第38話
「ほえー!そんなことが…」
リビングに戻って暫く、晩御飯を食べ終えた俺達は、オークションについて話していた。
「なのです!
そもそも、このステーションに漁をしに来ている傭兵が、食道楽気味の集団だったのです。
そこから、美味しいもの自慢が知り合いの社長や貴族に届いて…」
「期間限定の美味しいものだって事で、超速型超光速ワープ船を使ってこっちに来たらしいわ」
「おっ、おう…なんとも凄そうな船を…」
「凄いというか…バカの船ね」
「そうなのか?」
「いや、速いのよ?通常1月以上かかる航路を、1時間未満で移動出来るし…」
「それは凄いな!」
「その代わり、武装は無し、シールドと装甲は最低限、小型船に駆逐艦とか軽巡洋艦とかのジェネレータを無理矢理つけたせいで、船の形は歪だし、全身弱点な上に、ジャンプ機構の排熱のせいで居住性も最悪なのよ」
「おっふ…それ、ジャンプキャッチャーに捕まったら詰みじゃないか?」
「その程度なら速度でぶっちぎるから大丈夫よ」
「無茶苦茶だな…」
「それと、たまに速度に耐えきれない機体が爆散するのです」
「欠陥品では?」
「ジャンプ速度が他機種と比べ物にならない差で1位なのです…需要はあるのです」
「まぁ、それで遠方の食道楽達が集結してきて今!って感じね」
「無茶苦茶だな…」
「なんか、そもそもとして、この貝は新鮮な方が美味しい種類だったらしいのです。
寝かせずに食べる方法が無くて、気付かなかったらしいのです」
「ブロックを、そのまま塩にでも付けて食べれば、食べれたんじゃないか?」
「その発想にたどり着く人は中々いないと思うのです」
「…というか、食道楽達がシェフ連れてきてたら、商売的に詰むんじゃ…」
「あっ、そこら辺は大丈夫なのです」
「あんなバカみたいな船に乗れる位正気を失ったシェフは、もう既にどこかしらの未開惑星とかに突撃済みよ」
「…そうか」
喜んで良いのやら、悪いのやら…
「まっ、ここで稼げるだけ稼いで、中型船でも買いましょ」
「なのです!
元傭兵ギルド職員的にも、中型船が無いと仕事を振り難いのです!」
「そうなのか?」
「なのです!
討伐依頼は多勢に無勢になりやすいし、輸送依頼はそもそもの保管庫の容量が小さすぎるのです!」
「それはまぁ…そうだろうなぁ…」
「小型船は最大でも3~4ブロックとかなのです。
それに比べて中型船は最低12~16ブロックはあるのです!4倍なのです!」
「この船なんて1ブロックだしな」
「なのです!この船で採算の取れる輸送依頼はほぼ無いのです!」
「うーん、攻撃力が高いなぁ…」
「船については私の方でも調べておくから、スキャルは料理を頑張って頂戴!」
「了解!」
さて、それじゃあ船のために頑張りますか!
…因に、アヒージョは化け物級に美味しかったです。
ホタテの出汁が野菜(っぽいフードプリンター食品)に無茶苦茶染みて…
もうなんか、オークションの金額とかどうでも良くなる美味しさだったよね!
翌日
今回の漁が、明日で終了することが発表された。
5日で終わるのは、中々速い記録なんだそうだ。
「さて、今日も柵作成からだな」
後、アヒージョ用の野菜を切らないと…
フードプリンター製だから洗わなくて良いのは楽なんだが…カットされた状態で出力できないのがな…
「さーて、切るぞー!」
昼
「あー、うん。諦めよう」
野菜の処理が思ったより時間かかる…プリントの時間も結構あるしな…
「まぁでも、切った分位は出すか」
限定5・6食になるな…希少価値ってことで。
「さて、昼食べたら次だ!」
お昼はホタテのカルパッチョだ。
さっぱりと美味しいのも…うまっ!
晩
「ふうー、疲れた…」
少し慣れてきたからか、今日は70食作れた。
刺身が30に、漬け丼とバター醤油が20ずつ、後は別枠でアヒージョが5って感じだ。
今日の持ち帰りはカルパッチョだ。
お昼美味しかったしな!
そして翌日…
「避難勧告?」
「なのです。
傭兵ギルドから勧告が来たのです」
「なんでまた」
「そのー、アヒージョが良くなかったのです」
「なんだ?
………まさか食中毒が!?」
「いえ、そうではなくて…」
「昨日、5食しか出さなかったでしょ?
油煮だったのもあって、比較的安めに落札されたのよ」
「そうか…美味しかったんだけどなぁ…」
「そう!そこが問題なのです!」
「はい?」
「その後、落札できた知り合い同士で集まって、戦利品を少量ずつ交換しあったらしいのだけど…」
「アヒージョを巡って、殴り合いの争いが勃発したのです」
「Oh…」
「更には、購入済みのアヒージョ交換券に対してオークションが起きたり…1口のアヒージョを巡って大金が飛んだり…とにかく大変だったらしいのです」
「商業ギルド前では、もう既に暴動が起きてるらしくて、その内そっちにも人が雪崩れ込みそうだから、逃げろって勧告ね」
「おっふ」
「ハコベル君寄贈しといて良かったのです!
お陰で、こっちをスケープゴートにすることなく、ギルドが防波堤になってくれたのです!」
「あっ、こういう感じで効いてきたのか」
「さあ、逃げるわよ!」
「「あいあいさー」」
こうして、俺のボーナスタイム兼、慣れない料理人生活は終わりを告げたのだった。




