第20話
「よし!飛んだ!スペースジャンプ…は行き先を決めないと…スタートはマズそうな気がするし…あっ、あれだ!シュミレーター売ってる星系!座標貰ってたはず…あった!設定して、出航だ!」
『ファースト星系、第4コロニーへのジャンプ……………開始です』
星明かりは線となりながらうっすらとフェードアウトし、到着予想時刻へと表示が切り替わる。
「便利ぃ…」
「今までどんな船に乗ってたのです…」
ふぃーっと息を吐きながら椅子に座り込む。
「取り敢えず、ここまで来ればひと安心だな」
「そうなのです…ふぅ…チュー、安心したらお腹減ってきたのです」
「あー、夕食食べかけだったもんな」
「そうなのです!」
「ところで…さ…ローズっていつ再起動するかな?」
「少なくとも人力では無理なのです。
逃走中に色々叩いたり揺すったりしたけど、何の反応もなかっ…そう言えば目は動いてたのです」
「なんだろう…本能的に警戒してたとか?」
「そうなのですかね?そう言えば何回か前に出ようとしてやめてたような…」
「なんだったんだろうか…」
まあ、なにはともあれご飯である。
「倉庫から食料カートリッジ取ってくるから、ペトラはフードプリンター起動しといてくれないか?」
「わかったのです!」
さーて、ご飯だ!
あれから10日が経った。
トンガリが積んでいてくれた30日分の食料のお陰で、結構余裕な生活を送っている。
「後…何日かしら…」
「後…10日だな…」
「「暇(ねぇ)」」
ただし、やることはない!
「それ、なに読んでるの?」
「船のマニュアル」
「後で私にも読ませて」
「へーい」
本当に無い!
「そう言えばこの前言ってた少女漫画は?」
「廃盤になってたわ…買いたければ、旧首都星系のアーカイブまで行けって書かれてたわね」
「あらぁ…」
前使ってた端末は、流石に壊れてたらしいしな…新しい端末にはまだ何も入れてなかったのか…
「あっ、そう言えば…2人に給料と言うか、おこづかいと言うか、お金渡しとかないとなぁ」
「そう言えば、私の監視でお金出るって話あったじゃない?それどうしたの?」
「それなぁ…レポートを送る先が解散してて…ペトラにもどうすればって聞いてたんだが…お金貰うのは厳しそう」
「一世代変わってるものね…流石に解散するか…」
「あっ、監視の方は法律で決まってるから、完遂しろってさ」
「それって…」
「タダ働きだな…まあ、ローズといるのも楽しいし、良いんだけど…」
「そっ、そう?」
「いや本当、1人だったら何処かで発狂とかしてたかもしれない」
「あぁ、私も病院で何人か見たことあるわ」
「おおこわっ…ローズいてよかったぁ…」
「貴方ねぇ…」
「終わったのです!」
「「お疲れぇ」」
ペトラ探検隊、俺もついていけば良かったかなぁ…
「調査の結果、この船は最低限を満たしてないことがわかったのです!」
「「…なっ、なんだってぇ!?」」
暇な俺達の目は輝いた。
そう、暇潰しの誕生である!
ペトラからの報告…の前に、この船の構成をザックリと説明しておこう。
まずブロック数は2つで、前方に居住ブロック、後方に貨物ブロックがついている。
後方の貨物ブロックは隅っこにデータ輸送用の部屋が設置されており、後は空…食料カートリッジが1日分ずつ積まれているだけだ。
そして前方の居住ブロックだが、これは6スロット空きがある、少し小さめのブロックだ。
スロットは、そのまま部屋を入れられる数と考えてくれれば良い。
ただし、シャワールームやトイレ等、明らかに1スロットも消費しないような設備は、他のとまとめて1スロットだったり、ハーフ・クオータースロットだったりで、1スロットを占有しないものもある。
勿論、1スロット使うような設備のハーフ化も可能で、実際に我が船の客室はハーフのものを使っている。
その結果、現在埋まっているスロットは3つ、客室2スロット(4部屋)、その他1スロットである。
元々は1部屋を普段使いし、もう片方を趣味部屋にする計画だったのだが、ペトラの加入によって流れたという経緯を持っている。
まぁ何にせよ、真ん中をぶち抜く廊下兼リビングと、それを挟む部屋達という構成である。
「それで、最低限を満たしてないって?」
「それなのです!まずは…あっ、船内地図ありがとうなのです」
仁王立ちどや顔のペトラが、2箇所に指を向ける。
「まずはトレーニングルームなのです!」
「専門の部屋が有るのね」
「なのです!倉庫で、軍隊式ブートキャンプを2人がやっていた時に気付いたのです!」
「あぁ、スキャルが10分持たなかったあれね」
「あの時に宙賊に襲われてたら、確実に落とされてたな…」
「死にかけの虫みたいな動きしてて怖かったのです」
取り敢えず航行中は免除して貰えた…航行中は…
「次に、食料カートリッジ保管室なのです!」
「「なにそれ?」」
船作る時にそんな話聞いた覚えないぞ?ローズもなにも言ってなかったし…
「今はどうやって保管してるのです?」
「どうやってって、送られてきたままだぞ?1日毎に分けられて、やたら厳重に保管されてるやつ」
カートリッジ自体は、一本バーよりちょっと長めの長方形で小さいんだが…
梱包が本当に厳重で、1日4食(1食分はおやつ用)保管するのに、俺の腰位の高さの箱に詰められて送られてくる。
そのせいで、前の船では、買い置きが無茶苦茶難しかった…期限は3年とかあるのに…
「それを解消するのが、食料カートリッジ保管室なのです!
具体的には、今のデータ輸送室と同じ大きさで、5人が5年生きられる食料が保存できるのです!」
「それは…かなり革命的だな」
「元々は保存期間を延ばそうという試みで作られたから、保存期間も爆伸びなのです!」
しかし、そんなに凄いものなら、なんでローズもトンガリもおすすめしなかったんだ?
「約400年前に初代が開発されて以降、爆発的なヒットを飛ばし続けているのです!
…トンガリのは、容量が通常品の5倍ある変わりに、保存期限3日のものか、3食しか保存できない変わりに、ほぼ無期限に保存し続けられるものかで…一瞬で廃盤になったのです」
「Oh…」
なんだろう…ローズがなにも言わなかった理由も納得だけど…それ以上に、凄くトンガリを感じる…
「次に行くファースト星系の第4コロニーは、突き抜けた製品がない変わりに、平均レベルが高いテックコロニーなのです!
チューとしては、この2つを買うことをおすすめするのです!」
「そうだな。
値段次第だが、導入しても良い気がする」
「うそっ、本当にあるじゃない!
…施設関係も調べ直さないと」
ビシィッと指を指す仁王立ちペトラに、腕を組んで頷く俺、崩れ落ちるローズと、三者三様の姿を見せつつも、なんとなくの方針を定めた俺達は、少しワクワクしながら船を進める。
やったー!これで3日は粘るぞー!




