第34話
『三番乗り星系、第8ステーションへのドッキングリクエストが、承認されました』
「オートパイロット起動」
『オートパイロット起動しました』
ローズの救出から37日程経った俺達は、小惑星帯近くのステーションに着陸していた。
「ふいー。着いた」
「…はいはい…居るわよ?じゃあまた後でね」
この後は、ハコベル君を寄贈して、フィノラさんと1度合流って感じかな。
「それじゃあ行くか」
「あっ、これが指定された倉庫の座標なのです!」
「これはご丁寧に…あれ?ペトラ行かないのか?」
「ハコベル君を要るかって、このステーションの全部のギルドに聞いてみたら、取り合いになったのです。
今から調整と…ちょっと企画を提案してくるのです」
「あー、頑張ってくれ」
「なのです!企画が通ったら、スキャルも手伝って欲しいのです!」
「わかったー」
それじゃあハコベル君の輸送は俺達でやるか…あっ、箱詰めとか無しでそのまま行くんだな。
「よーし、ローズ…」
「チェック表はこれでよし、ハコベル型修理ドローンも稼働よし…よーし!久しぶりにやるわよ!」
「…は、行かないな」
あの目の輝きは止めたら駄目なやつだ。
「バロゴはフィノラさんと合流するって言ってたから…うん。俺1人だ!」
…はぁ、どうせ1人なら何か買い食いでもするか。
なにせ!
「このステーションは、天然貝の狩猟が中心産業だからな!」
天然高級オーガニック素材がタダで取れる場所なんだ!屋台の1つや2つあるだろう!
「ふふーん♪行くぞ!」
「………ありませんでした」
ええ…無かった…皆無ですよ…
倉庫の管理人さん曰く〔そんな高等技術者が、こんな場末のステーションに来るわけ無いだろ?仮に来たとして、多分採算取れねぇよ〕らしい。
「デカイだけで、初心者にもおすすめ!とか書いてあるのに…」
未練タラタラ過ぎて、免許の待ち時間にレシピ本買っちゃった…5エネで安かったし。
「ほえー、巻き貝なのに味はホタテっぽいのか…部位によって味も変化する…と」
刺身もいけるのか…宇宙空間だと放射能とかヤバそうだけど…あっ、シールド通過するだけで除染出来るんだった。
「1匹位自分で捌くかぁ…」
ローズを待ってる間に、万能製造機のレシピ買い漁ったからなぁ…色んなギルドが出してる、格安の入門セットの中に、料理ギルド的な奴もあった筈…
「調味料は…船のフードプリンターで出せたっけ?」
一応、レシピを買えばいけた筈…料理ギルドの初心者セットに特典で付いてた、塩と胡椒、食用油は読み込んでたし…出せるかは試してないけど…
「後は熱源か…ローズに頼めば、それっぽいの作ってくれないかなぁ…」
最悪刺身だけでも良いのだが…俺の口は今バター醤油ホタテになっている!
「絶対!調理してやる!」
「嫌です!調理したくない!」
船に戻って暫く、調理法や調味料を血眼になって探していたところに、ペトラから集合がかかり、リビングに集まる。
「これは!とんでもない商機なのです!」
今回のお題は、《無いのなら、出店しちゃおう食べ物屋》である。
「食中毒とか起こしたらどうするんだよ!」
因に料理人は俺らしい。
「調理後に専用のクリーナーを通すのです!食中毒も寄生虫も、害あるものは出ないのです!」
「大体、素人料理出したところで売れないんじゃないか?」
「売れるのです!自分で調理もできず、ここであの貝が食べれるかわからないのに、高級調味料プリンターを買い込んできた傭兵は山程いるのです!」
「なら生物調理用の機械買ったら良いじゃないか!」
「根なし草と場末には販売許可が出ないのです!」
「ちくしょう!八方塞がりだ!」
俺は!素人なの!男料理なの!人様に出せるようなものは作れないの!
「やるのです!」
解体と部位ごとのブロック分けまでは、このステーションの機械で出来るんだとか…
じゃあもうそれに醤油付けて齧ってろよ!
というか切れよ!一口大に!
「ぐぬおぉ!」
見える…永遠と貝を調理し続ける俺の姿が…料理経験者が俺しかいない地獄の光景が…
「大丈夫なのです!スキャルは好きな量をそれなりに作れば良いのです!後は権利をオークションするのです!多分ボロ儲けなのです!」
「おっ、俺の心を!?」
「やるのです!
…というかもう後には退けないのです!噂を聞いただけの傭兵達が、最高級の設備乗せて此方に向かってるのです!」
「何でだよぉ!」
「流石に予想外だったのです…チューがファースト星系でちょっと聞いてみただけの話が、ここまでになるなんて…」
「…何聞いたんだ?」
「調理場所はありますかって…あわよくばスキャルに調理してほしかったのです…この船の皆の分位を…」
「そしたらあれよあれよという間に?」
「なのです…チューが気付いた時にはこうなってたのです…応募者全員から、なんとかオークションまで持っていったのです…」
「Oh…」
「恐ろしいのが、噂に全く尾ひれが付いてない所なのです…ちょっと切ったり焼いたり出来るだけって情報で…過大評価一切無しでこれなのです」
「嘘だろ…」
「もう…やるしかないのです…やらなきゃ暴動が起きるのです」
「………やるかぁ」
「………なのです。
受付とかは任せるのです!クレームを最小に、最高値で売ってやるのです!」
そうして、俺の料理人生活が確定した。
…ローズ?変わらず船のメンテナンスしてるよ?




