第30話
「王手なのです!」
「グッ…ぐぬ…ぐぬぬぬぬ…」
ローズが入院して1週間、ちょっと長引くという話を受けた俺達は、今日も変わらず船の中にいた。
「…ぐぅ…負けだ」
「イエーイ!大勝利なのです!」
因に、この間外出は一度もしていない。
何故かって?病院の帰り道が地獄だったからさぁ!
「こっ、今度こ『プルルル』…くそぅ!」
「フッフッフー!勝ち逃げなのです!」
発信元は病院か…退院のお知らせかな?
「はい…はい………はい?…はい…はぁ!?ちょっ!嘘だろ!あっちょっ!切られた…」
「………なんか嫌な予感がするのです」
「聞いて驚けー!現在ローズは、このコロニーのトップに勧誘を受けてるらしい」
「へっ、へぇーなのです」
「何でも、船の維持コストがかなり大きいから、削減したいんだとか」
「待つのです…猛烈に嫌な予感がするのです」
「ついでに、傭兵が支払ったらしい、12万エネも踏み倒してしまおう大作戦だそうだ」
「かなり面倒な展開なのです…多分それ、トップ本人じゃなくて息子のパターンなのです…それも次男とかの継承順位が低いタイプの…」
「キレそうなローズと、武力を背景にそれを押し通そうとするトップサイドで、今にも衝突が起きそうだから引き取ってほしいそうだ」
「…あっ、フィノラからメールなのです」
「目が遠いぞー、ペトラー」
「………高飛びするらしいのです。
万能製造機は船に、戦闘機械はローズに送ったらしいのです」
「………」
「現実を見るのですスキャル。
コロニーのトップ層とぶつかって出禁までは確定事項なのです」
「うっ、うぅ…何でだよぉ!」
「運がなかったのです」
「ウガァァァ!」
「さっ、どう動くのです?」
「どうもこうも、ペトラが船に残って俺が出撃しかないだろ」
「…ローズを待つと言う手もあるのです」
「…よし!行ってくる!」
「いってらっしゃーい!なのですー!」
しっかりと装備を整えた俺は、病院方向に向かって駆け出すのだった。
船を出て15分、念の為にと近くに船を停めた事が功を奏した俺は、既に鉄火場と化している病院近くへと辿り着いていた。
「…はい…はい…今病院前です。
当方としては争うつもりはありません」
…が、とにもかくにも病院側への釈明が先であった。
「…はい…そうですね。
このままこの星系を出るつもりでして、始めに渡しました術後計画書を確認…はい…いえ、当方と相手方との面識はありません」
ペトラ曰く
〔たかだか1コロニーと関係が悪くなる程度なら、傭兵的には無問題なのです!
でも、人機連は洒落にならないのです!
インプラントとかが全部信用できなくなるのです!〕
だそうだ。
「ええ、私どもの方から証明ログをお送り致しました。
…はい…目線に入っていた程度の可能性はあります」
正直、戦場の少し手前まで来てこんなやり取りをしたくないのだが、ペトラじゃ聞く耳持たれなかったらしいからしょうがない。
「はい…はい…当方から情報が漏れた可能性は否定できません…いえ、肯定は致しません」
それでまた、相手方がめんどくさい!何で担当者人間なんだよ!機械知性にしてくれよ!
「はい…はい…はい?…はぁ…1度だけ警告しますよ…うちもログ取ってるので、しかるべき人機連の機関に持ち込むことも、やぶさかではないのですが?」
とにかく責任逃れに必死!言うに事欠いてローズを差し出せとか言いやがった!絶対許さねぇ!ここ凌いだら絶対人機連に通報してやる!
「はい…はい…はぁ…言い出したのはそちらですよね?大体、責任があるとすれば当方ではなくコロニー側ではありませんか?」
あっヤバッ!銃弾飛んでる!もうちょっと下がらなきゃ!
「…はぁ…あなた個人の心情ではなく、人機連として回答いただきたいのですが?」
正直段々と人機連が信じきれなくなりつつあるのだが、ペトラ曰く辺境の提携支部はこの程度らしい。
「あなたの首のために、クルーの人生を差し出すつもりは毛頭ありません。
…っと、失礼!少し移動します!」
施術は機械知性が行ってて、どれだけ干渉したくても出来ないから基本的に大丈夫なんだとか…今回は例外!
「…ん?ペトラから…あぁ、機械知性に通報したのね?現時点でアイツもう責任者から解任されたと…あぁ…はいはい…聞こえてました?だそうなんで…知らないですよ!とにかく!今回我々に非がないことは証明されましたので!」
あぁもう!二度と提携支部なんて行かねぇ!次からは機械知性運営の支部に行くね!
「うわっとぉ!見誤ったか!」
ここまで下がれば十分かと思ってたんだが…戦場に巻き込まれたっぽい!
戦っているのは人間の部隊と、戦闘機械の部隊…人間がコロニーサイドかな?
辺り一帯は、両脇を囲むビルと、真ん中を通る直線の道路で…死角はない!
「迂回するか否か…」
一応全力で引けば別の道路に出られなくはないんだが…
「むっ!そちらはスキャルさんですね!」
何奴!?
「私は865号!フィノラ様の輸送担当です!」
見た目はイケメン執事、動きはゴ(心外なのだ!)リ!ローズから聞いてた、この変態仕様のチューニングは!
「ああ!フィノラさんの所の!」
「…納得のされかたが若干不満ですがその通り!私はローズ様の救出に行くので戦線維持頼みました!」
「え゛っ!?」
「…はい!残るバトルドローンの操作権委譲!それでは!」
「配役逆じゃ…無いのかなぁ…行っちゃったなぁ…」
やっ、やるしかねぇ!




