第40話
「じっ、自分で好きに使えるお金なのです!」
ギルドでの振り込みを済ませた俺達は、中型船の比較ストアへと、ゆったりと話ながら向かっていた。
「俺の第2口座だけどな」
「それでも、それでも凄いのです!正直半ば諦めてたのです!」
ペトラが握りしめるデバイスに映るのは、俺が新たに開設したサブ口座の残高だ。
口座のないペトラ用に開設し、その口座を用いての支払い許可を、ペトラに付与する形だな。
…これ、子供にお小遣いを渡す時に、良く使われる手法なんだとか…使える上限も口座額だし…
「ふふーん♪これからは、ギルド近くのご飯屋さんの開拓とかしちゃうのです!」
「おー!いいなそれ!」
「スキャルも開拓するのです?
じゃあ、手分けして探すのです!
週に1度集まって、結果報告とナンバーワンをハシゴなのです!」
「いいな!じゃあこっちはローズと2人で回るとするか!」
「良いわよ。
丁度良い趣味になりそうね」
「ローズはお給料何に使うのです?」
「私?私は殆ど技術書の購入費になると思うわ」
「あー、イメージ沸くのです…」
「仕事に必要な本なら、月の予算組んでそこから出す形でもいいぞ?」
「良いのよ。
私が買うのは趣味の本だから」
「そうか?それならいいけど」
そんなこんなでわちゃわちゃしてると…
「着いたな」
船舶展示場(中型船)…内見から比較、購入まで、幅広いニーズに応える、コロニー内全船舶関連企業協賛の一大展示場だ。
「えーっと、予約のページの手順に沿って…」
入り口のパッドに端末をかざして…おっ、ゴンドラが来た。
「このゴンドラに乗って決めるのよね」
「なのです!
ゴンドラの中でスペックを見て絞り込んだ後、ゴンドラで移動して、全部の船を内見して…って感じなのです!」
『ポーン まもなく、比較場へ到着します』
「比較場?…おぉ!」
『こちらには、中型船各サイズの比較を分かりやすく展示しております。
右から順に、ローサイズ、ミドルサイズ、ハイサイズとなっております。
見てお分かりになるかと思いますが、ローサイズを1の大きさとした場合、ミドルサイズは2、ハイサイズは3~4の大きさをしております。
良く吟味なさってくださいませ』
前面がガラス張りで、船が大きさ順に…これは凄いな…
「分かりやすくて良いわね」
「これが最低3箇所あるのです…凄まじい財力なのです…」
中型船は…確か小型船のハイサイズが2隻、それにプラスして同等の貨物領域を確保しないと名乗れない…だったか…
「今のとは比べ物にならないくらいでかいな…」
「宙賊船を宇宙で見たりはしてたのです!
でも…実際に近くで見ると桁違いなのです!」
「はいはい。見とれてないで、スペック見るわよ」
「「はーい」」
さて、それでは改めてお財布の金額を見るかな?2200万っと…ふぅ…
「スキャル!帰ってきなさい!」
「目を覚ますのです!起きるのです!」
「もうこれ、冒険とかせず引きこもっていれば良いのでは?」
「…駄目ね、重傷よ」
「それをやった傭兵が、何人も心が死んだ挙げ句に宙賊堕ちしてるのです!正気に戻るのです!」
「なにそれ怖っ!?」
怖っ…いや怖っ!?
「戻ってきたのです!」
「そっ、そうなのね…」
「ローズも引いてるのです!?」
さてはローズもちょっと良いかもと思ってたな?
「とにかく!今の状態で隠居はまずいのです!」
「わっ、わかった」
「さっ、さて…比較表でも見ましょうか」
そうして、若干の動揺を見せるローズが、事前に用意した情報を打ち込む。
「…あら?私の軍時代の乗船履歴からおすすめとかもあるのね」
「へー、試してみるか?」
「いやいや、私軍時代は周りに強力な船が多いからって、ピーキーな船にしか乗ってなかったのよ」
「そうなのか」
「そっ、だから私の履歴を個人の船乗りで採用した日には、割と簡単に墜ちると思うのよね」
「なるほど」
「まあ、それはそれとして、現代のそういう船も見たいから試しに押してみるわね。
こういう船を作っちゃ駄目って反面教師みたいな」
「ハハッ、そうだな」
「ローズ、目が輝いてるのです!」
「ふふーん♪こういうのって、やっぱり考えてる時が一番ワクワクするのよね!」
そういうローズがボタンを押し、ローディングの時間を待つ。
「…長いのです」
「そうか?
…そういえば、この世界無接続か爆速しか存在しなかったな」
「急に未開惑星要素が出てきたわね」
「久し振りにスキャルが紛れ人な事思い出したのです」
「まっ、500年前のデータ取りに行ってるならそれなり『ガコン』にぃ!?なんだ!?急に動いたぞ!?」
「なのです!?チュー達はなにも押してないのです!」
「………」
「…ローズ?」
「…いや、まさか…でも」
あー、なんだろう…猛烈に嫌な予感がしてきた!




