第21話
「うん!お金足りねぇや!」
あの後、あれも買いたい!これも買いたい!と、妄想を膨らませた俺達を待っていたのは、冷たい現実の壁であった。
「選別…するわよ…」
「しょうがないのです…」
10日間の暇な旅路を、アレコレと妄想を膨らませることで乗り切った俺達は、ドックへの自動航行が始まった直後…具体的には、端末がオンラインになった直後から、齧りつくように調べものをしていたわけだが…その結果がこれである。
「あー、まずはトレーニングルームを外すか…求めてる最低要件を満たすやつ、5万エネスタートだ」
「修理ドローンもダメね…自動でしてくれるのは万を超えるわ」
「フフッ…知ってたのです…マスタリーシェフシリーズは10万エネ…物によっては100万エネを超えるって…」
皆、死屍累々の様相を呈し始めている…妄想は、現実の前にかくも残酷なのだ。
「確認なのだけど、予算は幾らかしら?」
「予算は、返金された3万エネと、1日500エネのトンガリの仕事が6日分で3000エネだな」
「宙賊の賞金は幾らなのです?」
「…なにそれ?」
「…えっ?」
「…そんなの出るの?」
「うそおっ!?なのです!?」
その後、元傭兵ギルド職員のペトラから色々聞いたところ、宙賊と言うのは最低100エネの賞金がついているとかなんとか…
「俺、スタートの第4コロニーで、そんなのは無いって突っぱねられたんだけど…」
データ輸送の受け渡し部屋に入る前に、強面の狼系の獣人の職員に…
「あー、それは…あれなのです」
「…まさか!?」
「ポケットに入れられたのです」
「ウガァァァ!」
アイツ!アイツやりやがった!
「スキャルが紛れ人って言うのは、傭兵ギルドのデータベースに載ってたのです…えっと…多分それ以外も結構…」
「ウビャァァァ!」
無知が!無知が憎い!
「あっ、安心するのです!チューがいる間は、そこら辺の問題は起こさせないのです!」
「そうだな!頼む!本当に頼む!」
ペトラの仕事決定!
「それじゃあ、宙賊の精算に行きましょうか」
「ああ!…っと、その前に…このリストのやつは買ってしまおうと思うんだが…」
「…うん。良いんじゃないかしら」
「なのです!」
では、買い物がてら、精算にも行こうか!
「えー、2組で4機…320エネですね」
「詳細を見せるのです」
「こちらになります」
「フムフム…おーい!後ろのお姉さん!なのです!ちょっと受付課のコンプライアンス担当と課長呼ぶのです!至急!」
所変わって傭兵ギルド。
ここに来るまでに聞いた話だと、トンガリの仕事で倒した宙賊も、10分の1位は賞金が入ってくるらしい。
これが自分で探して…とか、自分の機体で…とかになると話は変わるらしいのだが…トンガリが誘き寄せた宙賊を、(引き渡しが終わってないから)トンガリ所有の船で倒した場合は、結構お安くなる。
…因に、防衛戦はまだ精算が終わっていないらしい。
「なんだね?一体…私も忙しいんだがね?」
「この支部のコンプライアンスに何か問題でも?」
奥の方から狸獣人の課長さんと、狐獣人のコンプライアンス担当者が出てきた。
「これを見るのです。
これが、チューが試算した"最低"賞金額なのです。
これが、そちらの提示した賞金額…トンガリの依頼分がゴッソリ抜けているのはどう言うことなのです?」
「はっ!このコロニーの担当者が処理しただけだろう?」
「なにも問題はありませんが?」
舐められてるなぁ…
「発言ありがとうなのです!
じゃあ、精算ログと一緒に裁判所に送付するのです!」
「なにを言ってるのかね?その程度で裁判等出きるわけ無かろう?」
「はぁ…これだから紛れ人は…」
あれ?傭兵ギルド内では、紛れ人都市伝説説は浸透してないのか…最初に提示された職業も採掘との二択だったし、傭兵には割と紛れ人がいるのかもしれないな。
…ところで、何か疑問を覚えた人はいないだろうか。
「これは立派な業務妨害だ!こちらが訴えさせて貰う!」
「鼠獣人なだけあって紛れるのは出来たんだろうが…こちらのルールには点で疎いな」
そう。ペトラが紛れ人扱いされている事だ。
なんでも、傭兵ギルドのデータベースには、閲覧ランクと言うものが存在するらしい。
傭兵のデータも、そのランクを元に閲覧できる要素が変わるらしく、性別や人種なんかは、結構上のランクが必要なんだとか。
つまり、現在彼らが見られるのは、俺の名前と実績、紛れ人辺りが限界なんだそうだ。
「紛れ人の情報がフリーなの、なかなかおかしいと思うんだが…」
「元々は保護対象で補助も手厚かったから…その名残でしょうね…」
…と、そんな話をしている俺達がいるのは、傭兵ギルド向かいのカフェだ。
オーガニックドリンクとか平気で置いてあって、かなりビビるが…フードプリンター製の安物をなんとか手に入れて、席に座っている。
手元の端末からは、ペトラの人格を否定するような罵詈雑言が飛んでいる訳だが…あっ、パトカー来た。
『我々は第4コロニー治安部!貴様等には横領の嫌疑がかけられている!大人しくついてくることだな!』
『『なにぃ!?』』
『あと、重度のパワーハラスメントも有るのです。
データを送っておいたから、確認お願いするのです』
『了解した!』
このコロニーの治安レベルは低め。
評価としては、治安部隊は正常に機能しているが、人数が足りていない…らしい。
『よし!内部資料を洗うぞ!』
『『『ハッ!』』』
続々と到着するパトカーに、評価を疑問視しつつ、出てくるペトラを待つ。
「事情聴取とか無いんだな」
「入る所から撮ってる映像全部送ればね…それよりスキャル、これでまた精算待機中が増えるわよ」
「え゛っ?」
「元値が幾らで、幾ら着服してて…って言うのがわかるまでお預けね…ほら」
「ほんとだぁ…」
結局、追加資金は無しかぁ…
「お待たせしたのでわぷっ!?」
「お疲れ様」「ありがとうね」
その後、ペトラを抱き締めて存分に撫で回した俺達は、改めて買い物に向かうのだった。




