第43話
「トンガリ!?
…あのとんでも武装が、トンガリの船体以外で運用できる訳がないの!
エネルギー要求過多でシャットダウンするのがオチなの!」
「そっ、そうか…」
なんだろう…ローズの武勇伝が増える音が…
「あら?今の技術力が落ちたトンガリならいけるわよ?」
「そんなわけ無いの!この前も開発部から無理だった報告が来てるの!」
「え?トンガリの開発者曰く〔今は互換性を重視してます!〕らしいわよ?
私が蹴飛ばして方針転換させたけど、最新の以外なら今の私でもいけるわよ?」
「そっ、そうなの?後で確認するの…データ欲しいの…
………あれ?今とんでもないことが聞こえたような…」
「互換性を持たせるために出力絞ってたのよね…蹴飛ばしたから、その内元に戻るわよ」
「うみゃぁぁぁ!?最近やたらトンガリが調子良いの、ローズお姉ちゃんのせいなの!?
なっ、何してるの!競合他社の…しかも眠れる獅子が目覚めちゃったの!」
「いやぁ…その頃はこの会社も知らなかったし…あの推進機のトンガリの腑抜け顔見てたら…つい」
「あっ、アイツぅ!リエール達の船を勝手に改造するだけに飽き足らず!
うみゃぁぁぁ!面倒なことになったの!」
「あのー、船は…」
「もう良いの!リエールのコネ使って1000エネで仕上げるの!名目は実験船なの!それでローズお姉ちゃん借りるの!」
リエールさんが慌てて動きだす。
どうやら関係各所に連絡を取ろうとしているみたいだ。
「スキャル!内装の確認してきたのです!」
「おっ、ペトラ!…とエーデラさん、お帰り」
「わざわざこちらまで…ありがとうございます。
リエールちゃん社長との会談は一段落ということで、お茶をお持ちしました」
「リエールちゃん社長?
ちょっと待ってください…エーデラ、貴女これまでそんな呼び方1度もしてなかったですよね?」
「ええ。
ですが、ここはやはり、社内で最も最新の呼び方が適切かと思いまして」
「………猛烈に嫌な予感がします。
そういえば貴女、会議の途中でしれっと居なくなってましたよね?
私はてっきりお茶を取りに行ったのだとばかり思ってましたけど…貴女…何をしてたんですか?」
「勿論お茶を取りに向かっていましたとも!」
「そっ、そうですよね!それしかし…ちょっ…はっ?…貴女手に持ってるのは?」
「安心してください。
ただのカメラです」
「あー、ただのカメラですかー、じゃあ問題な…いわけないですよ!」
「いやぁ…憧れのお姉様…いえ、お姉ちゃんとの初の商談!これを録画せずして何がメイドか!」
「くっ、くぅ…くぅぅぅ!」
「皆さん、食い入るように見てましたよ!」
「………は?」
「いやぁ、給湯室で映像の確認をしてまして…そうしたら予想もしてない利用者が…」
「出来ますよね!間違いなく利用者いますよね!」
「ベテランの方々は懐かしいと仰られて…あっ、一部社員がバケモノを見る目で見てたりもしてましたよ♪」
「うっ、嘘です!これは嘘なんです!」
「ローズ、開発部の人に詰められちゃって、事前に渡されてたトンガリの資料渡しちゃったのです。
事前に聞いてたけど、本当に良かったのです?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!開発部まで広がってるの!」
「良かったのです!
でも、開発部の人泡吹いて倒れてたけど、良かったのです?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!違う傷口が!」
「良いのよ。
トレリスを名乗るなら、あれくらいは出来た方がいいわ」
「うわぁぁぁぁん!もう無理ぃ!」
可哀想に…本当に…可哀想に…
「夢…そうこれは夢です…そう…良いことと悪いことが同時に訪れるのもあり得ます…500年も行方不明だったお姉様が、こんなにひょっこりと現れるわけありません…」
あー、なんかもう遠い目で涙ながし始めちゃったよ…
「あーほら、ハンカチどうぞ」
「うっうっ…スキャルお兄ちゃん…」
「うぐっ」
結構しっかりホールドされたんですけど!?
「忘れてたの…ローズお姉ちゃんは同業に凄い厳しいの…
噂はもう良いの…その内風化するの…」
つっ、強い!力が!力が!
ローズ…なんか微笑ましい目で見てるぅ!
エーデラさん!………エーデラさん?
なに?…いや止めて!その笑顔猛烈に嫌な予感がする!
「リエールさん!一旦、一旦離れましょう!」
「スキャルお兄ちゃんなら、呼び捨てタメ口で良いの」
「エーデラさんが悪い笑み浮かべてるから!」
「何時もの事なの…大概ろくなこ「社長!お呼び………社長が男連れ込んで幼児退行プレイしてる!?」…うみゃぁぁぁ!?」
その後、暫くの問答を経て、誤解は解けた…と思う…多分…恐らく…
因に、社員さん曰く〔社長ドジっ子ですもんねぇ〕だそうだ。
後、独り言とかでたまに出るとかで、口調自体は若手を除く大体の社員が知っているのだとか。
それを聞いて崩れ落ちるリエールさ…呼び捨てが良いのね…はい…死んだ目のリエールに巻き込まれた俺は、暫くの間、抱き枕としての役割に従事するのだった。




