えた俺とその一行は、ペトラの調べものの結果を見に移動していた。
「いやぁ、しかし…スキャルお兄様は凄い方達をクルーに迎えてますね」
「いや、本当に…とんでもないよなぁ…この2人」
「なのです!?
チューを入れないで欲しいのです!チューはただ元傭兵ギルド職員なだけなのです!」
「傭兵ギルドって、結構給料良いんですよね…なので、止める時は生活費を貯めきった時…みたいなのが大半で、フリーの元傭兵ギルド職員って殆どいないんですよ」
「あれ?ペトラの給料って…」
「ふっ、ふふふっ…実はチュー最近わかってきたのです…
孤児って境遇が悪かったんじゃなくて、ただあのコロニーの上層部がイカれてただけなのです」
「そっ、そうか…」
一体幾ら中抜きされてたんだろうか…
「所で、リエールはこっちに来て大丈夫なのかしら?」
「ええ。暫くは待ちですね。
今は、トンガリが参入しようとしているラインを見極めるフェーズです。
その後の、トンガリ強みを避けて開発フェーズは忙しくなりますが、そこまでは自由に動けるんですよ」
「「ほえー」なのです」
「さあ、着きましたよ!ここが我が社自慢の中型船生活部門です!」
見覚えのあるエレベーターホールの様な場所で、何時ものゴンドラに乗り込む。
「大型船以上の船は、衝撃吸収性能が高いので、なにも考えず高性能高級品を導入すれば、その分生活の質が上がります。
しかし!小・中型船は耐久性も考えて選択する必要があります!
そこで我が社!耐久性なら、他社に負ける品はありませんよ!」
ペトラがポチポチと調べたものを打ち込み、ゴンドラがガコンと動き始める。
「所で、今回は何を購入予定なんですか?」
「今回買う予定なのは、
トレーニングルーム
サーバールーム
遊戯室
製作室
浴室
の5種類なのです!」
「なるほど…わかりました!」
「本当は治療室も買いたかったのです…ただ、メディポッドは専門の星系以外だと、かなり質が落ちるって言われたのです…」
「それは…そうですね。
わかりました。お礼の1つに、紹介状を入れておきますね」
「ありがとうなのです!」
『ポーン まもなく、トレーニングルームエリアに到着します』
「おっ、着いたな」
「そうね」
「フッフッフッ…お兄様、お姉様…期待していてください!
我々は元軍の部隊あがりの企業!ここには結構力を入れてます!」
『トレーニングルームエリア 到着です』
シューという音と共に、扉が開く。
その前に広がっていたのは…無機質ななにも置いていない部屋だった。
「…何もない?」
「フッフッフッ!こちらは自動生成型トレーニングルーム!様々な器具や地形を再現することが出来ます!」
リエールさんがポチっと壁のボタンを押すと、壁がグニャグニャと変化し、なかなかの速度でジムに置いてありそうな器具へと変化していく。
そうしてもう一度ポチっと押すと、器具が壁へと吸収され、今度は床が変化していき…これは、砂浜かな?
「と、この様に!様々なトレーニングに適した空間を提供します!
スロットは2の倍数で、最大2ブロックまで対応しています!」
えーっと、今回の船の生活部分は…
「今回の素体船は、下に貨物庫、上に生活空間のタイプですね。
このタイプは、大体貨物庫の半分のブロックが生活空間になるので…ざっくり12ブロック、スロットにすると8倍で、96スロットになりますね!」
「ひえー」
「まぁ、そんな感じなのです」
「先頭部分に、生活空間用のブロック1つを、くっ付けるタイプもあるけれど…どうしても生存率が低くなるのよね…」
「攻撃をよく受ける場所に、人が居るか居ないかは、結構大きな差なのです」
「ほえー」
「さあ、どうしますか?」
「他の施設は…」
「既に見せてもらったのです!
…正直、この施設の下位互換で、値段もそこまで変わらないから、買うならこれ一択なのです」
「うぐっ、痛いところを突かれましたね…
一応これ、そこそこ以上の大きさの会社じゃないと、まともに開発できない施設ではあるんですけど…
逆に言えば、そこそこの大きさの会社なら、割とすんなり出来ちゃうんですよね…
これ以上は、もうちょっと…狂った会社と戦うことになるので、この施設を強化していっている形ですね」
「なるほど」
「やっぱりトレリスダイナミクスの強みは耐久性なのです!
通常、このタイプのトレーニングルームを中型船に乗せると、2航海に1度ペースで、修理ボットを投入しての大修理が必要なのです!
その間、港を出られないのは中々のリスクなのです…だけど!」
「我が社のトレーニングルームは安心安全!その場所に被弾したり、火事が起きたり等、特殊な事情がなければメンテナンスフリーです!」
イエーイとタッチをするリエールとペトラ…いつの間に仲良くなってたんだ?
「訓練用ボットと、無限移動対応はあるのかしら?」
「訓練用ボットはオプションですけど、無限移動対応…移動に合わせて床が移動する機能は、標準搭載してあります!」
「ふむ…メニュー組んだりするのはローズだから、ローズの意見を参考にしたいんだけど…」
「そうね…射撃訓練はVRの方が適してるから…こっちでは肉体の訓練と近接戦闘の訓練をするとして…」
…なんだろう…軽率に地獄が形成されてる気がする。
「仕切りも作れるわよね?」
「出来ます!」
「なら1ブロックいっちゃいましょう。
最大で闘技場位の大きさは欲しいわ」
そっ、そうなんだぁ…闘技場かぁ…
「となると…オプション込みで5万エネですね。
訓練ボットを抜くと、3万エネになります」
へっ、へぇ…前買おうか悩んでたやつの大体4・5倍か…
「まずまずね。
じゃあ、一旦買う前提で他のも見ましょうか」
ふっ、ふふふー、おっ、俺は小金持ちー。
「スキャル、足が震えてるのです!」
「ほら、次行くわよ」
そうして、ゴンドラに乗せられた俺とその一行は、次の設備を見に移動するのだった。




