第19話
ホテルから出て5分…何時ものゴンドラの駅を通りすぎた俺達は、船の格納庫へと歩いていた。
「さて、ここからは時間との戦いよ」
「ゴンドラは使わないのです?」
「ああいうのはね、途中で止められて襲撃ってのがオチなのよ」
「やけに詳しいな…」
「戦争中、自国の敵対派閥から襲撃とかが良くあったのよ」
「戦争中に内ゲバするなよ…」
そう言うローズについていった先にありましたは、空飛ぶ車さん。
「観光用空自動車よ。
スキャルの免許で乗れるから、撃ち落とされるまでの足にしましょ」
「撃ち落とされるのですか…」
「襲撃はされるんだな…」
そう言いながら乗り込んで、起動…あっ、これ宇宙船の操縦とほぼ同じだ。
「さあ行くわよ!」
あれから30分が経った。
始めは警戒していた襲撃もなく、後10分もあれば到着という所までやってきた。
「そのまま宇宙港に乗り付けちゃって良いんだな?」
「ええ。後処理はトンガリに投げといたから」
「助かる」
ナビをつけたら行き先がバレるってことで、オフラインの地図アプリを使ってここまで来たわけだが…とうとう宇宙港が視認できる範囲まで来れた。
「後はあそこま『シュン!』…グッ!」
下から撃ち抜かれた!?
「スキャル!高度下げて!」
「了解!」
大きめの通りに目星を付けて、軟着陸を観光する…っとシールド?
「車の充電池に無理矢理シールド発生装置を繋げたわ!
規格が合わなすぎて30秒くらいで燃料が切れそう、それまでに着陸して!」
良く見たら俺の腰にくっ付いてた、シールド発生装置が抜き取られてる…俺の安心街歩き装備がぁ!
「そろそろ着陸…マジか!着陸関係の装置がやられてる!衝撃に注意!」
地面が近付く、勢いが思ったより強い!?警告…ローズ椅子に座ってない!?マズッ!
咄嗟にローズを抱きしめ、衝撃で推定天井に叩き付けられる。
「…ッグッ!」
どうやらある程度はシールドが守ってくれたらしい。
墜落からの爆死ルートは避けられた様だ。
「ローズ大丈夫か!」
「ふぇっ」
怪我は…無さそうだ。
「…ふぅ」
「スキャルの方がマズそうなのです!ナノマシン刺すからちょっと我慢なのです!」
ペトラが駆け寄ってきて、背中にハンコっぽいのを押し付ける。
「おぉ、凄いなこれ…」
するとみるみる内に背中の痛みが引いていき、動かせるようになってくる。
「痛み止めが入ってるのです!1日もすれば関知するみたいだから、宇宙に飛んだら絶対安静なのです!」
「了解!墜落中に道は覚えた!こっちだ行くぞ!」
「ラジャー!」「ふぁぃ」
無理矢理繋がれてたシールド発生装置を引き抜き、宇宙港へと走り出す。
「…クッ!ダメだ!シールド出ない!」
「しょうがないのです!あれだけの衝撃を肩代わりしたら、壊れるのも当たり前なのです!」
「チクショウ!」
目的の宇宙港には、大通りに入ってすぐ左折、始めの交差点を右折、その後2個目の交差点を左折でつく。
走れば15分程度なんだろうけど…サイレンが!?
「こっちなのです!」
大通りに入ろうとした辺りで聞こえてくるサイレン…警戒網しかれたっぽいな…
ペトラを手を引かれて裏の小道に入りつつ、表の通りの様子を伺う。
表の通りにはパトカーが1台停まっており、4名の警官がメガホンを持って立っている。
『この近辺には、指名手配犯が潜んでいる可能性がある!各住民においては、武装を解除し、我々の指示に従って欲しい!』
まーずい!これはマズい!
『ふざけんな!また袖の下か!』
『そうよ!武装解除した後に脅すんでしょ!これで何回目よ!』
『テメェらが捕まりやがれ!』
あっうん…官警への信頼が地に落ちていらっしゃる。
スタート星系と、安全評価対して変わらないから大丈夫なんて思ってたのは、幻想だったのかもしれない。
「丁度いいのです!こういう時は大体2・3人が詰め寄って、ニヤケ面の宙賊が出てくるまでがセットなのです!」
ここの治安終わってるな。
『なんなんだ貴様ら!我々に歯向かう気か!』
『そう簡単に奪われてたまるか!』
『武装解除は拒否させて貰う!』
『大体、テメェらが宙賊に対応しねぇから、民間の会社が出張ったんじゃねぇか!今さら出てきて何が指名手配だ!』
「今なのです!GO!GO!」
一般人に紛れるように、ちょっと早足で堂々と歩く。
ここを抜けさえすれば、トンガリの私有地に入る!現時点で指名手配は発令されてないから、強制捜査は…若干怪しいが、なんとかなる…はずだ!
そろそろやりあってる横を抜けられる。
鼠獣人は辺りに山程いるし、顔さえ見られなければなんとか…
「オイ、そこの鼠獣人…止まれ」
ギクゥ!
「ちゅ、チューなのです?」
「そうだ。そこのお前だ」
まっずーい!ペトラ見付かったぁ!
周りもなんかザワザワしてるし…〔あれ、ペトラじゃないか?〕みたいな声もチラホラ聞こえる。
「変な格好の鼠獣人…そうだ!お前が指名手配犯だな!」
そう言った人種の警官が、手錠を手にし『シュン』…それは、住民の一撃だった。
「何時もの宙賊が出てこねぇ、指名手配、そしてその警官の焦り様…おい!お前ら!コイツ逃がすぞ!」
「「「おう!」」」
「貴様らぁ!」
周囲の男性陣がエネルギー弾で牽制し、後方では女性陣がバリケードの様なものを築き始める。
「こっちよ!」
警官隊も応戦し始めるが、数が違う。
腐ってもテック企業のお膝元なだけあり、全員がシールドを装備しているのも大きな影響だ。
「この時期にあの腐れ警官の焦り様って事は、貴女は私達にとって凄い利益のある存在のはずよ!」
ここの治安終わってるな。
「アイツらも、同じことしてた警官がトンガリに叩きのめされた辺りから息を潜めてたのよ」
ここの治安終わってるな。
「それがリスクを負ってまで貴女を捕まえようとしてる…これ以上の証拠はないわ!」
ここの治安終わってるな!
「ここを曲がればすぐにトンガリにつくわ。
そこまで行けば、武力差で突入を躊躇うはず…その間に宇宙船に乗って逃げるのよ!」
「知り合いの傭兵と話が付いた!そのままトンガリに突っ込め!」
なんだこの住民の連携力!?あの警官信用されすぎだろ!?
「ありがとうなのです!でも、船ならこの傭兵のに乗せて貰うから大丈夫なのです!」
「よしわかった!…傭兵はそのまま、スペースジャンプまでの護衛に回ってくれるらしい!逃げ切れよ!」
「ありがとうなのです!」
と、そんな話をした辺りで、後方から爆音のクラクションが近付いてくる。
「チクショウ!車両に抜かれた!」
前面にシールドらしき物を展開したパトカーが、そのままバリケードに突っ込んでくる。
『ホラホラ!女子供は退きやがれ!』
運転席には1人、残りは囮で残ったか!
『ヒャッハー!』
そしてそのままバリケードを突「「「嘗めんな!」」」…破するかに思われたパトカーが、爆炎と共に宙を舞う。
「よっし!決まった!」
「いつか宙賊共に喰らわせようと、取っといた資格が効いたわね!」
「ほら早く!バリケード組み直すわよ!」
「「「ええ!」」」
すげぇなこのコロニー…これだけ危険人物揃ってて統制保ってたのか…
「こっちだー!」
宙を舞うパトカーから目を切り、前を向いた辺りで手を振る人が目に入る。
見覚えがあるな…確かトンガリの販売担当にあんな感じの人がいたはず。
「行くぞ!」
そんな人の誘導に従って、ビルとビルの間にある、トンガリの通用門の中へと走り込む。
確か、ここは宇宙港直通の1本道だったはずだ!下道を通る予定がかなりのショートカットになった!
この門の解除には社員証がいるはずで、こんなところまで迎えに来てくれたのには感謝しかない。
「門を開けてくれてありがとう!助かったよ!」
「いや、此方も助かったよ」
「はい?それはどういう…」
「こう言うことだよ」
「うおっ!?」
エネルギー弾!?
撃ってきたのは何処に…ああいや、物陰から5人くらい出てきた…コイツらの何れかだろう。
「さあ、腰の銃を捨てな」
横から銃が突き付けられる…万事休す「「「知ってた」」」「「「ギャァァァ!?」」」今度はなに!?
「支部長さん!?」
ペトラの声を聞き、同じ方向を向く。
そこには、パワードスーツを装着した正体不明の7人集…いや、中央の人だけ胸におっきく《支部長》って書かれてる!?
「「「とうっ!」」」
『ズデン』
あっ、7分の5着地に失敗した。
「いやぁ、コイツらが武装の横流しをしてるのは知ってたんだが…大元を叩こうと調査してたら、こんな時期までかかっちまった」
うつ伏せになりながら話す支部長…全然キマッてない!
「だが、これでハッキリしたな。
コイツらは代官の私兵だ。
こんなタイミングでコイツらを動かせるのなんて、1人しかいないだろ」
なんだろう、凄く良い展開なはずなのに、モゾモゾと立ち上がるパワードスーツのせいで全然締まらない!
「ってなわけで、ここは任せて先に行きな!」
チクショウ!せめて立ち上がってから言ってくれれば!
「ありがとうなのです!」
良いシーンなはずなのに!




