第18話
「どうもありやしゃしゃしゃー」
ペトラを迎え入れて丁度1日。
今度こそと快適マートでお惣菜を買い込み、帰宅の途に就く。
「ふんふんふーん♪」
今日は、焼き鳥っぽい何かの詰め合わせだ。
「人数が増えたから、量が多めのパックにも挑戦だー♪」
結構種類も入ってるし、どれが美味しいかを言い合って…ランキングでも決めようかな?
「たっだいまー!」
そうして俺が見たのは、タブレット(っぽい端末)片手にうつ伏せで倒れ込むペトラと、血走った目でノートパソコン(っぽい端末)を叩くローズの姿だった。
「なっ、なんじゃこりゃあ!?」
パパパッ、パパパッ、パーパー
「それじゃあつまり、質問責めに耐えきれなくて倒れてたと」
あれから5分、仰向けに転がし、目をクルクルさせていたペトラに事情聴取を行ったところ、気になったことを全て聞くローズと、それに耐えきれなかったペトラの図が浮かび上がった。
「やっ、ヤバイのです。
チューの1の回答に対して、10の質問が帰ってくるのです」
チラリと横目でローズを見る…見なかったことにしよう。
「段々質問の精度と専門性が上がってきて、チューの答えられる範囲が、8、6、4って…
こっ、怖かったのです!解答できないのをメモして次!次!って!その速度が尋常じゃ無いのです!」
チラリと横目でローズを見る…目が血走っている…見なかったことにしよう。
「ついに0になったのに!なったのに質問が止まらないのです!
しかも絶妙にチューが答えれそうな質問に、どんどんシフトしていくのです!」
チラリと横目でローズを見る…打鍵速度が加速して、なんか聞いたことない音を出している…見なかったことにしよう。
「その辺りからなのです…チューの答える速度をローズの質問速度が上回り始めたのです。
口の動きと話し方から内容を推測って、訳がわからないのです!」
チラリと横目でローズを見る…カバンからタブレット(っぽい端末)を取り出して…二刀流だぁ!?
「…ん?あっ、スキャル帰ってたのね?」
血走った目のままこっちにギュルッと向き直して…クビをコテン!
「「イヤァァァ!?」」
「なんで!?」
俺とペトラが抱き合ってから10分ほど経ち、お惣菜も温め終えた俺達は、夕食を取っていた。
「いやぁ、ペトラから湯水のように知識が出てくるものだから…つい…」
「ついでやるには、手慣れすぎてたのです」
「最終的には、目をガンギマらせながら端末使ってたしな」
おっ、このねぎまっぽいの美味しい。
「ペトラのお陰で、今まで今一理解しきれなかったニュースとかが、解るようになったのよ…ああいうのって、複数見て情報精査したりしないとじゃない?」
「あっ、それはわかるのです。
チューも、今月の宙賊被害予想の仕事してたから、良く調べてたのです」
「まさかのお仲間が…」
うーん…このつくねはイマイチだな…何というか…挽き肉感がない。
「でも、調べたお陰で色々わかったわよ」
「おぉー!凄いな」
「何がわかったのです?」
皮は…なんだろう…美味しいような…微妙なような…絶妙なラインを攻めてくるな…
「まあ、色々あるのだけど…ペトラがこの星系で指名手配されそうって事くらいかしら」
「へー、良くそんなことが…」
「あの短時間で調べられたの…」
「「ファッ!?」」
………ファッ!?
「いやぁ、どうやらこの星系を担当してた、代官のトップも何かしらやらかしてたみたいで…丁度良いスケープゴートに…ね?」
「いやいやいやいや!まずいだろそれ!」
「ちょっ、ちょっと待つのです!
チューはこのコロニーの居住権を持ってるのです!
居住者に対する指名手配は、領主の専任事項なはずなのです!」
「そっ、だから横領の差し押さえの一貫で、居住権が剥奪されたってわけなのよ」
「ウミャァァァ!?無茶苦茶苦労したのにー!?」
「晴れて自由民の仲間入りってね」
「うわぁぁぁん!」
「あのー、自由民って…」
「ああ、自由民は…納税の義務が無い変わりに、居住権も無い国民を指すわ」
「…というと?」
「どのコロニーのホテルも、大体1泊の平均料金が、平均的な賃貸1月の価格と同額なのです。
そんなところに毎日住めるわけがないから、路上で寝るか、違法建築された家で夜を明かすか…」
「でも住所無しでそれやると、1発で宙賊判定食らうのよね」
「うえっ!?」
「軽い罰金を払えば解除されるのです…けど…」
「居住権を取得するための審査が、無茶苦茶厳しくなるのよ」
「チューは…5年かけて…お金もいっぱい払って…」
「おうふ…」
『プルルルル』『ガチャ』
「ローズよ。準備…出来たのね。わかったわ」
何かを察した俺達は、急いで貴重品を取りに走る。
「なんとなくわかったでしょうけど、船の準備が出来たそうよ」
端末…銃………ヨシッ!
「ホテルには、デザートを食べに出るって言ってるし、先払いのお店も予約済み…衣服の類いは置いていきなさい!」
「「ラジャー!」」
そうして、あたかもいつも通りであることを偽装しながらホテルを出る。
「さあ、高跳びの始まりよ」




